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再転の姫君  作者: 須磨彰
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チャプター13

女神降臨!!





ボクらは中学二年生になった。

小学時代は勉強をさぼっていた二人もボクの手を借りながらもちゃんと勉強するようになって、地元の公立高校に入れるくらいまでは実力をつけていた。

部活動も部員数が多い野球部はたくさん人数がいた一年生のときと違い、上の学年がすくないのもたすかって、

司も無事レギュラーを獲得して一番セカンドは怪我でもしないかぎり不動だろう。

中学生になって身長が伸びだした司は今ではボクよりも10センチ近く高い。

ボクも一応伸びて160センチ近くあるから、170くらいはあるだろう。

結局バスケ部に入った竜はそれよりもさらに身長が伸びていた。

今では180センチに届きそうで、ボクは最近二人と話していると肩が凝りそうになる。

肩が凝るのは見上げているのだけが原因ではないが、まぁ今はいいだろう。


「竜もついにレギュラーとったんだって?」


「おう、背も高いし、ジャンプ力なんかもあるからセンターかフォアードでつかってくれるんやってさ。」


「おめでとぉ。まぁ初心者からはじめたといっても元々の運動神経がいいからねぇ。」


「確かにね。女性とはいえ全国レベルの選手と同じくらい柔道強かったんだから当然といえば当然よね。」


「またそれをいうなや。それを知ってたらまだ柔道やってたかもしれへんのやぞ。」


「ごめんって、ボクとばっかり稽古してたから強くなってたけど、逆に自分の実力にきづいてなかったなんて、言われるまで気づかないわよ。」


そうなのだ、ボクはあの大会後ゴタゴタしているうちに竜が強いことを伝え忘れており、そんな事とは知らずに才能がないと思いこんだ竜はきれいさっぱり柔道をやめてバスケに打ち込みだし、

レギュラー確実といわれたころに、ぽつりと

「柔道もかなり強かったけど、運動神経良いし努力もするからバスケも上手になったわね。」

とボクが言ったことによってこのことを知り、身も心もバスケ少年となってしまっていた竜は少し後悔したものの、今はバスケ一本になっているのだ。


「秋が別格なのはもう驚くことじゃないよぉ。最強美少女は、今はなんていわれてるんだっけぇ?」


「芸術の女神だろ?」


「それ言わないでよ。ボクだって好きで呼ばれてるんじゃないんだからね。」


「別にそれはええやん、最近できたもう一つのほう方はどうかとおもうけどな。」


「レズジュツの女神だっけぇ?真奈美ちゃんにも困ったもんだねぇ。」


「もうちょっと困った顔して言ってくれない?」


司の方に顔を向けたので自転車が揺れる。


「おい、変な体制になるなや。こけてまうぞ。」


「これくらいでこけないでよね。」


何故こうなったかというと、小学六年生のファーストキス事件のあと蟹津家ではお赤飯がたかれることになったのだ。

前世の記憶に引っ張られて女の子らしさの欠けた幼少時代を過ごしたボクも女の子の自覚がでてきたらしい。


「あらあら、秋ちゃんもついに来たのね。ずいぶん女の子らしくなってきたけど、他の子よりもちょっと遅かったけどお母さんは安心したわ。」


別にまだの子だっているんだからお母さんは気にしすぎだと思ったが、男勝りな性格だったことと、今だに治らない一人称のこともあるので、

そのあと長々と続く女の子としてのたしなみから、お母さんの青春時代の話などをしっかり聞いたボクは、学校で二人にあうと、


「毎月一定期間ボクに優しくする期間を作りなさい。」


と宣言をした。

最初唖然としていた二人だったが、司は真美子さんがいるので何となく察しがつき、承諾してくれると、意味が分からないなりに、

別に元々二人ともボクを大切にあつかってくれたこともあって二人は一定期間優しくしてくれるようになった。

そして中学校になると本来はバス通学の竜は一定期間自転車で来るようになり、そのうち毎日自転車でくるようになったので、いつも後ろにのるようになったのだ。


「でもさぁ。これ竜にとってはいいトレーニングになるしぃ、秋ちゃんとらぶらぶできるしぃ、メリットだらけじゃないのぉ?」


「らぶらぶ言うな!」


そう言って勢いよく振り向くとまた自転車が揺れたのであわてて体制を直して竜の腰に手を回す。


「おい、ひっつきすぎや。そろそろ学校近いしまた噂たつぞ。」


「女神の恋人はだれか?ってやつでしょ?モテる女はつらいわ。」


そう、正直ボクはモテる。

そんなこと言ったら竜や司だってそうなのだが、それまで男装に近かった服装がセーラー服というどこから見ても女の子にしか見えない格好をするようになると、

注目があつまりだし、今まで二人の方がモテていたのがうそのように、学校のアイドル状態だ。最初のうちは竜や司に今までと違うと馬鹿にされるかとおもっていたのだが、

二人は意外とすんなりと慣れてしまった。

女の子らしいボクをみて唖然とする姿を見たかったのでちょっと残念だったが、今までと変わらない対応に今は感謝している。


「おはようございます。蟹津先輩。」


「おはよう!秋ちゃん!」


「おはようございます。女神さん。」


約一名ほど、名前じゃないがまぁ学校についたら男の子の半分以上は女神と呼ぶし、

女の子でもさっき追い抜いた麻美のように昔から仲がいい子を除いたら半分を超える子たちが先輩後輩同級生までも女神と呼ぶので放置だ。

敬称はちゃんだったりさんだったりするが、一つだけ気をつけなきゃいけないものがある。



「女神様ぁぁぁぁ!!」


学校に到着して自転車から降りたボクを待ち構えたようにして呼びながら後ろから抱きついてきたのは真奈美ちゃんだった。


「真奈美ちゃん。その“様”っていうのどうにかならないの?」


「無理です。だってファンクラブの全員が女神様と呼ぶように規約ができてしまいましたから、

中学生になるのが一年遅れたために会員番号が低い私は逆らうことはできません。」


「じゃあさ。せめて今度のファンクラブ集会の日時と場所をこっそりおしえてくれないかしら?」


「だめですよ。女神様はそう言ってこれまで何度も会員規約規定を変更されてそのたびに規約規定をかいくぐるための新規約が練られることになるんですから。

しかも女神様は本当にぬかりがなくて、様付けにするのもやっと見つけた抜け穴なんですから。」


ほとんどの規約を作成できないように規約規定を作り、それを守れないものはファンクラブから除隊するなど画策してきたが、

あまりにもひどい規定に除隊者が続出して<最強美少女クラブ>が解散の運びになると新しく<芸術の女神クラブ>なるものが作られ、それ以降はボクの介入を極力避け陰ながら1ファンとして活動するものも多く、

ファンクラブ自体はそこまでボクに悪い影響はないので今は放置しているのだった。


「ところで、いつまで抱きついているつもりなの?」


「ごめんなさい。私としたことが、ではお言葉に甘えて。」


真奈美ちゃんはそういうと、後ろからおなかに回していた手をずらし、ボクの胸をもモミだした。


「ひゃ、あぅん!」


「いつモンでも柔らかくて弾力があって素敵です。ただ、手が小さすぎて女神様の豊満な胸はつかみきれません。」


「やめ・あって。」


たとえ百合街道まっしぐらの変態とはいえ後輩でしかも女の子なので無理やり引き剥がすこともできず、助けを求めるべく竜と司の方をみると、

二人とも目をそらして、こちらを見ないようにしていた。


「二人ぃともぉんさっさと・・たすけ・・なさいよ」


必至になって助けを求めると真奈美ちゃんは、右手は胸をモンだまま、左手をほほに添えるとボクの左耳に息をふきかけてきた。



ゴスッ



残念ながら我慢の限界がきてしまった。暗闇を発動させると真奈美ちゃんは鳩尾をおさえてでも顔は嬉しそうにくずれおちた。


「ひでぇ、いきなり暗黒はないやろぉ。」


「あんな密着した状態からじゃ残酷か暗黒か殺戮しか使えないじゃない。しかも視界がない状態じゃ暗黒も残酷もかわらないんだから一番ダメージは少ないはずだわ。」


「一応ぅ、手加減はしてるんだねぇ。」


「二人がさっさと助けてくれたら、何もせずに済んだのよ?」


「いや、あそこに割って入るのはむりやろ。俺たちも男の子だからな。」


「男なら乙女のピンチを助けなさいよ。」


「物理的なものはぁ、いつも助けてるよぉ。」


まぁ確かにその通りだ。

初めのうちは自分で自転車に乗っていたボクが交通事故にあって自転車がぺしゃんこになった時も二人のおかげでかすり傷一つ負わなかった。

この二人、特に竜と一緒にいると事故や事件を回避できることが多いことを知ったボクは自分で自転車に乗ることをあきらめこうして竜の自転車の荷台にのっている。

学校側も今までの13年間の事故率の高さなどから、特例的に許可をだし、特殊なヘルメット(正直デザインは酷い)を竜がかぶることによって警察などにもとがめられることなく登下校できている。


「おかげさまで不幸少女の汚名はずいぶん薄くなりましたよ。」


「秋が男だったらお願いされても断っただろうけど、か弱くは無いとはいえ女の子だからな。一緒に自転車乗るくらいやってやるよ。」


「その発言は微妙だけど、まぁ暗闇つかったばかりだし今回は見逃してあげるわ。」


「それよりぃ、そこの百合姫が目覚める前にぃ、教室にいこうよぉ。」


「せやな、こんなとこで話しとるとまたいつ男女どっちかわからへんけどファンクラブにからまれてまうわ。」


そういうと、竜はボクと司を促して歩きだした。


「なんだかなぁ。ファンクラブに女の子が当然のように入っているってどうなのよ?」


「秋の反応は男女どっちにも受けがいいんだよぉ。朝からあんな熱烈な声きいちゃったぁ。」


「しょうがないじゃない。五感どころか第六感まで鋭くないといつ死んでもおかしくない生活を送ってきたんだから。女の子は繊細なの。」


「女の子が繊細なのと、第六感まで鋭くないと生きられないのはイコールでは結ばれへんが、

秋と一緒にいるだけでたぶん俺ら二人かなりケンカとかやったら負けへんくらい強くなってる気がするわ。」


「ケンカなんてしないでよ。ボクらが相手する人たちっていつもナイフとか銃とかもってるんだから。」


「それはカツ上げしてる現場とかぁ、明らかに悪そぅな人たちにしかケンカをうらないからだよぉ。普通の人はナイフはともかくぅ、銃なんて持ってないよぉ。」


「まぁ、平和な日本で貴重な体験をしたわね。」


「そんな体験しないのが一番いいちゅうはなしや。まぁ中学にはいってからは命にかかわるようなことは何もあらへんからええけどな。」


「竜も感覚が麻痺してきたねぇ。本来命にかかわるような大事件もあったよぉ。」


「銃を突き付けられようと、鉄骨が落ちてこようと、無傷で済んだやつはええねん。秋と一緒におったらそんなん日常茶飯事やないか。」


「せっかくボクの不幸少女系噂が減ってきたんだからあんまりそう言う話堂々としないでよね。また周りがドン引きしちゃうじゃない。」


「多少わざとでもそういうの知らないで近づいてくると、怪我したり危険な目にあってそれをかばって秋があぶない目にあうんやから、不幸体質なんは隠さんほうがええで?」


「そうだねぇ。秋や僕らだけの時は最強美少女がなんとか解決するけどぉ。何も知らない人が巻き込まれるとぉ、大変だよぉ。」


「じゃあボクは一生不幸少女として暗くさみしい人生をおくっていくんだね。」


「いやぁ、秋にはそれはむりでしょぉ。不幸を呼び込むのと同じくらい人をひきつけちゃってるからねぇ。」


「そうそう、俺らがおらん時は校庭歩いとるだけで鳥の大群やら迷子やら何でもかんでも遭遇しちゃって休まる時があらへんやん。生きとるだけでお祭り騒ぎやな。」


三人で話していると教室についた。

今年は竜と違うクラスになったのでここでお別れだ。

田舎とはいえ2クラスはあるので、仕方がない。

1年の時は小学校の担任が掛け合ってくれたみたいで、同じクラスだったが、ボクの不幸体質をしらない先生たちは、今年は別のクラスにしたみたいだ。


「じゃあまたな。」「こけないよぉにねぇ。」


ガラガラ


「おはよぉ!!」


ボクは、挨拶はぜったいにする派だ。

人間関係の第一歩は笑顔と元気なあいさつから始まるはずだ。

普段は竜と司とばかり仲がいいが、他のクラスメイトとだってちゃんと話したり、遊んだりしている。

危険が及ばない程度にはだけど。


「パシンッ!!」


「もう、誰だよぉ。あぶないじゃないか。」


「ごめん、ごめん。大丈夫だった女神様?」


そう言って声をかけてきたのは浩太だった。

というか、こいつは小学校からいや、幼稚園から同じの癖になぜかファンクラブにはいっている。

話によると会員番号0番の永久会員なんだとか、溺れたのを助けたあたりから気になりだし、セーラー服と同時に信者になったらしい。


「でもぉ。朝から上靴がとんでくるなんてぇ。秋は大変だねぇ。」


「プロレスのマネごとなんてしてるからよ。ボクだったからよかったけど、他の子だったら怪我するんだからやめなさい。」


「はいはい。ボクだったら大丈夫あたりはさすが最強美少女だね。」


そういうと、浩太は一緒にじゃれあっていた友人の方へ向かっていった。

浩太もあれ以来二次元以外にも興味をもったらしく、意外とうちとけている。

まぁ三次元は今のところボク限定な気がするが、現実に目を向けただけ良かったのだろう。


「メグちゃんは相変わらずの収穫ね。」


「毎日ゲタ箱とかに入っているのに。捨てるのもかわいそうじゃない。」


今話しかけてきたのはボクの隣の席に座っている鈴だ。

彼女は、小学校は違うが一緒に道場に通っていたりして仲が良い。

元々親に無理やり入れられていて、運動がすきでもなかったので中学になったので一緒に文科系のクラブを立ち上げた一人だ。


そうなのだ。

あまりボクの不幸体質に巻き込まれてはいけないと考えてボクは一年生の時に今までなかった美術部を立ち上げた。

美術部といっても、絵だけでなく芸術関係の作品なら自由に作っても良いとして窓口を広くとってあった。


「浩太くんも、美術部じゃなかったら毎日手紙かいてるんだろうなぁ。」


「まぁね。浩太は会員番号0番だからな。」


クラブを作るには最低三人の人が必要で、学校側もあまり人数のいない学校にあたらしいクラブなんて許可できないという雰囲気だったのだが、

浩太と鈴の協力とボクの作品の完成度と噂程度の不幸体質のおかげで美術部はできたのだ。


「僕も秋に手紙かこうかぁ?普段は渡される方だしぃたまには渡す方にもなろうかなぁ。」


「司はいつも話してるから手紙で書くような内容ないじゃないの。」


「いやいやぁ。この内に秘められた気持ちは口では表せきれないよぉ。」


「なに言ってるのよ。どうせ、帰りにアイス食べたいとか、野球部でマネージャーの仕事してくれとかその程度でしょ?」


「ピンポンピンポーン!!大正解〜!」


「やっぱり手紙いらないじゃないの。」


そうそう、ボクの席は通路側の一番後ろだ。

窓側に座ると飛来物が飛んできて割れてしまい、教室の中心に座ると被害者が増えるので小学校のころからこのポジションはきまっている。

対処可能な司か竜が横と前だったのだが、今年は竜がいないので美術部でも仲が良く。

柔道経験者でもある鈴が代わりに座っている。

左斜め前のポジションは席替えの度に変化するが、三人だけは変わらない。

鈴いわく「この場所なら授業さぼれるし、メグの側にいれば何とかなるから平気よ。」

とのことだった。

ボクが男の子だったら惚れてしまうぞ。


「司くんも、そろそろ授業の準備しないと先生くるわよ?」


「はぁぃ。でも次の大会は応援にきてくれよ?みんなのやる気が違うんだからさぁ。」


「まぁ、竜ともかぶってないし、いけると思うわよ。手土産は何がいい?」


「この前のはちみつとレモンの奴がいいぃ。あれおいしいしぃ、元気がでるぅ。」


「了解、はちみつ漬けとあと司の分はお弁当でも持って行ってあげようかな。」


「やりぃ。じゃあお母さんにお弁当必要ないってぇ、言っておくねぇ。」


「二人って付き合ってるの?」


「心友よ。親しいじゃなくて心のね。竜と司とボクは心友なんだよ。」


「なんかうらやましい。メグって男の子みたいな付き合い方するのね。」


「昔はねぇ。本当に男の子よりも男の子だったんだよぉ。今は芸術の女神なんてよばれてるけどねぇ。」


「もう、昔の話はNGでしょ。」


さりげなく黄金が司の右足を踏んでいるのだが、しれっとしたもので鈴は気付かないし、

ボクも司も机の下でのやり取りは周りにはわからのないように素知らぬふりをした。



キーンコーン


ガラガラ


チャイムがなって少し経つと、担任の吉川先生が入ってきた。


学級委員長が号令をかけ、生徒たちが着席すると、


「朝のホームルームは来月に行われる遠足についてだ。みなここに書いてある事項をしっかりと読んでおくように。」


そういって熊ような体を窮屈そうに小さな椅子の上に預けると各自目を通す時間を与える。


一年の時は入学したての生徒たちが仲良くなるように、二年の時は来年の修学旅行の時に困らないように電車など普段田舎ぐらしのボクらが使わないものに慣れるために遠足にいく。

そして三年生は修学旅行にいくのだ。


「遊園地だってぇ、ジェットコースターのろうよぉ。」


「班別行動なんだからみんなで行けるところに決まってるでしょ。」


「じゃあ問題ないわ。私もジェットコースター好きだもの。」


ボクらのクラスは35人なので、四人班が8つあり、不幸体質も考慮してボクの班は鈴とボクと司の三人なのだが、

班員で話し合う前に配られた冊子を確認しないでいいのだろうか・・・。


「だいたい目を通したか?もう既に班で話し合ってるところもあるが、来週までに話し合って行動予定を先生に提出するように。」


そういって吉川先生は授業の用意を教卓に並べだした。

今日は最初の授業は先生の数学だ。


「秋ぃ、予定作るのまかせるねぇ。秋が組んでくれたら問題ないでしょぉ。」


「そうね。メグならタイムスケジュールとか完璧よね。一応絶叫系が好きだからそれを中心にしてあとは全部任せるわ。」


「丸投げしないでよ。まぁ別にこういうの嫌いじゃないからいいけどさ。」


ボクらの班はボクが作るようだ。

鈴はちゃっかり自分の要望をまぜてお願いしてきたし、一回作ってみて確認すればいいだろう。

遊園地なんて待ち時間でどうせスケジュール変更することになるのだから適当に回りたいものをピックアップしてあとはお土産を買う時間で調節すればいい。



キーンコーン


授業開始のチャイムがなった。

吉川先生はもう一度号令をする必要もないだろうと、学級委員に言うと、授業を開始した。

吉川先生の数学は公式を丸暗記するものではなく、解法と面白い話をうまく混ぜた説明をするので、数学の苦手な子にも結構人気である。

今日も方程式の説明をしている。

春はまだ、図形やグラフはしないらしい。

一年の時は熊みたいな体で図形を表現する吉川先生に笑わせてもらったのに。

そんな風に考えながら授業を受けていく。

楽しみな遠足に期待をこめ、ワクワクとドキドキを胸に秘めながらもちゃんと授業に集中する。




キーンコーン


「ふぅ、終わったぁ。じゃあぁ、僕はクラブいってくるねぇ。終わったら竜と迎えに行くからおとなしくまっててねぇ。」


「いってらっしゃい。ってなんか子どもあつかいしてない?」


「秋ちゃん〜、さみしがらないで待ってるんだよぉ。」


「さっさといってこい!!」


軽く残酷を肩にあてるが力は入ってないので痛くはない。

笑顔で手を振ると同じ野球部のクラスメイトたちと司は外にでていった。


「女神様!僕たちも美術室にいこう。」


「メグちゃんは女神様じゃないわよ。」


「鈴、そのメグちゃんってどこから来たのかしら?ボクの名前は蟹津秋でどこにもメグなんてないよ?」


「あははは、中学はいったら女神なんて言われるようになって気にいっちゃったんだもん。」


「まぁ、女神よりもメグの方が可愛いからいいけどさ。」


「仕方ないよ。本当に女神様の作品は芸術の女神がいたらそれこそってのばかりなんだからな、しかも、こんな可愛い子があんな作品やこんな作品をつくってるなんて。」


「含みのある表現しないでよ。ちょっと男の子っぽい作品つくったりするだけじゃない。」


「メグちゃんはそれがいいのよね。なんだか、洗錬されているっていうか、女の子なのに男の子っぽいタッチでまだ完熟しきっていない甘酸っぱい果実のような作品をつくるんだから素敵なのよ。」


「もう、また変な表現する。鈴の絵だってほんわかして優しい感じがしてボクは好きだよ。」


「ありがと、今日もがんばろうね。」


「ねぇ、僕の絵は?鈴ちゃんだけ誉めてなんで僕には?」



「「・・・・・」」


「技術は認めるわ。でも、題材が全部二次元なのはちょっとね。」


「わかった。じゃあ今日は模写をするから女神様がモデルになってよ。」


「メグちゃんのヌードかぁ。」


「まてまて、何でボクが裸にならなきゃいけないのよ。」


「大丈夫だ。服をきたままでも僕が心眼で女神様の服の中を描こう。」


「きゃぁぁ。素敵過ぎるわ。」


「鈴までそっちの世界にはいらないでくれ、あとボクを題材にした作品は部長権限で全部エッチなのは没にするから。

エッチなのじゃなかったらモデルくらいはしてあげるわよ。」


「わかった。じゃあ明日は猫耳とメイド服を持ってくることにするよ。」


「この!!オタクがぁぁ!!」


破壊が浩太の左脇に突き刺さった。

あほな話をしながらも美術室についたので扉をがらりと開け横に体を滑らせる。


「女神様ぁ!!」


真奈美ちゃんが、ボクがさっきまでいた場所にむかって飛び着くと、後ろにいた鈴がそのままの勢いで抱きつかれる。


「またかわされてしまいました。あ、でも鈴先輩の胸も柔らかいかも。」


うん、最近鈴が変な言動を言うようになったのは真奈美ちゃんの影響か、早めにきて準備をしてくれるいい子なのだが、

その主な目的が、ボクが入ってきた時に飛びつくことだったり長くボクと一緒にいたいからだったりするのはちょっと問題がある。

部長であるボクが部活の環境をきちんと整えていかなければいけないな。


「真奈美ちゃん。そんなところで百合ってないで自分の作品にとりかかりなさい。もう一か月近くたつんだからそろそろ作品を作る段階にはいらないといけないわよ。」


「わかりました。じゃあ模写をするのでモデルをしてくれませんか?」


ん?

なんだかこの会話はデジャブだぞ?先ほど崩れ落ちていた浩太も回復したようで一緒に美術室にはいっていく。


「さっき浩太にも頼まれたしちょうどいいからモデルはしてあげるよ。新入生があつまったら希望者はボクのことを描いて良いようにしよう。」


「はい、まだ由香と花火は来ていないので、先に着替えてください。」


「ん?着替える?ボクはこのままでいいよ。いきなり凝った服なんてかけないだろうしね。」


「大丈夫です。由香と花火には了承をとっているし浩太先輩も普段から書き慣れている服なので問題ありません。」


そういって真奈美ちゃんは紙袋をボクの目の前に差し出してきた。

浩太が書き慣れているという部分ですでに嫌な予感がしていたボクは紙袋の上の方からはみ出ている白と黒のひらひらを引っ張り上げて絶句する。


「なんでメイド服なのよ!!」


「だって、女神様にご奉仕されるなんて最高じゃないですか。」


そういって熱く語りだした真奈美ちゃんは浩太と気があったらしく。

ボクのメイド姿やその他ちょっとボクには理解できないというか理解したくない話をしだしたので、紙袋をもつと準備室の方へ向かっていった。


「あの二人はダメね。自分の欲求に素直すぎるのよ。」


「はぁ、鈴も止めてくれてもいいじゃないか。」


「どうせ着ないんでしょ?でも何も着替えないのもかわいそうだしどうするの?」


「一応中身を確認だけはするわよ。でもたぶんあれね。ラインを隠せるし、シンプルな模様なのも描き易くなるとおもうわ。」


そういって指をさしたところには、この前デザインからすべて自分で製作した可愛いワンピースがあった。

背中は少し大胆にあいているが、前から見る分にはたしかにシンプルで描き易いだろう。


「でもあれって背中あいてるからブラとかできないんじゃないの?」


「まぁそれくらい大丈夫でしょ。大胆なデザインだけど元々ボクが着たい服をつくったんだから動きやすくてずれにくいようにできてるのよ。」


「なるほどね。じゃあとりあえずそこの扉にへばりついている二人がはいってこないようにカギをしめて着替えちゃいましょ。」


「ありがと、ちょっと特殊な服だから着替えるのてつだってくれる?」


「ええ、良いわよ。」


そう言ってワンピースに着替えると、純白のドレスに少し近いようなかっこうになったボクは鈴と一緒にでていった。



「「「「おおお!!」」」」


着替えている間に由香ちゃんも花火ちゃんも来ていたようで、四人でボクの姿をみて感嘆をあげた。

真奈美ちゃんや浩太はメイド服じゃなかったので残念がるかとおもっていたが、これはこれでご満悦の様子で、なぜか真奈美ちゃんは真赤になっているが、悪くはないようだ。


「はい、じゃあ今日は模写をします。今までは備品の説明や道具の使い方、先輩がついて簡単なものをつくったり、

ってとこだったけど今日はみんなも自分の力で作品をつくってみましょう。

初めてだから模写にしてもらうけど、前から言っているように今後はある程度きちんとしたものだったら自分の作りたいものをつくってもらうから、その先駆けとしましょう。」


「女神様ってさっきまでポニーテールしてましたよね?」


そうだ、ボクはさっきまでいつものポニーテールだったのだが、服の雰囲気にあわないので今はほどいておろしている。

ピンもなにもつけずにただおろしただけなのだが、結構評判はいいようだ。


「一日中ゴムをつけていたのに跡がついていないなんてやっぱり女神様だったのですね。ああ、ポニテも素敵ですがこうしていると本当に女神様のようです。」


「ちょっとオーバーすぎるわよ。まぁ確かに髪は癖がつかないから便利だけど、それくらいで女神だなんて言いすぎよ。」


「真奈美ちゃんじゃないけど、メグの髪はうらやましいわ。」


そういって鈴はボクの髪をなでだした。

柔道をしていたころはショートだった鈴も中学にはいってからは伸ばしだし、今は肩より少しながいくらいまで伸びているが、

ボクは下ろすと腰より少し高いくらいなので、やはりうらやましいらしい。


「でも、シャンプーだけだよ?切るのはお父さんが許してくれないけど、手入れは面倒だから特にしてないからね。」


「シャンプーだけでこの滑らかさなんですか?私も先輩みたいな髪がほしいです。」


ここにきて初めて発言したのは由香ちゃんだ。

女の子らしい女の子で、文化部があとは音楽系しかなかったため、こちらに来たようだが、引っ込み思案なわりにボクらには結構なついてくれて自身も長い髪をおろしているのだが、

ボクの髪をみてうらやましそうにしている。


「へぇ、手入れしなくていいんだったらうちも髪伸ばしたいな。ショートじゃないとうちみたいにうねってるとグネグネになっちゃうしな。」


ちょっと男勝りな雰囲気があるのは花火ちゃんだ。

由香ちゃんの幼馴染で活発な子なのだが、そのせいで小学時代いじめられていたようで運動部みたいなところにはいかずに、由香ちゃんに着いて美術部にきたが、

大胆な筆遣いはかなり光るものがあり、今後の成長に期待している。


「はいはい、鈴まで一緒になって無駄話しないの。今からなら2時間くらいは時間があると思うからさっそく始めましょう。

この服はここに置いておくから書ききれなくてもまた明日きてあげるから焦らずに書くのよ。あと、せっかくだから助っ人は無しね。質問があったら教えてあげるけど、できるだけ自由に書いてみて。」


「ところで女神様、気になったんだが、下は何を着ているんだ?」


ボクの周りをぐるぐるまわって黙って観察しているとおもったらそんなことを考えていたのか。


「シャネルの5番よ」



冗談でいったのだが、浩太には通じてしまったらしく鼻血をだして筆などを洗うためについている水道の方へ行ってしまった。

よくこんな話しっていたなと自分のことは棚に上げ、どうせ浩太は慣れているので模写にそんなに時間はかからないだろうと考え長時間たつのはつらいのでイスをもってくると皆が見える位置に座り、部活を始めることにした。





中学生になって秋もすっかり女の子らしくなりました。


二つ名も増え、心機一転です。前回の話からギャグ要素があがってきましたね。

中学生になってから関わりの強そうなキャラたちを目一杯出してみました。


さて恒例のテーマ発表ですが、“変わるものと変わらないもの”でおおくりしました。

中学生になって始まった変化と、今までと同じものがこの話で伝わればと思います。



それではみなさん本当にここまで読んでくださってありがとうございました。


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