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再転の姫君  作者: 須磨彰
20/79

チャプター19

白球とボク





「カキーン!」


今日は前に司にお願いされた試合の応援に来ている。

田舎の野球部なのであまり人数はいないが、ほとんどが小学校の時からずっと続けてきた野球少年たちなので結構強く、今日は県予選の決勝だ。

ボクは約束通りにはちみつ漬けと司の分のお弁当を持って竜と麻美の三人で見にきた。


「司ぁ。来てやったぞ。」


「竜ぅ。それに麻美と秋も。」


前までなら麻美よりも先にボクに反応しただろうが、今は司と麻美はラブラブなのでこの順番は仕方ない。

というか麻美に気づかなかったらボクからの制裁が待っている。


「ちょうど良かったよぉ。三人ともベンチに降りてきてぇ。そっちの扉からグラウンドに降りられるからぁ。」


「え?ボクらもベンチに入ってもいいの?」


「いいよぉ。というか是非ベンチに入ってほしいんだぁ。」


ん?

何か変だが、どうせなら近くでしかも屋根があるところで観戦したいので司の言葉に甘えてグラウンドの中に入っていく。


「監督ぅ。補充が着きましたぁ。」


「おお、よかった。これで不戦敗にならずに済む。」


え?

補充ってどういう意味?

というかボクら部員じゃないのにベンチに入るってやっぱりおかしいよね?


「司?どういうこと?ボクら不幸が起きないように時間ぎりぎりにここに来たのに誰か怪我したわけでもないでしょ?」


そういうと司と監督はボクらに説明してくれた。

なんでもこの会場までバスと車で分乗してきたのだが、そのうちの車の方が準決勝までの会場に間違えていってしまい。

バスで来た監督と、8人の選手しかいないらしい。

もう一つの会場は遠く、このままでは不戦敗になってしまうらしい。

もし車でこちらに向かっている三台の車が到着しても時間内にベンチに人がいないと交代も不可能なため竜はおいておいて、ボクや麻美までベンチに入れられたのだそうだ。


「まぁ、実際に試合に出なきゃいけないのは竜だし、別にいいよ。竜なら野球もやったことあるし問題ないわね。」


「え?秋が出るんじゃないのぉ?四番でピッチャーにいれてもいいよぉ?」


「バカ言わないでよ。ボクはこれでも女の子だよ。」


帽子をかぶって髪を隠し、マスクでもはめればばれないだろうが、マスクなんてないだろうし、ここは竜に出てもらう。


「ん?マスクならあるよぉ。砂よけで使うひと結構いるんだぁ。

試合中日差しが強いからペイントも許されてるしぃ、もしだれか怪我したら出てもらうからねぇ。」


なんでそんなものを用意しておくかな。

しかもバスに荷物を積んできたらしくユニフォームなんかもしっかりと三人分用意されていた。

男子用の更衣室しかなかったのでボクと麻美は司と竜に扉の護衛を頼むと一応ユニフォームに着替えた。


「秋ちゃん可愛い。なんだか小学校の時に戻ったみたいね。でも、今の秋ちゃんを見てもだれも男の子だって思わないでしょうね。」


「流石に胸は隠せないね。でもばれるとまずいらしいしどうにかしないと。」


そうしてボクは更衣室になぜか置いてあった包帯とテーピングで胸を潰し帽子とマスクでどうにか変装をした。


「麻美は中学生になってショートにしたからいいわよね。ボクももうちょっと短くしてもいいようにお父さんに言ってみようかな。」


「秋ちゃんのお父さん厳しいもんね。」


「そうでもないよ。ちょっと頭が固いから女の子らしくしていないと怒るけど、他は特に緩いからこうして竜とか司とかがいればほとんどのことは許可してくれるんだ。」


「まさか男の子に混じって野球してるとは思わないでしょうね。」


「ばれたら大変だよ。まぁ今日は帽子とマスクがあるから大丈夫だろうけどね。」


「そうね。司たちも待ってるし行きましょ。」


「うん。」


更衣室を出ると入れ替わりで竜も着替えるのかと思ったら竜は男の子なので外で着替えてしまっていた。


「準備できたみたいやな。キャッチボールの人数たりひんから秋は俺と一緒にグラウンド一回でてくれ。」


「ひとが足りないからぁ。麻美も監督にきいてぇ手伝ってぇ。」


「もう、ホントに人使いあらいんだから。」


麻美はそう言っているが、司の力になれるのがうれしいのか顔はにやけている。

恋する乙女は偉大だ。


「みんな、レギュラーの奴も数名来ていないから守備位置なんかを変えるぞ。まず、一番はショートで司。内野は司が基本中心になるから頑張れよ。」


そのあとも監督は守備位置と打順を発表していく。

竜は9番バッターでサードに着くようだ。

司が横にいるからフォローしやすいと考えたのだろう。

竜の実力をしったら監督は悔しがるかもしれないな。


「じゃあ今行った通りで行くから、準備運動とキャッチボールをして肩をならしておいてくれ、あと三十分ほどで全体の守備練習の時間だから急ぐように。」


監督の言葉を聞くとみんな体育会系の乗りで返事をし、準備運動を始めた。

ボクも竜とキャッチボールの相手をしなければならないのでマスクと帽子を確認するとベンチから出て行った。


「秋、お前もし試合にでることになったらフェイスペイントもしておけ、何があるかわからへんし、マスクをしてても俺や司なら秋ってわかってまうくらいやからな。」


キャッチボールを終えると竜がそう言ってきた。


「出ないで済むことにこしたことはないけど、ボクだからねぇ。一応準備だけしておくよ。でもマスクしてても分かるのは二人だけだとおもうよ。」


「まぁそうかもしれへんな。とりあえず全体練習始まるみたいやから行ってくるわ。」


麻美はボクたちがキャッチボールをしている間に監督からいろいろ仕事を頼まれたらしく今は球出しをしていた。

元々ボクらと仲が良かった麻美は野球のルールなども分かるのでこのままマネージャーになっても問題なさそうだ。


「はぁ。本当なら観客席で司たちの応援してるはずだったんだけどなぁ。」


独り言を漏らすと、ボクはフェイスペイントの準備をする。

竜が側にいるから滅多なことは起こらないだろうが、こういう時に油断するとボクの場合あとで思わぬしっぺ返しが来るからだ。


「プレイボール」


試合が始まるとレギュラーが数名欠けているとはいえ主要なメンバーがそろっていたのか意外と良い試合をした。

今は6回の表で向こうの攻撃なのだが、ピッチャーの子とキャッチャーの子がうまく司の方へと打球が飛ぶように調節しているらしい。

竜の方に飛んでも実際問題がないのが途中からわかり、司と竜のところにボールを集め時々大きいのをもらってしまうものの。

善戦していると言えるだろう。



カキーン ドゴッ コロコロ ダダダダ シュパッ


「アウト!」


全くあとちょっとだったのに・・・


相手打者が打った球がうちのピッチャーの左腕にあたった。

打球はうまいとこ司に近い方へ転がったのでアウトは取れたが、グローブを持つ方の腕とはいえあれでは今後のピッチングはきついだろう。


「タイム!」


タイムを取って監督は救急箱を持ってマウンドへと駆け寄った。

遠目で見ただけだから確証はないが、打ち身だろう。

力むと痛むので踏み込みが甘くなり、ボール球が増えたり球威が落ちるのは間違いない。

監督は時計と入口の方を見ている。控えのピッチャーはまだ着いていない。

というかこの時間だ、試合には間に合わないだろう。


「監督ぅ。秋を使いますかぁ?」


「なにを言ってるんだ。これくらいのけが大丈夫です。続投させてください。」


おお、男の子だね。

見た目はあんまりさえないとか思っていたけど、十分かっこいいよ。

ボクは司にアイコンタクトを送った。


『ピンチになったら出るからできる限り投げさせてあげなよ。』


『本当に大丈夫?けが酷いかそこからわかる?』


『ただの打ち身だから。でも、今までのようには投げれないと思う。』


本当に通じたかは分からないが、身振り手振りもあったし、司とボクの仲なので大体は伝わっただろう。


「大丈夫よ。たぶん伝わったわ。というか彼女を差し置いてそういうことしないでほしいわ。まったく心友ってのも伊達じゃないわね。」


「ありゃ?口に出てたか。まぁそんなわけだから準備しないと。ペイントよろしくね。」


「はいはい、可愛い顔に落書きするのは忍びないけど一種のお化粧と思うわ。」


結局腕をかばいながらの投球は乱れ、少し打たれだしたが、何とかその回は抑えることに成功した。


「えっと、ピッチャーの・・・名前なんだっけ?」


「おいおい、これだけ一緒にいたんやから覚えたれや。」


「先輩となんて普段つながりないんだから仕方ないじゃない。まぁいいわ。腕見せて。」


そういうと、ピッチャーの子は打球の当たった腕を見せてきた。


「うーん。やっぱりただの打ち身ね。でもこれ以上は投げさせられないわ。

患部が熱を持ち出してるわ。コールドスプレーでさっきの回はなんとかなったみたいだけどドクターストップね。」


そういうとボクは救急箱からテーピング等を取り出して腕を固定してしまった。

これで続けたくても続けられない。


「ちょっと、女神だかなんだかしらないが、医学の知識もないのに勝手な真似はよしてくれないか?」


そういってせっかく治療したものを取ろうとした。


「ああ、ボク柔道で、全国大会で優勝するくらい人体に関しては詳しいから。

整体師をしている格闘家のOBがいることくらい知ってるでしょ?ボクの見立ては間違いないよ。

あと、試合の方も大丈夫よ。ここまでレギュラーの揃っていない守備を考えて無理な投球してきたんだから誇りをもっていいわ。」


そういうと、先輩は唖然とした。

ひとつ年下の少女を相手にしているはずなのに、何もかも見透かされているように感じたのだろう。


「監督ぅ。ピッチャー交替で秋に投げさせてくださいぃ。こっちの攻撃の間にピッチング練習みてもらえば大丈夫だってわかるとおもいますぅ。」


「竜あんたもう打順回って来ないでしょ。受けて。」


そういうと、先頭打者でアウトになってきた竜にミットを渡すと急いでベンチの前に設けられている控えの投手が肩を慣らせたりするピッチング練習場へと向かった。

監督は状況を理解していないが、司がそういうので一応こちらを見ている。


「竜。ど真ん中にストレートね。その一球で十分だと思うから。」


「あいよ。ってことは俺次の回からキャッチャーか。」


「そうね。まぁキャッチャーの子がこれと、他にも数種類ある変化球を取れるなら別に大丈夫だけどね。」


「とりあえず投げとけや。時間があらへん。」


ボクは頷くと、大きく振りかぶって竜が構えているミットに向かって渾身のストレートを投げた。


バシュン!!


「相変わらず手がいてぇな。」


「まだ、肩が慣れてないからこんなもんよ。次はもうちょい早いのいくよ。」


「おう、あとで変化球の打ち合わせしないかんな。」




数球投げると、ボクは竜と変化球のサインを決めながら一緒にベンチに戻った。


「君って、芸術の女神ってよばれている蟹津秋ちゃんだよね?」


「そうよ。先輩なら知ってるんじゃないかしら?最強美少女って称号も?」


そういうと、ベンチにいた全員が納得したようだ。

最近目立ったことをしていなかったため忘れられていたようだが、ボクの昔の呼称も結構有名なのだ。


「監督さん。ボクの球とれるの竜と司だけなんで竜をキャッチャーにしてください。あとは別になんでもいいです。バットにかすらせない予定なんで。」


先ほどのピッチングを見てしまったので、監督も頷かざるを得なかったようだ。

その回は打者だった司もアウトになってしまい、試合の点数はニ対四で、ニ点差でまだ負けている。

ピッチング練習をしている間にボクが変わるピッチャーの子の打順が来てしまい。

腕をかばって打席にたったのでアウトになってしまった。


「さぁ。あんまり時間をかけると、ばれちゃうからきりきりアウトとってきましょうかね。」


そういってボクはマウンドへと向かって行った。




バシュン。バシュン。ブン、バシュン。


「バッターアウト。チェンジ。」

7回は見せ球も必要がなかった。

9球で終了。

まぁ中学生であの球速にはついていけないだろう。

司や竜ならあてることも可能だが、球が重すぎて飛ばすことは難しい。


「変化球必要なかったわね。でももう一度確認しておきましょ。」


ベンチでもう一度変化球や配給についての確認を竜としているとこちらの攻撃は三人で終わってしまった。

まずいなぁ。

ボクまで打順まわってくるんじゃないのか?

八回でどうにか逆転してくれて打順回ってきても打たなくていいようにならないかな。


「アウト!チェンジ!」


今回はカーブも使ってあげた。

相手がクリーンナップだったのでストレートだけでは失礼だろうとちょっとした心遣いなのだ、それなら投げなければいいのだが、

ここで手を抜いてもしょうがないのできっちり三人で抑えておいた。


しかし、こちらも攻撃陣はだめだ。

つながらないとかではない。

元々前の二点も司と腕をけがしたピッチャーの子と四番を打っているキャッチャーの子の活躍で取っていたのでその三人が出てこない下位打線では相手のピッチャーの思うままにゲーム展開を進められてしまう。


「次って竜からだよね?延長戦なんて嫌だから絶対に出塁してね。竜と司とボクで三点だから、ゲームセットよ。」


「おいおい、今からプレッシャーかけるなよ。」


「まぁ、せっかくボクが出場したんだから勝ちたいじゃない?」


「はいはい。とりあえず今回も三人でおさえちまうぞ。」


「当然よ。」


で、やっぱりバットにかすることもできなかった相手チームは絶対死守の構えになった。

最終回で二点差だ。

打つことができなくてもこのまま守り切れば勝ちである。


「竜ぅ。耳貸して、まぁ絶対成功する方法だからさぁ。」


「ん?どないしたんや?」


「ゴニョゴニョ。」


「お前さ。ほんま怖いわ。確かにそれなら秋に周るし、勝ち決定やな。」


司が何か竜に吹き込んでいたが、司の作戦なら失敗することはないだろう。

助っ人で入ってるはずなのに監督のサインも見ないで竜は打席についた。


カコン


バントしやがった。

ってか最初から使えよ。

バスケ部の竜は素振りなんてしていないから、普通に打とうと思うと、流石にうまくあたらず、フライやら、ゴロになって今まで出塁できていなかった。

しかし、元々ボクの球を見ているので、眼はいいし、バットに当てるだけのバントなら簡単だ。


あ、これはあれするな。司も悪よの。


カコン


二連続バントだ。

先ほどの竜の足を見ていた相手選手は今まで足が速いのが司しかいなかったので一番と間違えており、二点差で送りバントなんて普通はしないので完全無警戒だった。


「ホントに出塁しちゃったよ。これは心友の期待を裏切れないね。」


ボクも打席に向かった。

投球を見ていたとはいえ女の子なので監督はとにかく四番の子に回せることができると考えボクには期待していなかった。


声を出すとばれてしまうので無言でお辞儀をして打席に着く。

相手のベンチに顔が見えないようにと考えて、別にどっちでもよかったのでとりあえず左打席に入っておく。


カキーン


初球をライトスタンドに思いっきりすっとばしてあげた。

これで逆転サヨナラだ。

ゆっくりとダイヤモンドを回ると、ベンチに向かってグッと親指を立てた。

ボクらは勝ったのだ。

周りの観衆たちにはマスクをしていることから体調不良で途中まで休んでいたが、元のエースだったと嘘でもついてもらおう。

背番号が偶然10番だったので控えのピッチャーはよくこの背番号だからあまり無理はないだろう。


「おつかれさま。」


「もうこれきりにしてよ。」


「わかってるってぇ、というか今後絶対にマークされちゃうからぁ、隠し通すことはできないよぉ。」


「まあ次の本戦がんばってね。」


「本戦もでないかい?」


「先輩、予戦だから選手のチェックも甘かったので出れましたが、本戦では無理です。

それにすぐに処置したので二、三日で先輩の腕も完治するんで頑張って投げてください。」


「本当かい?それは良かった。でも、女神の名はだてじゃないんだね。本当に何でもできてしまう女神様のようだ。」


「誉めても何も出ませんよ。じゃあボクと麻美はバレる前に着替えちゃうんで。」


そういうと麻美と見張り用に司と竜を伴って更衣室へと向かった。

着替え終わりフェイスペイントも取ってしまうと、竜たちに外に誰もいないか確認をとって出てくる。

途中からだったのであまり汗もかいていなかったから着替えてしまえばばれる要素は何もない。


「おつかれさま。今日はいろいろあったしさっさとかえっちまお。」


「そうね。麻美もそうしましょ。司と一緒に居たいかもしれないけど、バレて司が困るよりはいいでしょ?」


「そうね。用具なんかは全部司が運んでおいてちょうだい。」


司に荷物をあずけると三人で裏から会場を抜け出して帰り道を歩きだした。


「しかし、秋ちゃんって本当にすごいわよね。男の子だったら司じゃなくて秋ちゃんに惚れてたわ。」


「男の子じゃなくても惚れる子がいるからそういう発言はやめてよ。」


「せやな。レズジュツの女神なんてあだ名もあるもんな。」


「うるさい!」


余計なことを言った竜には残酷が待っていた。

しかし、今日は竜も頑張ったので今度なにかしてあげよう。


「ほんと、こうみてると秋ちゃんって、すっごい美人で可愛らしいのに変なとこ男の子っぽいのよね。」


「小学校のころを知ってる麻美にとってはまだボクは男女かもね。」


「そんなことねぇよ。秋は女の子らしくなったぜ。」


あれ?なんで標準語なの?


「はいはい、なんかあやしいけど、まぁいいわ。」


「ふふ、確かに女の子らしくなったけどこういう所は昔のままね。」


「なんのこと?」


「いいの。秋ちゃんの魅力の一つでもあるんだから。」


誉められたのだが何か釈然としない。

まぁ悪いことではないようなのでいいか。


「結局運動しちゃってお腹すいたわね。司たちは今頃お弁当食べてるだろうし、せっかく街まで出てきたんだからどこかに食べに行っちゃおうか?」


「いいわね。私オムライスがいいわ。」


「俺はなんでもかまへんよ。」


「じゃあこれから練習がある司には悪いけど、ファミレスにレッツゴー!」


「おう。」


試合は終わったが、このあと閉会式があり、閉会式後も県予選の本戦が待っているので練習があるらしい。

ボクらは応援にきただけなので、そこまで見る必要はないし、ばれちゃいけないからと会場を出てしまったので、今からは遊びに行けるのだ。


「でもさ。麻美も余裕よね?昔だったらボクと一緒に遊びに行くなんて怖くていかなかったじゃん?」


「今日は竜くんがいるからね。それに昔は司と秋ちゃんの仲がいいのが嫌で断っていたってのもあるのよ。」


「ふむふむ。乙女の嫉妬ってやつですか。そして今は司とラブラブなので平気になったってことですな。」


「そうよ。心友って関係も司と付き合いだしてから理解できるようになったもの。今ではうらやましいとは思っても、嫌だとは思わないわ。」


「麻美にはかなわんな。からかおうと思ったのにさらりと返してくるとわ。」


「これでも司の彼女よ?司ならもっと上手に私の恥ずかしい部分を刺激してくるわ。」


「なんか微妙にのろけられた気分よ。まぁ、二人が幸せになってくれるのはボクも嬉しいんだけどね。」


「秋ちゃんはどうなの?」


そういって麻美は竜に気づかれないように竜に目線をやった。


「はぅ。どうって、何もないわよ。」


「あらら?どうかしら?今日は野球でキャッチボールしてコンビを組んだけど今度は愛のキャッチボールができるんじゃないかしら?」


完全に藪蛇になっていたらしい。

他のことならいざ知らず、恋愛のことになるとボクは勝てないようだ。

真っ赤になってしまっているが、前を歩いてる竜は二人の会話には気付いていないようでもくもくと歩いている。







夏合宿を期待していた皆様ごめんなさい。先に以前のフラグを回収させていただきました。

夏合宿後になるとどうしても間隔が空きすぎて不自然になってしまうのでここで秋には野球をしていただきました。


今回のテーマは“心友の絆と新たな絆”です。


スポーツを通すと友情って増しませんか?今回は全幅の信頼を持っている三人を描いたつもりですが、青春の一ページにスポーツって欠かせないかなって思って入れました。



そして今まで少し距離を置いていた麻美はこれをきっかけにして秋たちにさらに歩み寄っていきます。司の彼女で幼馴染だった麻美にはもっと秋たちと接してほしかったのです。



それではキャプチャー19を読んでくださってありがとうございました。



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