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再転の姫君  作者: 須磨彰
21/79

チャプター20

キャプチャー20に伴ってショートの番外編をUPしようと思います。

そちらもよろしかったらご覧ください。

宝物の地図



「いやぁ。結局麻美にまで手伝ってもらっちゃって悪いわね。」


今日は、結局県大会本戦の二回戦で負けた司の残念会&本戦出場祝いにボクの家でバーベキューをしようと、竜と司と麻美が家に来ている。


「これくらい良いわよ。それよりどこかのお二人さんが空腹で倒れちゃう前に鉄板を運びましょ。」


「うん、確かこのあたりに。」


そう言ってボクは棚の上の方を見た。

すると普段はあまり使わないので結構上の方で埃をかぶっている鉄板とアミのセットを見つけた。


「ありゃ、これじゃ届かないね。竜に取ってきてもらえばよかったな。」


「竜くんと司は薪の火をおこす手順を、おじさんに教えてもらってるんだから仕方ないわよ。あそこの台を使えば私たちでも届くわよ。」


そういうと古くてボロボロの台を持ってきた。


「ありがとう。安定しないからちょっと抑えていて。」


そういうとボクは台の上に乗って鉄板に手を伸ばした。


ドサドサ「キャッ!」ガラガラ!


下から見たら鉄板とアミで見えなかったが、何か上に乗っていたらしく。

動かしたとたん雪崩が起こり、ボクと麻美は下敷きになってしまった。

実はボクだけならよけることもできたが、麻美がけがをしたらいけないので麻美をかばってほとんどボクの上に落ちてきた。


「秋ちゃん大丈夫?」


「あはは、最近平和だったから油断してたよ。ごめんね麻美。」


「なに言ってるのよ。全くまた私をかばって、鉄板とかアミみたいな危ないものは当たらなかったみたいだけど、けがは無い?」


「うん。大丈夫だよ。というかこんな風に叱られるの。なんだか即視感的なものを感じるな。」


「前世の記憶とかいうやつ?正直司から初めて聞いた時は信じられなかったけど、秋ちゃんが言うとなんだか本当な気がするわね。」


そうなのだ。二度目の臨死体験後あまりにも感覚が鋭敏になったため、このまま皆に隠したままなのも嫌だったので司と竜それに中学校にはいってからは鈴と浩太にはボクから教えて、

司から麻美にも伝えてもらい。

特にボクの周りでいつも一緒にいてくれている人たちにはこのことを考えてもらっている。


「ボクも最初はそれほど気にしてなかったんだけどね。感覚が鋭くなってからはこの人がどれくらい前世で仲が良かったのかわかっちゃうから。」


「そうなんだ。じゃあ私はきっと前世の恋人ね。秋ちゃんの前世は男の子だったんでしょ?だったら絶対に私惚れていたわ。」


ちょっと赤くなってしまった。


「確証はないけど、たぶんね。でも、その感覚によると前世でも不幸体質だったみたいで、竜と司以外は微妙にみんな距離があるのよね。」


「馬鹿ねぇ。どうせ秋ちゃんは不幸体質が危険だからって自分から離れて行ったんでしょ?

私なら多少危険でも恋人から離れたいなんて思わないもの。それか毎回デートに竜くんが一緒に来てあきれちゃったのかもしれないけどね。」


「麻美ぃ。それじゃあボクは竜意外と付き合うのが無理みたいじゃないか。ボクは自分の思うままに恋愛するぞ。」


「あら?竜くんならちょうどいいんじゃないかしら?」


麻美はここのところ竜とボクをくっつけようとしている。


そしてボクはというと、


「嫌だよ。竜が恋人だなんて、なんだか変なんだもん。それに、ボクはお金持ちで、性格もよくて美形で、運動も頭もいいような理想的な男の人としか付き合わないって決めてるの。」


「あら?お金って部分は、今はわからないけど、他は全部大丈夫じゃないかしら?それとも竜くんの顔は秋ちゃんの好みじゃないんだったかしら?」


「はぅ。」


やっぱり恋話になると麻美には勝てないようだ。

雪崩で落ちてきたよく分からない布の塊や本を片づけていると最後に麻美が手に取った一冊から紙切れのようなものが落ちた。


「あら?何かしら?秋ちゃん読める?」


「ん?えっと、<ここに我が宝あり>って書いてあるわね。」


「ええ?それって宝の地図じゃないの?すっごぉい。」


「まさか?だってこの家おじいちゃんの代に立てたのよ?そんな埋蔵金なんて無いわよ。」


「おじいさんが昔残した遺産かもしれないじゃない?とにかくこの本は持っていきましょ。」


「まぁ、別にかまわないと思うよ。それよりも予定よりもずいぶん時間使っちゃったからそろそろ行かないとみんなが心配しちゃうね。」


そういって、鉄板をボクが、アミと串を麻美がもってみんなが待っている庭へと向かった。

庭につくとお父さんの指導の甲斐もあってか二人も無事火をおこすことに成功したらしくボクら待ちの状態だった。


「秋ぃ。遅いよぉ。早く食べようよぉ。」


「おまたせ、ちょっとした事故があってね。まぁ私も秋ちゃんもけがしたわけじゃないから気にしないで。」


麻美が雪崩事件について語っていたがこれは問題ない。

時間がかかりすぎているし、埃を被ってしまったので下手にごまかすより何もなかったことをきちんと報告した方がみんな心配しない。


「まったく、竜と少し離れると寂しくって問題起こしちゃうんだから。」


「その言い方だとボクが竜の側にいないのが不満で、わざと事故をおこしたみたいじゃないか。」


麻美はボクのことをからかうことも、きっちり忘れなかったようだ。


「まぁ、俺の側にいろよ。魔除け札みたいに言われるんは嫌やけど、面倒が起きひんのは確かやからな。」


「それよりも、倉庫で面白いもの見つけたのよ。おじさん、これ何か知ってますか?」


「ああ、懐かしいね。お爺ちゃんの宝物だね。」


「え?お父さん知ってるの?」


からかわれ過ぎて真っ赤になっていたボクもお父さんの言葉で復活できた。


「もちろんだよ。この宝物はみんなの共通だからね。これなら危険もないから秋たちでも安心だ。“協力してくれる人を集めて”行ってくるといいよ。」


「おじさん。何がここにあるんですか?俺らの共通ってことはみんなで使えるようなものなんですか?」


「そうだね。全て宝をみつけたらわかるよ。」


「冒険みたいでぇ。面白そうだねぇ。」


「そうね。来週末にでも、みんなで行きましょっか。ついでだし、浩太と鈴にも声をかけましょ。」


「いいわよ。ふふふ、秋ちゃんといると本当に次から次へと面白いことが起こるわ。」


「またそういうことを、好きでこんな体質じゃないんだからね。」


そのあとは、みんなで楽しくバーベキューをした。

ペコちゃんがお肉の匂いにつられてあんまりにも鳴くのでお座りをさせてお肉をあげた。


「なぁ、ペコって俺にだけ絶対懐かへんよな?」


「ペコから見たらぁ。秋を奪いあうライバルだからねぇ。」


「なんやそれ。俺のライバルはファンクラブに百合趣味の後輩に犬か?」


「うーん。もっと多いと思うよぉ。秋の魅力は種族を超えるみたいだねぇ。」


途中竜と司が良く分からない話をしていたが、麻美とのおしゃべりに夢中であまり聞き取れなかった。






「宝の地図?いいわね。なんだか面白そうじゃない。」


鈴は参加してくれるみたいだ。

今日朝一番に宝の地図の話をしたらこの反応なので大丈夫だろう。


「あとは、浩太だけね。週末予定入ってないって言ってたし大丈夫だよね?」


「浩太は参加決定よ。というかメグのお誘いを浩太が断るわけないじゃない。たとえ何か予定が入っててもメグがお願いしたら全部キャンセルして参加するわよ。」


「鈴はそれでいいの?」


「大丈夫よ。だって秋には竜くんがいるでしょ?二人がくっつけば自然と浩太も気付くはずよ。人間ってそういうものよ。」


「鈴ってなんだか肝っ玉母ちゃんみたいね。いいお母さんになるわぁ。でも、相手は尻にしかれること決定ね。」


「そんなことしないわよ。相手は立てるわよ。影から操るに決まってるじゃない?」


「それも形が変わっただけで尻にしいてるんじゃないかな?」


「もう、そんな可愛いお口でお尻とか言わないの。じゃあ週末空けておくから何か準備するものとかあったら教えてね。」


「了解。今この宝の地図と古文書?を読んでいるから読み終わったら必要なものを教えるわ。」


そう言ってボクは古文書?のページをめくった。

お爺ちゃんが書いたものなので少し古い言葉を使っているのもあるが、なにより内容が暗号めいていて中々意味がわからない。

読み説くには少し時間がかかりそうだ。








「ワンワン」


今日は約束の宝探しの日だ。

ボクらは今日古文書の指示に従い、海良町内を回ることになった。

というのも、古文書によるといくつかのチェックポイントがあり、それらを見つけないと地図に書かれたお宝の場所に直接いっても宝は見つからないようになっているようだ。

まぁ歩く距離もそこまで多くはないのでペコちゃんの散歩も兼ねてみんなでピクニックということになった。


「浩太。お前山登りにでも行くんか?」


竜がそういうのもうなずける。

浩太は宝探しと聞いて何を思ったのか冒険者のそれといった格好をし、大きなリュックを背負っていた。


「みんな何故そんな軽装なんだ?藪の中にはいったりするんだろ?

特に女の子たちはそんなに手足が出ていたらけがをしてしまうぞ?」


「あのねぇ。メグはともかくとしても、私たちは危険な場所とか草むらには入らないわよ。

私たちの担当はお弁当の作成と、謎ときよ。力仕事は任せたわ。」


「なるほど、言われてみればその通りだな。じゃあ頭脳派の僕もこんな格好必要なかったのか、

じゃあ悪いが女神様の家に荷物を置いて行かせてくれ。必要なものだけポシェットに入れ替えてくる。」


そう言って浩太はリュックをボクの家の玄関の中に置くと、さっきよりはすっきりした格好になった。


「さぁ。浩太のボケも済んだしぃ。行こうかぁ。」


「なんか司がいうと力が抜けるわね。まぁいいわ。行きましょ。秋ちゃんほど上手にはいかないだろうけど私もお弁当作ってきたから期待しててね。」


「麻美と司は相変わらずらぶらぶだね。ボクらも行こう。距離はないけど謎が難しかったら意外と時間がかかってしまうかもしれないしね。」


「せなや。浩太のボケは鈴にまかしとけば平気やろ。」


「ワンワン。」


こうして六人と一匹は第一チェックポイントである近くのお寺に向かうのだった。


「ねぇねぇ。この“すべての力を合わせて金を響かせればおのずと分かるだろう”って何のことだと思う?」


ボクは古文書をみんなの分かる言葉に書き直して重要な部分だけ二枚の紙に写し一応原本をもちその紙を鈴に持ってもらっている。

鈴ならボクの不幸に対処することができるので、なくしてしまうことはないし、浩太が横にいるので謎解きもスムーズに進むはずだ。


「せやな。みんなでいっぺんに金をたたいたら大きな音がして仕掛けが作動するとかやないかな?」


「あのねぇ。ボクのおじいちゃんはカラクリ師でもなんでもないんだよ。

そんなもの作れるわけないじゃないの。たぶん人が多くいると何かが起きるってことだと思うわ。」


「え?じゃあ六人で大丈夫かしら?というかこの宝の地図って何人でくるかわからないんでしょ?」


「大丈夫よ。お父さんにいろいろ聞いたら【その六人なら、無事に宝にたどりつけるだろう】っていってたもん。」


「相変わらずぅ、秋に甘いねぇ。おじさんは他になんて言ってたのぉ?」


「それがね。ボクも教えてくれるだろうと思ったんだけど、ヒントはいくつかくれても、絶対に宝の在り処とか、宝が何かはおしえてくれなかったの。」


「じゃあ、とにかく古文書の通りに動くしかないわね。メグのお父さんがそういうならきっと自分たちで見つけないと意味がないものなのよ。」


「せやな。頑固なおじさんやけど、根はいい人やし、思慮深い人だからなにか考えがあるんやろ。」



「わかった。ちょっとみんな来てくれる?」


話をしている間にも浩太はなぞ解きをしてくれていたようだ。

正直ボクらはまったりと会話なんか楽しみながら全然謎について考えてなかったのでもうわかったのかとびっくりした。


「ここにきてみんなでこの綱を握ろうとしてくれるかい?」


浩太の指示のもと、全員で鐘をつくための棒から垂れ下がっている綱を持とうとする。


「ちょっと、六人で持つにはきついんじゃない?背の高い竜は平気かもしれないけど、ボクらはきついよ。」


ただでさえ鐘つき堂の狭い空間に六人も入っているのに竜などは体が大きくて結構密着してしまう。


「でもこうするとみんな自然に目線が上を向くよね?そして目線の先にあるのは、あれだ。」


確かに一番上を持っている竜以外のみんなは目線が上を向くことになった。

そしてそこには少し古めかしい文字で“知”と書いてあった。


「“知”って書いてあるけど、あれが一つ目のキーワードかな?」


「たぶんね。これでチェックポイントを全部回らないといけない理由がわかったね。

たぶん全部集めると何か意味のある言葉になるんだよ。そしてそれが宝を見つけるためのヒントか何かになってるんだと思う。」


「なるほどね。しかし浩太って結構頼りになるのね。」


「ふふふ、伊達にRPGなどをやり込んでいないのさ。クリア条件を満たすにはキーワードが必要なストーリーは定番だからね。」



「「・・・・」」



ゲーム脳ここに極まるだった。しかし、浩太のおかげで意外とすんなり謎がとけたのでみなで労って次のチェックポイントへ向かう。


『秋ちゃんも大変ワンね。こんなメンバーで本当に大丈夫なのかワン。

特にあの竜とかいうやつガルルル。秋ちゃんにべったりくっつきやがって。クンクン』


「キュンキュ〜ン。」


「おまたせペコ。次の場所に行こうね。」


「ワン!」


謎ときの間、近くの木につないでいたペコを回収するとボクらは次のチェックポイントへと向かった。






「このお地蔵さまでいいんだよね?」


「ええ、鈴はここら辺に住んでないからわからないと思うけど、ボクらの中でお地蔵さまっていったらこれのことなんだ。」


「そうだねぇ。僕や麻美や秋は特に同じ地区だからぁ。お地蔵さまの話は良くきかされてるんだぁ。」


「確か、道祖神とかいうので、旅の安全を守る神様なのよね?」


「ああ、その話なら僕も聞いたことあるよ。竜と僕も地区は違うとはいえ同じ小学校出身だからね。」


「このお地蔵さまなのはわかったけど、謎ときのヒントが良く分からないわよ?」


「なんて書いてあるんや?またさっきみたいにその通りに動いたら自然に見つかるのとちゃうんか?」


「えっと、“集いし者で手をつなぎ、活目せよ”って書いてあるけど・・・」


「一応やってみるぅ?」


「そうね。さっきもそれでうまく行ったんだし、やってみましょ。」


麻美がそういうと、今隣り合っているものどおしで手をつないでみた。

ちなみにお地蔵さまに向かって、左から鈴・浩太・竜・ボク・司・麻美の順番だ。

順番に意味はないのだが、らぶらぶな司と麻美は一緒にいるし、ボクの両脇は竜と司が一番安全なので自然とこういう並び順に常になってしまう。

鈴も意外と浩太にアピールをかけているようだ。



・・・・・・



「なにも起きないわね。というか起きるわけがないわね。そっちはどう?

もし並ばせるのが目的なら端っこの私か鈴ちゃんに何かがみえるとおもうんだけど。」


「私の方もさっぱりよ。というか、それなら手をつながなくても立ち位置を変えるだけでわかっちゃうからね。」


「うーん。困ったね。」


そういうと、両手をつなぐためにリードが持てなかったため代わりにペコを預けた麻美からペコを返してもらうとみんなで謎について考えた。




「ペコ、困ったわね。手をつないで何かを見なきゃいけないんだって、どうしたらいいと思う。」


ボクは八方塞がりになり、ついにペコにまで相談をした。

そうすると、ペコは何を思ったのかお手のポーズをする。


「そっか、ペコも手をつなぎたかったのね。はい、良い子いい子。」


ペコの手をボクの左の手のひらに乗せると、逆の手で撫でてあげた。

ペコはとっても賢くてかわいらしい本当にいい子だ。

何故かいつも一緒に登下校をしているのに竜には懐かず、逆にペコの鳴き声で朝は竜が来たことがわかり、帰りもボクが家に着いたことがわかるので、家族は重宝していたりする。


「それだわ。古文書には集まった者で手をつなぐって書いてあったのよ。別に人とは書いてなかったじゃない。」


「え?ほなペコも一緒に手をつないでもっかい並ぶんか?」


「違うわよ。もう一人ここにはいるでしょ?その人と手をつなげばきっとわかるのよ。」


そういって、麻美はお地蔵さんの方へと寄って行った。


「ほらあったわ。次のキーワードは“田”ね。」


麻美が指し示すとおりにお地蔵さまの右手を見るとそこには“田”と彫られていた。


「なるほどね。道祖神はもともと人だったらしいし、これなら納得がいくよ。これでキーワードは“知”と“田”の二つになった。」


またしてもキーワードとなる文字が判明し、浩太の推論が正しければあと二つのキーワードを集めれば意味のある言葉になるらしい。

結構みんな頭がいいのもあり、意外とスムーズに謎ときは進んでいく。


「それじゃあ、三つ目のチェックポイントにレッツゴー。」


ボクはそう言うと、ペコを引き連れて歩きだした。ペコには偶然とはいえヒントをもらったのであとでご褒美におやつをあげなくちゃ。


『まったく、秋ちゃんは、頭はいいのに手が掛かるワン。でも嬉しそうだし、いいとしようかなクン。』








「ちょっと、竜。絶対離したら承知しないからね。」


「はいはい、真昼間から幽霊なんてねぇよ。」


そう、第三チェックポイントは墓場だ。

墓場の中にある戦没者の慰霊碑に次のキーワードがあるらしい。

田舎の墓地なので大きくはないのだが、それでも墓場の雰囲気というものはあるのでボクは絶対に入らないとゴネたのだが、結局竜の手を握って入ってきた。


「メグ、可愛すぎるわよ。お姉さんの母性本能がものすごい勢いでくすぐられてるんだけど。」


「うふふ。普段完璧少女の秋ちゃんもこんな時は一人の女の子なのね。」


「うるさい。無駄口叩いてないでさっさとキーワードみつけるわよ。」


「でもさぁ。そのキーワードが難しいんでしょぉ?

今まではそこに一文字あるだけだったからぁ、見つけるのは簡単だったけどぉ、墓場にはたくさんの文字があるから限定するのは難しいんじゃないかなぁ?」


「そんなことないわよ。ここのキーワードは“藻”よ。さあさっさと出るわよ。」


「いや、なんでそんなことわかるんだ?もうちょっと調べてからの方がいいと思うよ?」


「浩太の言う通りだ。俺ももう少し考えた方がいいと思うぞ。」


「うるさい!ギャー!!離さないでよ!!」


ボクは反論した竜に残酷を当てたのだが、テンパっていることもあり、手加減ができずかなりのダメージをくらった竜は手を離してしまった。


「無茶いうなや。まぁ理由は外に出てから聞いたるわ。行くぞ。」


「竜は秋にあまいなぁ。」


「あほか、そんなんちゃうわ。このままここにおったら俺も一緒に埋められるっちゅうの。」


「それもそうだねぇ。じゃあ行こうかぁ。」


くそ、絶対みんな面白がってやがる。

浩太はさっきから使い捨てカメラを何度もこちらに向けていた。

怖がって気づいて無い思っている様だがあとで回収しておこう。

墓場を出たボクはみんなに説明を始めた。


「古文書には“魂の集まる場所にて背を向けろ”って書いてあったでしょ?」


「そうだねぇ。だから僕たちは一番魂の集まっている慰霊碑にいったんだよぉ。」


「そうよ。でも実は行く必要なんてなかったの。あの石碑に何か書いてあるわけでも、墓地に何かがあるわけでもないのよ。」


「え?どういう意味だ?」


「あの場所に関係があったのは方角よ。あんな場所にキーワードなんて書いてあったらそれこそ林の中で木の葉を探すことになるでしょ?

だから慰霊碑の立っている正面から後ろを向いた方角にある藻神神社を示してるのよ。

そしてそこの境内には藻って文字が一文字大きく書いてあるでしょ?だから正解は藻なのよ。

この文字は死者を祀る喪って文字から縁起が悪いからってことで変わった字で結構有名だからキーワードとしてはぴったりだし、一応現場まで行ったけど他の選択肢はなかったから間違いないわ。」


「とっても長くて詳しい説明をありがとう女神様。

ところで今までの謎は全く下調べしていなかったのは一週間かけてこのポイントだけを入念に調べておいたのかい?」


「う・・・そうよ。

場所が墓地ってわかったから先に考えられる選択肢は全部調べておいたわ。」


「メグ・・・やっぱりあなたは完璧少女なのね。自分の苦手な分野を回避するためにそこまでがんばるなんて。」


「もう、うるさいな。そんなこと言ってると、そろそろお昼にしようと思ったけどお弁当わけてあげないぞ。」


「女神様ぁ。そればかりはご勘弁をぉ〜。」


「ん?浩太の分は無いわよ?さっき撮影したカメラを渡してくれたらひょっとしたら少しは余るかもしれないけど、

竜と司なら浩太の分くらい食べられるだろうからね。」


「そんな殺生なぁ。わかった。しかし、今日のみんなの写真が入っているから破壊はしないでくれ、現像してさっきの分だけ抜き取ることは許可しよう。」


そういって、先ほど全部取りきってしまったのだろう。

使い捨てカメラをボクに渡してきた。

やけに素直なのが気になるがお弁当を食べるために苦渋の決断をしたのだろう。


「浩太。メグに渡しちゃっていいの?」


「ふ、カメラはもう一台あったのさ。」


「現像したら私にもちょうだいね。」


「鈴、浩太次のチェックポイントは小学校だしあそこでお弁当にしましょ?」


「「了解。」」


小学校に着くと校庭の一角にある芝生に、麻美と鈴が用意してくれたシートを敷いてみんなで輪になって座った。


「じゃじゃ〜ん。」


「「「おおお!」」」


「相変わらずメグの料理はおいしそうね。」


「秋ちゃんは昔から料理とか本格的だったからね。ひょっとしてこのパン手作り?」


「さすが麻美だね。そうだよ。昨日のうちに焼けるように準備しておいたんだ。」


ボクのお弁当は手作りのロールパンに真中で切れ目を入れてそこにジャムとかサラダといった具材をつめこんだお惣菜パンだ。


「メグには負けるけど、早起きして作ったんだから私のも食べてね。」


鈴はオーソドックスにおにぎりのようだ。でも中の具は結構種類が多く、こちらも美味しそうだった。


「二人とも予想通りのお弁当ね。これなら私の分も食べてもらえそうね。」



「わぁ〜おいしそう。」


麻美が取り出したのは少量のサンドイッチとクッキーだった。

サンドイッチも挟んであるのはジャムとか甘い物がおおいのでどちらかというとデザートのようだ。


「麻美ちゃんの気配りには負けるわ。私はおやつにまで気が回らなかったわ。」


「そうでもないわよ。秋ちゃんのお弁当には勝てないから必然的にこうなっただけよ。

でも秋ちゃんもあまりたくさん量はつくれないから鈴ちゃんのお弁当も大事よ。これからこうやって六人が集まる時は、私はおやつを担当するわね。」


今まで少し距離があったような気がしていたが、麻美も鈴もすっかり仲良くなった気がする。

今日は六人で集まってよかったな。


「おお、うめぇ。こら司お前は彼女のお弁当を食べろ。女神様のお弁当が減るじゃないか。」


「麻美のデザートも楽しみだけどぉ。甘いものばっかりじゃ身が持たないよぉ。」


「はいはい、私の作ってきたおにぎりも食べてよね。」


「うむ、シャケはどれだ?」


「まったく、はい。ホントにシャケが好きなのね。」


みんな今日の宝探しの話をしながらものんびりとお昼を過ごした。

多少の小競り合いはむしろ仲がいい証拠だ。

先ほど活躍してくれたペコにもお弁当の隅に入れておいた唐揚げをひとつあげた。


『まったく秋ちゃんは、唐揚げ一個で機嫌をとろうなんてクンクン。この尻尾は秋ちゃんが撫でてくれたから振っているんであって、唐揚げにつられたわけじゃないんだからねワンワン。』




「それで、最後のキーワードなんだけど、“扉”だよね?」


「せやな、“扉”以外おもいつかへんな。」


「え?浩太も竜くんもなんでみてないのに分かるの?」


「鈴ちゃん。古文書の文をよんでくれるぅ?でもぉ、僕も“扉”だとおもうよぉ。」


「“皆の憩いの場にて今日の行動を振り返れ”よ。これがなんで扉になるの?」


「鈴ちゃんとちがって私たちはここの小学校出身だから、この文章をみたらわかっちゃったのよ。一応確認のために来たけど、これは間違いないと思うわ。」


そうしてお弁当を片づけ終わったボクらは校庭の一角にある池へと向かう。

池のそばには大きな岩があり、そこには大きな文字で“扉”と彫られていた。


「昔の生徒の悪戯って聞いていたけど、まさかボクのおじいちゃんが原因だったなんてね。」


「あら、そうとは限らないわよ。お爺さんは宝の地図を作っただけで、その時偶然あった落書きを使っただけかもしれないでしょ?」


「ボクもそう信じたいんだけどね。扉って普通一番したは止めるかせめて払うでしょ?

この文字は跳ねてるじゃん?古文書のおじいちゃんの癖と同じなんだ。

昔お爺ちゃんの日記を見つけたことがあるからこの古文書は間違いなくお爺ちゃんの手書きだよ。」


「あはは、秋のおじいちゃんは面白いひとやったんやな。」


「これを前にしたら反論できないわ。」


「まぁこれでキーワードは全部集まったわけだし、お宝の場所に向かいましょ。」


麻美に慰められながらボクらはそこからそれほど遠くない坂下神社へと向かった。







「キーワードは、“知”“田”“藻”“扉”の四つであってる?あとはこの古文書の文章を解読すればお宝は見つかるんだね。」


「浩太出番よ。あなたのゲーム好きがここで答えをみつけるはずよ。」


「無茶言わないでくれよ。第一この文章じゃ抽象的すぎて何を言ってるのかさっぱりだよ。」


「確かにぃ。知っている田んぼの藻を扉につければお宝がみつかるのかなぁ?」


「さすがに、それはないと思うわ。司でも分からないみたいね。」


「鈴ちゃん、もう一回読んでくれへん?やっぱり古文書のヒントが重要なんやとおもうんて。」


「いいわよ。

“日々を送りし冒険者よ。謎を解き、すべてを集めし時この場でその宝を開くべし、真実の宝はここにある。”

これで全部よ。メグの翻訳だから間違いはないと思うし、実際原本の方ともあまり変わってないわ。」


「そうだね。翻訳の信憑性はボクが保証するよ。でもこれだと宝箱がここに置いてあってそれを開く合言葉のように書かれているわね。」


「なに言ってるんだ。合言葉を唱えて宝箱を開くのは物語の中だけだよ。」



「「・・・・」」



ゲーム脳の浩太にそう言われてジト目を全員が送ると、浩太は頬を書いて気まずそうにした。


「まぁ、浩太が言うことは正論ね。でもやっぱりこの文章とキーワードをどうにかしないといけないみたいね。」


「そうだね。ボクもそう思うよ。キーワードだけじゃなくこの“サカサさん”でないといけない理由がなにかあるんだと思うわ。」


「ん?秋、今なんて言うた?ここは坂下神社やないんか?」


「ああ、正式名称は坂下だけど、地元の人はサカサさんとか呼んでるのよ。通称名称よ。」


「通称名称ってのが何かはわからんけど、ひょっとしたらわかったかもしれへんぞ。今までのキーワードは知・田・藻・扉だったが、これは順番がサカサなんじゃないのか?

逆から考えると意味のある文章になるとか。」


「じゃあぁ。扉に藻をくっつけると、田んぼが知っている宝にありつけるのぉ??」


「司、あなた考えるの諦めてない?普段ならそんなこといわないじゃない。」


「うん。だって、三つ目が“藻”ってわかった時点で元々知っていた扉とサカサさんで全部わかっちゃったからねぇ。」



「「えええぇぇ??」」



「さっき司古文書の文章が意味不明っていってなかったっけ?」


「違うよぉ。文章が抽象的すぎるってのに確かにそうだねぇ。って答えただけだよぉ。

僕は一度も分からないなんていってないよぉ。」


やられた。

確かに司はこういうやつだった。

とうの昔に答えがわかっていてもみんなが悩んでいるのを楽しみながら眺めるそんなやつだ。


「まぁ、ボクもさっきのヒントで流石にわかったけどね。確かにこれは危険もないのに手に入れられる。とっても大事な宝だよ。」


「秋の場合はぁ、危険もないのにっていうのは変だよぉ。」


「うるさいわね。確かにそうだけど、今回の宝探しに関しては当たってるじゃないの。」


「メグ、そろそろ私たちにも教えてくれない?二人だけで納得して話を進めないでよ。」


「ああ、ごめんごめん。簡単に説明するなら万葉仮名みたいなものよ。それぞれの漢字にはひとつずつ言葉に変換できるのよ。

最初から順に“ち・だ・も・と”といった感じにね。それで最後にサカサさんってことで逆から読むと、ともだち。そう、友達になるのよ。」


「わぁ。なるほどね。秋ちゃんのお爺さんって素敵な人だったのね。」


「ありがと、宝の地図作るために学校の岩にいたずらしちゃうようなやんちゃなおじいちゃんだったみたいだけど、

でも本当に良いおじいちゃんだったんだってボクもおもうよ。」



みんなの顔を眺めると、本当に無理をしないで自然とあふれだすような笑顔が見えた。


おじいちゃん、本当だね。



友達は人生の宝物だね。








またしても、夏合宿に進めませんでした。だって、竜に何か→じゃあホームパーティ→蔵で何か見つけるのもいいかも→当然宝の地図でしょ。


というAKIの中での方程式が発動してしまいました。さらにこの話を書いていたら書きたい構成ができてしまい、どうしたものかと悩んでおります。


さて今回のテーマは“友情”です。ここでツンデレワンコと書きたくなるおバカなAKIですが六人の友情が描けていましたでしょうか?

AKIの中ではかなり好きな一話となっております。


それではキャプチャー20をお送りいたしました。

本日もご声援ありがとうございました。



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