チャプター28
夏の一時
結局、ボクたち美術部は夏の間みんな平日は毎日活動をすることになってしまった。
今日も、全員が参加している。
「メグ、今年は何を作るつもりなの?」
「今年は、アクセサリー数点と絵の予定だよ。鈴と浩太はどうするの?」
「私も今年はオーソドックスに絵にするつもりよ。」
「僕はまだ決めかねているよ。色々と手を出してみてその中から選ぶつもりだよ。」
そういえば、やっぱり鈴と浩太はあの後うまくいったらしい。
浩太の話っていうのは告白では無かったらしいが、鈴から告白するとおっけーだったそうだ。
何故か浩太が何を相談したかは教えてもらえなかったが、カップルにそれを尋ねるのも悪い気がして追及はしてない。
「女神先輩のアクセサリーってそれっすか?」
「そうよ。木と革をメインで使ってみたの。シルバーアクセサリーと違って美術部の備品でも十分に作れるからね。」
「シルバーアクセサリーも好きですが、木でできたものも素敵ですね。」
「私も女神先輩の作品のように手で一つずつ丁寧に作ってみたいです。」
「由香ちゃんありがと。自然の素材そのままだから、味があってボクも好きなんだ。」
「女神先輩、私もつけてみて良いですか?」
真奈美ちゃんがつけると何故かエロい気がするボクだが、実際みんなに使ってもらって違和感がないかみたいので、許可を出す。
まだ三つしかできていないので後輩たち三人につけてもらうことにした。
「どうかな?とりあえずネックレスを三つ作ってみたんだけど、違和感はない?」
「秋先輩に包まれているような気がします。手造りなのが余計にホッとしますね。」
「女神先輩と木の匂いがします。重くないので肌身離さずつけれます。」
「装飾が派手じゃないんで、うちみたいな動く人間でも全然じゃまじゃないっすね。」
「適切なコメントをありがとう。真奈美ちゃんの発言には何か引っかかるものがあったけど、
強度の問題はあるかもしれないけど、意外とよさそうね。」
三人から一旦ネックレスを回収する。
「女神先輩、学園祭が終わった後にいくつか作品をいただけませんか?」
「ん?まぁアクセサリーだから気にいったなら配ってもいいけど?」
「はい、個人的に欲しいのもあるのですが、来年サンプルとしてみんなで作れないかなあと思いまして。」
「うん。いいと思うな。材料の発注先とか、作り方とかもメモを作っておくね。
たぶん花火ちゃんとか作らせたら上手くいきそうなんだけどな。」
「うちがっすか?装飾品なんて店で買ったこともないんで無理っす。」
花火ちゃんはこう言っているが、実際木を削ったり、模様を描いたりする時に、
大胆な削り方ができる花火ちゃんなら、少し慣れれば面白い作品が作れると思う。
「今すぐ上手に作れなんてメグも言ってないわよ。
作る前にショップカタログとかで研究してみたらいいんじゃないかな?」
「そうだね。今回ボクが参考にしたカタログなんかもメモと一緒に残しておくし、
買い物に行った時に少し眺めてみたらいいよ。」
「了解っす。今年はうちも絵にしようと思うんで無理っすけど、来年は挑戦してみるっす。」
「ふふふ、メグと一緒に並べても見劣りなんてしないから今年から始めてもいいんだよ。」
ボクは花火ちゃんの頭を撫でてあげる。
「いやいや、女神先輩の隣ってのは、やっぱり勇気がないっす。
でも、学園祭が終わったら指導お願いしたいっす。」
「みんな、ボクのこと超人みたいに思ってるかもしれないけど、
一つしか学年も違わないんだから、そんな風に考えなくていいのよ。」
そういって今度は由香ちゃんの頭も撫でてあげる。
真奈美ちゃんが物欲しそうにしているので、花火ちゃんを撫でていた手を離して真奈美ちゃんも撫でてあげた。
「秋先輩は私たちのあこがれなんです。
一つしか違わないって言われても浴衣のコンテストもそうですし、秋先輩が作るものって本当に素敵だなって思うんです。」
「ありがとう。ボクもみんなの期待に応えられるように頑張らなくっちゃね。」
そう言ってボクはアクセサリー作りに取り掛かった。
しばらくデザインをまとめていると、鈴にお昼ごはんにしようといわれた。
「あら?もうそんな時間?
竜たちもそろそろ来る時間だし、一旦片付けしてお昼にしましょうか。」
「そうですね。まだ休みはありますし、休み明けでも多少は時間がありますから焦る必要はありませんよ。」
「そうだね。じゃあ竜たちが来る前にお弁当が食べられるように片づけをしておこうか。」
「片づけって言ってもほとんど浩太が汚したんでしょ?
メグは今日はデザイン画だけだし、私たちは絵を描いてるんだからこんなに散らかしたのは浩太だけよ。」
「というか、浩太は何をこんなに削ったんだ?」
「うむ、この木片を見ていたら削りたくなった。
今まで作品が基本二次元世界で構成されていたから、今後は3Dの世界に挑戦しようと思ってね。」
「まぁそれは良いんだけど、せめて計画性を持ってやってよね。
でも、なんだかそれ何かの形に見えるわね。」
「ああ、削っているうちにイメージが沸いてね。
たぶんこのままだったら神話に出てくる聖獣とかができるかもしれないね。
今まで絵を描いてきたが、彫刻って僕に合っているかもしれない。」
「相性云々はわからないけど、この短時間でこれだけの木くずを出すってのはすごいわね。
さぁ、話てると本当にみんな来ちゃうわ。手分けして片づけましょ。」
ボクらが美術室を片づけていると連れたって麻美と司と竜がやってきた。
「おなかすいたよぉ。」
「ホンマやで、秋ぃ飯まだ?」
「二人とも、私まで催促してるみたいだからやめてよ。」
相変わらずの三人の反応だ。
ご飯を待ち望む子どもの二人とお姉さん的な麻美。
「待ってね。これだけ片づけちゃうから。浩太が張り切りすぎちゃってさ。」
「浩太!お前は俺のご飯を邪魔するとはいい度胸やないか。」
お腹が空いている影響か、竜は浩太に向かって良く分からない恨み事を言っている。
「ところで竜はお弁当持ってきたの?」
「は?秋が作ってくれとるんとちゃうんか?」
「なに言ってるのよ?今日はみんな自分の分もって来てるわよ?」
「マジで?司、弁当もってないやん?」
「僕の分はぁ。麻美が作ってきてくれたよぉ。」
司の声と共に麻美は司の分と自分の二つのお弁当を取り出した。
「浩太。お前はないやろ?」
「馬鹿ねぇ。私が作って来たに決まってるでしょ。」
こちらも鈴がお弁当を取り出している。
片づけも終わり一年生の三人はそれぞれ自分の分を取り出していた。
「ちょま、お弁当ないん俺だけか?」
「毎日ボクが作ってたら大変だから、それぞれ持ってくるようにって昨日言ったじゃない。」
「そんなぁ。母さんに秋が作ってくれるから夏休み中はいらへんっていうてもたわ。」
「全くしょうがないわね。どうせそんなことだろうと思ってたわよ。」
そういって、ボクは自分の分と竜の分として二つのお弁当を取り出した。
もし、竜が覚えていて、持ってきていたら、みんなで少しづつ分けてもいいし、
竜なら二つくらい食べられると思っていたのだ。
「サンキュー、秋。やっぱ俺のことようわかっとるわ。」
「わかりたくないわよ。今日だけだからね。」
「ちょま、せやから母さんに夏休みいっぱい、いらへん言うてもたから、明日からも作ってくれへんって。」
「それくらい説得しなさいよ。お母さんだってきちんと言えば明日からは作ってくれるでしょ?」
「秋が作るっていうたら。絶対に夏休み中は作らないから、
拝んででも毎日作ってもらいなさいって言われとるんやけど・・・・」
「はぁ?なんでそうなるのよ。それなら自分で作りなさいよ。」
そのあと竜は本当に土下座までしようとし、
ボクも仕方なく今後のお弁当を作ってくることを承諾してしまった。
「良かったわね、竜くん。秋の愛妻弁当が毎日食べられるようになって。」
「その代わり、練習がない時も美術室に来て手伝ってよ?」
「毎日自転車で送り迎えしたっとるやないか。」
「お弁当いらないの?」
「手伝わせていただきます。」
「よろしい。」
「竜くんは将来メグの尻にしかれるわね。」
「そうかしら?案外秋ちゃんって献身的に尽くすタイプだと思うわよ?」
「確かにそうかもね。」
「そこの二人!!ボクは竜の奥さんじゃない。」
「はいはい、今は奥さんでも妻でもないわね。」
この二人はボクの気持ちを知っててこんなことを言うんだから。
竜から顔をそらして怒った顔をする。
「怒った女神先輩も素敵です。」
真奈美ちゃんがそう言うと、麻美になぜか抱きつかれてしまった。
ボクは本当に怒ってるんだぞ?
「まぁ、秋の弁当は美味しいから、ほんまありがとな。」
竜にそんなことを言われてしまったので怒る気が失せて微妙に顔がゆるんでしまった。
「秋ちゃん。顔がゆるんでるわよ。まんざら作るのが嫌でもないんでしょ?」
「そんなことないよ。ペコの散歩にいけなくなるじゃないか。」
「ペコちゃんの散歩は夕方でしょ?
それとも竜くんのお弁当を何にするか考えて一日集中できないのかしら?」
麻美にはかなわん。
何を言い返しても竜と結びつける気だ。
まぁ竜はボクが作ったお弁当に夢中だし、ボクらは聞こえないように小さい声で話しているので問題はないが。
「麻美ぃ。それくらいにしておかないとぉ、真奈美ちゃんの二人を見る目がおかしくなってるよぉ。」
そういうことはもっと早くいって欲しい。
ボクらは離れると、真奈美ちゃんに心友同士の抱擁であって、
けしてアブノーマルな関係ではないと伝えておいた。
「でも、秋って昔っから女の子にもモテるやん。」
「うるさい。ボクはノーマルだ。」
お弁当を食べ終わって変なことを言い出した竜には暗黒をプレゼントしておいた。
せっかく食べたお弁当がもったいないので腹部は避けておいた。
「あんなに美味しそうに食べてたから吐き出してほしくなかったのよね。」
「違うわよ。食材がもったいないでしょ。」
そうはいっても、麻美にはやっぱり見透かされているようで勝てそうにない。
「真奈美ちゃん。
麻美を見習ってメグのこと上手に自分の方に向かせようなんて無駄よ。
麻美の場合自分に向かせるんじゃなくって誰かさんのことを上手にあおってるんだから。」
「確かにそうですね。女神先輩の気持ちが余計にある人に向かっていくだけですからね。」
「鈴、真奈美ちゃん。最近足技使ってないから使ってみようか?」
「スカートめくれちゃうわよ?
まぁ、下にはいてるのに自信があるの?そんなに見てほしいんだ。」
そういって、後頭部を強打されて悶絶している竜の方に流し眼を送った。
「なんか最近鈴と麻美の言い方が似てきた気がする。」
「私たち心友だもんね。
鈴も私も秋ちゃんがとあることで悩んでいるのを解決してあげたいだけなのよ。」
確かにたくさん相談に乗ってくれているが、その分からかわれている気がしてならない。
「からかって楽しんでるの。間違いじゃないの?」
「だって、メグってとあることになると真っ赤になって反論するからすっごくかわいいんだもん。」
やっぱりからかってるんじゃん。
全くとんでもない心友を持ってしまった。
「まぁ。昔からぁ、秋はからかわれてたからねぇ。」
「司が言うなぁ。一番の元凶はあんたでしょ。」
「麻美ぃ。そう言えばねぇ。今日の朝なんだけどぉ。」
「まったぁぁ。」
ボクはとりあえず麻美を間にはさんでいたため、少し距離があった司に黄金を使って黙らせた。
「あ、白色。」
頭を押さえてかがんでいた竜には見えてしまったらしい。
「あんたももう一回寝とけ。」
竜に残酷をあて、司と竜の二人をノックダウンさせておいた。
「朝どうしたのかなぁ?秋ちゃん心友に秘密はなしよ?」
「そうそう。朝メグとそこで倒れている人の間に何があったのかしら?」
麻美も鈴も興味津津といった様子でごまかすことができなさそうだ。
「ああ、司の話だと、妙に意識した女神ちゃんが竜の後ろに乗るのを渋って、竜が抱きかかえるようにして乗せたらしいぞ。」
「なんであんたがしってるのよ。」
「朝、美術室に来る前に司と話をしてたんだ。」
もう、知らん。
結局後輩たち含めてここにいる全員に知られてしまった。
「竜くんって大胆なのね。朝から秋ちゃんのこと抱きしめてたんだ。」
「浩太じゃ、抱きしめるなんて度胸がなくてできないわよ。」
「そ、そんなことない。
というか、竜のは天然で女神ちゃんが何を考えてるのか分かって無かっただけじゃないか。」
ボクが真赤になっている間に鈴と浩太は夫婦喧嘩を始めた。
こんなやりとりをしているが、二人の仲がいいのは空気で分かる。
「まぁ、秋ちゃんも、もうちょっと竜くんに優しくしてあげなさいよ。
照れる気持ちはわかるけど、竜くん完全に伸びてるじゃない。」
「うぅ。痛かったぁ。」
「あら?司のダメージはたいしたことなかったみたいね。
やっぱり竜くんの方がおもいっきり攻撃しちゃってるんだ。」
「竜は昔から失言キングだったから、ボクの攻撃には慣れてるよ。
多少威力込めないとここまで伸びないんだよね。」
しばらくすると竜も回復して恨み事を言ってきた。
「いってぇ。今日のは本気でやばかったで、二回連続やし、
回復する余裕もあらへんかったやん。」
「乙女の下着を覗いたんだから当然よ。」
「秋ちゃんの下着を見たのは竜くんだけなんだから良いじゃない。」
「良くない。今日はそんな可愛いのはいてきてなかったんだから。」
「じゃあ、可愛いのだったらいいのかしら?」
「それは・・・・」
麻美は絶対にボクのことをからかって楽しんでるんだ。
ボクは真赤になりながら反論しようと頭をめぐらすが、普段は早い回転も、
なぜかこういう時にはうまく回らず良い言葉が浮かんでこない。
「ごちそうさまぁ。竜と僕は午後から自主練習してるからぁ、終わったら教えてねぇ。
どっちの部活も自由参加だから人数少ないしぃ、自由に抜けれるからぁ。」
午後からは自主練習らしい。
空気を読んで助けてくれたのか、それとも、マイペースなのか分からないが、
司のことなので空気を読んでくれたんだろう。
「男子は大変ね。私は午後から無いから、しばらく秋ちゃんをからかってから野球部の方見に行くわね。」
麻美の声を聞くと、竜と司は二人して美術室を出て行った
何?むしろからかいモードを助長しただけなのか?
「秋ちゃん。何を考えてるのか当ててあげるわ。
竜くんがいなくなったから、きちんと固有名詞を出してお話しましょうね。」
「あぅ。ボクの話はやめない?学園祭に向けて作品をつくらないと。」
「そんなこと言っても、まだ時間はあるんだし、メグのこと気になってみんな作品に集中できないわよ。」
「ええ?ボクのことなんかみんな気にしないで作品に取り組もうよ。」
「女神先輩の話すっごく気になります。」
「合宿後から気になってたんですが、前と違って竜先輩のこと意識しすぎてませんか?」
「そっすね。うちも、なんや前より女神先輩の竜先輩に対する反応がおかしくなってる気がするっす。」
結局このあと、麻美と鈴にからかわれながら、今までの経緯と、
竜にクリスマスまでに告白をすることを教えることになった。
「結局、司以外の全員がこの話しってることになるんじゃない?」
「あら?司にはもう伝えておいたわよ?クリスマス一緒にデートするんでしょ?」
「確かにそう約束したけど、早過ぎないかい?」
「そうでもないとおもうぞ。僕と鈴も参加することになったんだし、
早めにデートコースとか決めておかないと、海良町内では遊ぶ場所なんてないんだしな。」
「まぁ、デートするんだったら街にでないと遊ぶ場所ないのはわかるけど、
ボクと竜が付き合うとは決まってないじゃないか。」
「でも、秋ちゃんは竜くんじゃなきゃいやなんでしょ?なら、決まったも同然よ。」
「竜がボクのこと好きとはかぎらないじゃないの?」
確かに、小学生の時に一度キスをしたこともあり、竜とボクは仲もすごくいいと思うが、
竜から告白してもらったことは無い気がする。
「そっか、今まで秋ちゃんに告白させることばっかり考えてきたけど、
よく考えたら秋ちゃんの気持ちは分かってるんだから、照れ屋の秋ちゃんをせっつくよりも、
竜くんをたきつけた方が早いかもしれないわね。」
「待ってよ。そりゃボクも女の子だから告白してもらった方がうれしいけど、
竜が嫌なら無理やり気持ちを曲げてまでボクのこと好きって言わせるのはダメだよ。」
なぜか全員からあきれた目をされ、溜息を吐かれてしまった。
「秋ちゃん。要は竜くんの気持ちをきちんと知りたいわけね?
じゃあ、竜くんが自分から秋ちゃんに好きって言ってくれたらオッケー出すわね?」
「それは、嬉しいし、そこまでされたらいくら照れたってオッケーだすよ。」
竜から真剣に告白されたら、いくら恋愛音痴のボクだって、
きっと快くオッケーをだして竜と付き合うことができるはずだ。
「何だかあやしいけど、わかったわ。司と相談してみるわね。
まぁ、秋ちゃんが言うように竜くんが嫌って言ったら
無理に告白させることはしないから安心しなさい。」
「そうね。やっぱり、女の子から告白するのはいけないのよ。浩太も見習いなさいよ。」
「まぁ、私と司も私からだったし、考えつかなかったけど、女の子としては男の子からの告白って憧れるわよね。」
そのあと、鈴と麻美でお互いの彼氏の話になり、浩太が真赤になることとなった。
ボクは二人の話を聞いてなんだか彼氏ってすごくいいなと思った。
「いつまでも恋話なんてしてたら作品ができないし、そろそろ自分の作品にとりかかるぞ。」
話題の的になったことにより、浩太が作品作りを呼びかけると、
麻美と鈴も十分気が済んだのか、合意する。
「じゃあ、私は司のところにいって今日はもう帰るわね。
明日から秋ちゃんは竜くんの分だけでお弁当はいいから。」
「麻美先輩は最後までからかうのは忘れないんですね。」
真奈美ちゃんの言う通り、ボクは真赤になりながら麻美にさよならをした。
明日からのお弁当どうしようかな。
「流石に私たちも女神先輩のお弁当にばかり頼ってられませんね。」
「そうだな。女神先輩に負けないように、うちらもお弁当作りがんばろうぜ。」
「秋先輩のお弁当には勝てない気がするんですが?」
「由香ちゃん。女神先輩も言ってたけど、がんばるのよ。
勝てないまでも、負けないようにいまから努力しなきゃ。」
「それって、うちのアクセサリーのはなしっちゃうん?」
「いいのよ。とにかく、女神先輩に追いつくように努力することが大事なのよ。
女神先輩の周りに、何かとすごい人が集まるのは女神先輩を見て一緒にがんばろって努力するからそうなってるのよ。」
「ほう、真奈美ちゃんは中々良いところに気づくわね。
あの竜くんも、道場でメグと一緒になって一生懸命練習したからあんなに運動ができるようになったのよ。」
「私も後輩として道場に通ってましたから。
竜先輩はいつも女神先輩に負けないようにって人一倍がんばってました。」
「そうね。メグもそういうひた向きで一生懸命なところが好きになったんでしょ?」
「まぁね。
竜は昔から何かにつけてボクに勝とうと頑張って来たから、
ボクもそんな竜を見てたらなんだかそういうの良いなって思っちゃったよ。」
「ふふふ、本人がいない時はこんなに素直なのに、竜くんから告白されてもちゃんとオッケーするのよ?
間違っても照れて断ったりしちゃダメよ。」
「大丈夫、だと思う。」
「もう、今のうちにどんな風に告白されても大丈夫なように考えておきなさいよ。
いきなりだと混乱しちゃうかもしれないけど、あらかじめ分かっていれば多少は照れなくなるでしょ。」
「そんなこと言っても、まだ本当に竜がボクに告白してくれるか分からないし。」
そういうと、さっきと同じような反応を返され、最後に鈴に肩を叩かれて言われた。
「メグのそういうところ嫌いじゃないけど、竜くんがかわいそうになってくるわ。」
「どういう意味よ。ボクは竜に悪いことしてるのかな?」
「そうじゃないわ。でもね、メグはもう少し自分ってものに興味を持ってもいいと思うの。
いつも他人のことばっかり考えて、自分が周りからどんな風に思われてるか分かってないでしょ?」
「うぅ、多少は分かってるはずだよ。
不幸少女で周りに迷惑かけてるし、最強美少女なんて言われて恐れられてるし、
芸術の女神っていわれてある程度評価してもらってるのはわかってるもん。」
「メグにこの話は早かったわね。いいのよ。メグはこのままでいてちょうだい。」
???
鈴の言ってることはよく分からない。
確かに、中学に入ってからはあまり暴力を振るわなくなったから、芸術の女神なんて言われて多少モテるようになったが、
不幸少女という体質があるので、鈴たち以外にはあまり親しくできないし、
小学校から知っている子が伝えたため、最強美少女として不良たちにはケンカをする前に逃げられると自覚しているつもりだ。
実際最近では竜と司と浩太以外攻撃した記憶がない。
あ、真奈美ちゃんはちょくちょく抱きついてきた時に反撃するか?
「ねぇ。真奈美ちゃん。ボクって何をわかってないの?」
「えっと、私からは教えることはできません。」
「由香ちゃんならわかる?」
「私も推測はできますが、やはり今秋先輩に何かを教えても意味がないかと思います。」
「どういうことよ?花火ちゃんなら説明できるかな?」
「うちも、女神先輩と一緒でこういうんは苦手なんで、女神先輩ほどではなさそうっすけど。」
「ええ?余計にわけわかんないわよ。」
「メグ、とりあえず、時間まで作業しましょ。
今は忘れて学園祭に出す作品に取り掛かった方がいいわ。
麻美と司くんに任せておけば大丈夫だから。」
結局ボクは良く分からないまま、このあと夕方までアクセサリーのデザインを描くことにした。
ネックレスしかなかったが、ブレスレットなど、
革紐と木を組み合わせて色々な装飾品のデザインができ、
あとは種類を増やし、作成に取り掛かることになるだろう。
もう一つ考えている絵は作品の構成とタイトルはすでに決まっている。
描き出せばきっとすぐに筆が動くことだろう。
「お疲れ様。今日って司くんと麻美は先に帰ったんでしょ?」
「そうだね。麻美が出て行ってからずいぶん経つからたぶん先に帰ってるだろうね。」
「じゃあ、私たちも二人で帰るから、メグも二人っきりね。」
あ、今日は暗くないし、浩太も同じ方向だと思っていたが、
付き合いだしたのだし、おくっていくんだっけ。
「あれ?真奈美ちゃんは?」
「メグがデザインに集中してる間に由香ちゃんと花火ちゃんと一緒に帰って行ったわよ?
なんでも私たちに負けないように親友の仲を深めるんだってさ。」
「私も鈴たちと帰っちゃだめ?」
「メグって竜くんの荷台に乗るんでしょ?
だったら、行き先の決定権は竜くんにあるし、私たちと一緒だと余計に意識するだけじゃないかしら?」
確かにそうかも、今日までうまく司や麻美が一緒にいたのでなんとか、
あまり意識せずに来れたが、鈴の家に向かってる間浩太と鈴の邪魔をしてしかも、
鈴の家に着いた後も浩太が一緒にいても竜の荷台でうまく話せるとは限らない。
二人のカップルを邪魔するよりも竜と普通に帰った方が意識しないで済むかもしれない。
「メグ、私と浩太は帰るわね。竜くんとうまくやるのよ。」
「そんなこと言われると余計に意識しちゃうよ。」
「女神ちゃんにしてはいい傾向だと思うよ。
今まで完全に友達感覚だったのが、男の子として竜を意識してるんだからな。」
結局二人は先に帰ってしまったので、ボクは竜を呼びに体育館に向かった。
シュッツ ダンダン ガツン。
体育館に着くと、竜の他には誰もおらず、一人で残っている竜の姿があった。
「さっきのダンクでしょ?本当に届くんだね。」
「お?秋か。さっきまで秋が来るからってみんな待っとったんやぞ。」
「そうだったんだ。ちょっと集中しちゃって、きりがいいとことまでやろうと思ったらこんな時間になっちゃったよ。」
「そっか。これ片づけてくるで、ちょっとまっとり。」
そう言って竜はバスケットボールを倉庫にもって行った。
「おまたせ。」
「ううん。ボクの方こそ待たせてごめんね。」
「そうでもないで?ほんま、ついさっきまでみんなおったし、自主練習とはいえ、バスケすんのは楽しいしな。」
「そっか、今度自主練習に参加しちゃだめ?ボクもダンクやってみたい。」
「秋のジャンプ力なら届くかもしれへんな。こんなにちっこいのにすげージャンプすっからな。」
そう言って竜はボクの頭を撫でてきた。
「ちっこくないよ。竜がでかすぎるんだよ。」
「まぁな。なんも勝てへんけど、身長だけは秋にいつの間にか勝ってたからな。」
「そんなことないよ。竜だってすごいと思うよ。」
「サンキュ。ほな帰ろか。」
「うん。」
さっきまで変な心配してたけど、竜と二人きりになっても、竜はいつもの竜だと思えた。
頭をなでられた時はちょっと緊張したけど、なんだかくすぐったかったし、
ずっとしてほしいと思えた。
「はよ乗れよ。それとも今日は走って行くか?」
「ううん。後ろに乗る。スカートじゃなかったら走るのもいいかもね。」
こう言ったがボクはスカートも最近では気に入っている。
だって、走れない代わりに、竜の後ろに乗れるから。
竜の後ろに乗ると、ヘンテコなヘルメットを被った竜は力を入れて漕ぎだした。
「おい、そんなひっつくと汗かいとるしあついやろ?」
「ん〜。もう日が高くないしそうでもないよ。落ちるといけないからこうしてる。」
「そっか。まぁ、落ちるとは思えへんけど、秋がそうしたいならそうしとき。」
「うん。」
まだ、竜の顔を見ながらこういうことはできないけど、後ろからなら、甘えられる。
そのあとも、今日のバスケ部であった話を竜がしてくれたり、ボクが今作ってるアクセサリーの話などをしながら帰った。
鈴に意識して上手く話せないかもしれないと言っていたが、竜と一緒にいたらなんだかいつの間にかいつもの自然な雰囲気になっていた。
荷台で竜の背中を見つめながら何となく夕焼けのためだけじゃなく顔が赤くなっているところを除けば前と変わらない二人の関係がそこにあった。
「バスケ部の練習参加したいならヨッシーに言うとけよ。」
「う〜ん。吉川先生に運動できるのばれると、運動部に掛けもちとかで参加させられそうだし、みんなにバレない時にするよ。」
「せやな、だったらみんなにも見せへん方がいいか?」
「うん。今日みたいに竜が一人で残った時にワンオンワンしよっか。」
「これでもバスケ部のエースやから負けとれへんな。」
「まだまだ、ボクに勝つのは無理だよ。ボクに勝てたら何かいいことしたげても良いよ。」
「秋と掛けするん久しぶりやな。ほな、この夏でうまくなって負かせたらなあかんな。」
いよいよ。秋と竜の関係に進展がありそうですね。
そして、軽くフラグが立ちましたね。AKIはこういう伏線大好きです。現在28を書いている段階では何にも考えずに伏線張りました。
ではでは、おまちかねの?
テーマ発表にまいります。“秋のツンデレをどう表現するか”です。
正直ペコの方がツンデレな感じがし、実は番外編ペコの気持ちはこの28を書く少し前に書いていたため、ペコに負けないように秋にもツンデレになる要素をたくさん入れ込んでみました。これって27と同じじゃないかという感じもしますが、ここ最近の課題なので申し訳ありませんがこのテーマでがんばらせてもらいました。
では、今話もお読みいただきありがとうございました。