チャプター12
前回の賭けとの連作になっています。
ご主人様とナメクジの恐怖
翌日、今日は運動会の振り替え休日で、学校は休みだ。
100Mの賭けを守るべくボクと竜はボクの家にいる。
弟がいる竜の家ではあまり変なことができないので、普通の平日をすごしているため、ボクの家で目的を達成することにしたのだ。
「これでよろしいでしょうか?ご主人様?」
「うん、よく似合う。」
そこには、普段なら絶対にきないであろう、フリフリのたくさんついたドレスにエプロンをつけたメイドの姿があった。
うん、本物はなかったがそれっぽい服をつかって擬似メイドを作ったのだがそれっぽいかもしれん。
こんな姿めったにないので記念に残そうとカメラを構えるとそれを阻む手が、
「ご主人様、撮影は禁止になっております。」
「それは残念だな。じゃあせめてその状態で外に出ていこう。」
「うざけんなぁぁぁ!!俺は男だぁ!!」
魂のシャウトでわかっていただいただろうが、勝ったのはボクだ。
奴隷契約ということでいろいろ忙しくてまだワンコを買いに行けてないので首輪をくけて犬のまねごとでもさせようかとも考えたのだが、
可愛いワンコを楽しみにしているボクとしては竜をペットなんていただけない。
「こら、そこは“ご冗談をご主人様、わたくしは男でございます。”だろう?」
「く・・ご冗談をお嬢様、わたしは男でございます。」
せめてもの抵抗なのだろう、微妙に変化させてきたが、まぁ屈辱的なことには変わりないし、良いとしよう。
まぁこんなところを実際他の人に見せたら竜が落ち込むので昼に来たこともあり、確実にだれも帰ってこない時間を考慮して三時間ほどしか時間はないが、本当に一日まるごと奴隷にする気もなかったので、許してやる。
「当たり前だ。一日中こんな格好させられたら死んじまう。」
「最近声に出さないようになっていたのに、つい声にだしてしまっていたのね。」
「確信犯だろう?明らかに聞こえていたぞ?」
「何のことかしら、おーほっほっほ!!」
普段はしない高笑いをして笑うと竜は苦渋の顔をつくってこちらを睨みつけてくる。
「まぁまぁ、このところ忙しくてセーラー服を取りに行けなくなって急きょボクの服をメイド服にみたててあげたんだからそんなに睨まないの。」
「ちょま、セーラー服を着させるきだったのか?まだ学生服もきていないのに・・・」
「いいじゃないの、水兵の服よ。まぁそのワンピースは動きやすいし、ボクのお気に入りなんだから感謝されても、睨まれるいわれはないわ。」
「感謝って、ん?お気に入り?どうりで着替える時に秋の匂いがしたとおもったぜ。」
「かぐなぁぁ!!」
最近ご無沙汰だったが、けがもしていない暗黒の左手が炸裂すると擬似メイドはじゅうたんの敷きつめた床に転がって行った。
「くそぉ。こんな格好はさせられるし、暴力まで、この屈辱いつかぜったい。」
「ほら、言葉が戻ってるわよ。それに、きちんと命令を守ったら怒ったりはしないわよ。」
「しゃあないな、わかりました。お嬢様、それではなんなりとお申し付けください。」
「ふふふ、うまいじゃない。実はメイド趣味だったの?」
「いいえ、お嬢様、そのようなことは一切ございません。」
こめかみのあたりがひくついているが、言葉づかいが汚くなったら攻撃しようと黄金の左足を準備していたのだが、がんばってこらえたようなので、仕事を与えることにした。
「もうお昼は済してしまったし、まずはメイドのたしなみとして掃除よ。」
「はい、お嬢様。」
そう言うと竜は掃除機の場所を尋ねたので、案内してあげた。
・・・・・・
結果からいうなら、さんざんだった。
普段から掃除などを手伝っているボクとくらべて、手際も悪いし、かなり雑だったため、結局ボクが手伝うことになり、なし崩し的に二人で家じゅうをピカピカにした。
「はぁ、なんでメイドよりもご主人様の方が働いてるのよ。」
「申し訳ございません。お嬢様。」
掃除中なんども訂正したのでかなりメイドっぽい言葉づかいにも慣れてきていた。
「本当は一時間くらいで終わらせる予定だったのに、二時間もかかっちゃったじゃない。」
「お嬢様一人でされた方が、早く終わったのではないですか?」
「いいのよ。竜にさせることに意味があるんだから、次は洗濯物を取り寄せるわよ。」
「はい。わかりました。」
庭に干しているものは外にだすのはかわいそうなのでボクが取りに行くことになって、竜には二回のベランダに干してあるものをお願いした。
取り寄せ終わってたたむためにリビングにつくと、竜が洗濯物を先に取り寄せてまっていた。
後ろを向いている竜はボクが入ってきたことにまだ気づいていない様だ。
「竜?何をしてるの?」
ボクのブラジャーを手にしげしげと眺めている竜の姿があった。
声をかけると急いで後ろに隠したが、目撃してしまっているので意味はない。
「えっと・・・これは・・・」
「ボクとしたことがあまりにも掃除が大変で二階には下着泥棒に合わないように下着を干していたのを忘れてたわ。」
「え?怒らないのか?」
流石に動揺してメイド口調がとけてしまっている。
「いいわよ。指示を出したのはボクだし、変なことに使ってたわけでもないしね。」
「へ、変なことって、俺はただ、大きいなぁって思ってみていただけで、あ・・・。」
「そう、竜も男の子だもんね。でも前の事故の時に触ったんじゃないの?」
「あんときは、必死だったし、そんな余裕なんてなかったんだよ。」
「そうだったわね。今更だけど、ありがとうね。」
「これで何回目だよ。まぁ秋にありがとうって言われるのは嬉しいから別にいいけど。」
「ふふ、じゃあさっさと洗濯物たたんじゃおう。」
「かしこまりました。お嬢様。」
そのあとはたたみ方の指導をしつつも、軽い談笑を交えて洗濯物をたたむと、タンスの中にしまっていった。
「お疲れ様、もうメイド服は脱いでいいわよ。」
「ふぅ、まさかこんな罰ゲームになるとは、他の奴には絶対に内緒だぞ?」
ボクの部屋につくとおもむろに服を脱ぎだした。
今日来たときも説得までに一時間を要し、結局こぶしに物を言わせて着させたので、二人だけの秘密ということで了承した。
「でも、司には見せてあげたかったわ。竜って整った顔してるから女装させても意外と似合うのね。」
「女装が似合ってもうれしくねぇよ。まぁ整った顔立ちっていうのは間違いないわ。」
「こらこら、自分でいうんじゃない。」
「秋だって時々冗談で自分のこと可憐な乙女とかいうやん。」
「それは、竜が男女とか男勝りとかお嫁のもらい手がないとか言うからでしょ。」
ワンピースの下に服を着ていたのでエプロンとワンピースを脱ぐだけであとは掛けてあった上着を着たらいつもの竜にもどる。
「ああ、フリフリのワンピースとエプロンだけじゃものたりなかったなぁ。でもお母さんのお化粧道具勝手に持ち出したらまずいし、というかばれるし、今回はこれで勘弁してあげるか。」
「ちょま、何か不穏な響きが混じっとったきがするんやけど?今回はとか化粧とか・・・。」
「やだぁ、あはは、冗談よ。でも竜がボクにひどいことしたら、その時は罰としてつかえるかもしれないわね。」
「もう二度としいひんわ。じゃあ、帰るわな。」
「え?何で?」
「何でって、もう終わりやろ?運動会で疲れたし、精神的にもかなり疲れたから休みたいんやけど・・・」
「メイドじゃなくなったんだから、誰か帰ってきても平気でしょ?それに、奴隷契約は一日でしょ?せめて帰るまでは言うこと聞きなさいよ。」
「うーん。まぁ確かにそうやわなぁ。ま、俺も秋が無茶なことしいひんとおもってこんな約束したんやし、もう少しくらいやったら聞いたるわ。実際メイドの格好意外はまともな命令やったしな。」
「メイド意外まともに命令こなせてなかったけどね。」
「うるさいなぁ、わかったわ。煮るなり焼くなりすきにせぇ。」
「男に二言はないわね。ふっふっふ。」
「げ、そんなん言われるとなんかこええ。」
「まずこれを付けて。」
そういうと病室や東京までの移動の時に使っていたアイマスクを取り出した。
これをつけると安眠できるのでかなりお気に入りだ。
最近では眠れない時は耳腺とアイマスクをつけて寝ることもある。
「まっくらやん。これ、あぶないんとちゃう?」
アイマスクをつけると、少しふらつくようだが、元々柔道をしているのですぐに体制を立て直して真っすぐ立っている。
こけたりすると危険なので支えてあげながらベッドの上に腰かけさせる。
「どう?真っ暗って何されても抵抗できないし、結構こわいでしょ?」
「ああ、少し動くだけでもなんかにぶつかっちまいそうでこわいわぁ。」
「じゃあ、はじめるわね。」
「うわ、なにをのせたんや?」
「さっき台所を掃除しているときに見つけたナメクジよ。」
「ちょ・・・んなもん手にのせんなよ。」
「だめよ。うごかないの。」
そう言うとボクは竜の手足が動かないように押えつけ、ベッドに寝かせた。
「おいおい、なんかやわらかいもん、あたっとんだけど。」
「ぬいぐるみよ。竜って意外と怖がりなのね。かわいい。」
「いや、こんな重たいぬいぐるみ部屋になかったやろ。」
ドゴッ
とりあえず殴っておいた。
「次はどこにナメクジおこうかなぁ。ここなんてどう?」
「首はやめろ!!流石にこそばすぎるわぁ。」
「しょうがないわね。じゃあこっちにしてあげる。」
「バカ顔はもっとあかんわ。」
そういうと竜は無理やりアイマスクを取り外した。
「あ・・・。」
ほっぺたをなめているボクと目が合ってしまった。
何が起こったのかわからなかった竜は
目を見開いて固まってしまった。
「アイマスクを取るのは反則だよ。」
そういうとボクはおもむろに竜から離れていった。
「ナメクジって?」
「冗談に決まってるでしょ、ボクだってわざわざ手に取りたくないもん。」
言われてみれば当然なのだが、初めてアイマスクをつかった竜は結構テンパっていたらしく本気で信じていたようだ。
せめて濡れタオルとかスポンジくらいだろうと考えてほしかったのだが、本気でナメクジがくっついたとおもっていたようだ。
「普通こういう時はスポンジか何かだと思ってアイマスクなんてとらないでしょうが。」
「そんなこといっても、動揺してたんだから仕方ないだろ。」
まだ、動揺しているみたいだ。
標準語になってるぞ。
昨日竜のお母さんから最終確認をしたから隠し事するような状況じゃないので、竜は動揺しているのだ。
「まぁまぁ、おちつきなさいよ。ナメクジじゃなかったんだからいいじゃない。」
「いいわけあるか、ってかあれじゃまるで・・・」
そこまで言うと真っ赤になって口ごもった。
「だって、ボクあの時意識がなかったし、どうせならきちんと意識があるときに初めてをやりなおしたかったもん。」
そういうとボクも恥ずかしすぎて、口を閉ざしてしまう。
本当ならナメクジ作戦で竜にきづかれないように済ませてしまおうと思っていたが、こうなったらなるようになれと言ってしまったが、
ちょっと後悔・・・恥ずかしすぎて死ねるかもしれない。
「まぁ、確かにファーストキスうばっちまったもんな。いいぜ、やり直ししよう。」
「罪の意識あるんじゃない。じゃあやり直させてあげるわ。」
あんまりにも可愛くないセリフだし、あの時のことは一度許しているのに罪なんてないけど、口からでてしまったものは仕方がない。
そのままの体勢で目をとじた。
ギシリと竜がベッドから立ち上がる音が聞こえる。
暖かくて大きな手が右肩をつかみ、左耳のそばをまた手が添えられる感覚があった。
緊張して必要以上にまたギュッと目を閉じる。
「チュッ」
それは優しく触れるようなものだったが、確かに唇に柔らかいものがあたった。
添えられていた手がはなれていったので、眼を開くと竜も真赤になっていた。
翌日、司と約束の買い物にきた。
竜と三人で昨日あったことを報告も兼ねて三人で司の欲しいものを買いに来たのだ。
司は予想通り新しいグローブを所望したので、ちょっと遠出をして品揃えのいいスポーツ用品にきている。
「へぇ、それで二人はキスしちゃったんだぁ。らぶらぶだねぇ。」
「それが、そうでもないんや。これには続きがあんねん。」
少し落ち着いたのか竜が声をかけてきた。
「これで、いいか?」
「うん。ありがと。」
「最近感謝されまくりだな。」
そうはいうものの、まんざらでもないようで、竜ははにかむように笑うと、しっかりとボクの目を見つめてきた。
「どうしたのよ。そんなに見つめて。」
「いや、これで俺たちも恋人なんだとおもうとさ。」
「え?なんで?」
「おいおい、そんなところでボケるなよ。」
「だって、ファーストキスやり直しただけでしょ?ボクと竜は友達だよ?」
「なんでやねぇぇぇん。」
「あはは、口調が似非関西弁にもどったね。あ、もちろん司も友達だよ。」
「まてまて、そんなんわかりきっとるやろ。そうじゃなくてキスまでしたんやから。」
「うーん確かにそうだね。じゃあ二人とも親友に格上げしたげる。」
「今まで親友じゃなかったんかい。」
「そっか、もう親友だったね。じゃあさ親っていう字を心に変えよう?心には命って意味もあるし、命の友達、心を許せる友達、心が繋がってる友達、どれもいいけど心友って響きがすっごいいいね。」
「・・・・」
「どうしたの?うれしくない?」
「つうわけで、司ともども心友に格上げされたわ。な、心の友よ。」
「どこかのガキ大将じゃないんだからぁ。でも心友かぁ。同じ発音なのに秋にそんな風に言われ
るとなんだか悪くないねぇ。」
「まぁな。あんまりにも心地良い響きに結局俺も納得させられてしもたわ。」
「そうでしょ?司ならわかってくれると思ってたんだ。ボクらこれからどんなことが起こっても、何かでライバルになって競い合うようなことがあってもずっと心友でいよ。」
「あたりまえやん。心友でも次こそは100M勝ったるからな。」
「僕も賛成だよぉ。何があっても心友だよぉ。だからさぁ。このスパイクも買ってぇ。」
「お調子者。うーんでも、成長期で足が大きくなっちゃうからスパイクはいるわよね。」
「確かに、俺も最近靴がちっちゃくなっちまったんて。」
「はぁ、ごまかしたけどぉ、両想いなんだから付き合っちゃえばいいのにぃ、僕との関係をきにしたんだろうなぁ。まぁ僕もこのままの関係がもう少し続くのはうれしいからいいかぁ。」
「司?何一人でブツブツいってるんだ?そんなに欲しいならスパイクも見ておくか?この前の誕生日入院してて特に祝ってやれなかったからあんまりにも高いものじゃなかったらいいぞ。
この前の取材のギャラの明細がとどいたんだが、渋ったこともあってかなりの高額になっていてな。ボクは今左手うちわなの。」
「秋だって誕生日病室で過ごしたのにぃ、でも甘えちゃおうかなぁ。」
「そう言えば二人って誕生日ちかいやんな。俺だけ一人一か月近くはなれてるやん。」
「いいじゃない。別々にお祝いができるんだから。」
「そっか、確かにそれはいえとるな。」
三人で笑いながら、あれこれとみていく。
もうすぐ冬になり中学生になるボクらは、ちょうどいい機会だと用具をみながら、中学校ではいるクラブ活動について話した。
「僕はやっぱり野球部だなぁ。小学校でずっとやってきてレギュラーになれたんだしねぇ。」
司は少年団でショートかセカンドを守っている。
運動神経は良いが肩はあまり強くないのでピッチャーやキャッチャーのとうなポジションはできないようだ。しかし、ボクらに負けるとは言え小学生では足が速いので五年生の時から一番を任されており、打率も結構いいらしい。
竜と一緒に応援に行った時はフォアボールとヒットで全打席出塁して盗塁をきめて前に走者がいない時はかならず三塁に進めていた。
「野球は中学まで続けられるからいいよね。柔道部は無いし全員どれかのクラブに所属しなきゃいけないからボクらは何か新しいクラブを探さないと。」
「クラブ続けながら道場にも来てる人もおるけど、俺はやめるつもりやからな。」
「うん、ボクもだよ。ワンコの散歩の方が大事だからね。」
「次の休みには買いに行くんだったねぇ。僕にもみせてねぇ。」
「もちろんだよ。というわけで比較的早く帰れる文科系のクラブにはいる予定だよぉ。」
「意外と二人ともきめてるんやな。俺も何か考えないかんな。」
「竜は身長あるんだからバスケなんでどぉ?」
「あ、ボクもそれ賛成。竜なら足も速いし絶対いいよ。」
「バスケか、屋内競技だから肌白くなりそうやな。」
「父親が黒いと子どもまで黒くなっちゃうから白い方がいいよ。竜はバスケで決定ね。」
「どんな理由やねん。でも、他の競技と違ってシューズくらいしかお金かからへんしそうしよかな。」
「じゃあ、まだ決定じゃないし、シューズは早いけど、リストバンドくらいならもしバスケ意外になっても使えるから買っちゃおうか?」
「どうせならぁ。三人おそろいで買おぉ。」
「「賛成!!」」
三人でおそろいのリストバンドを選び。
結局スパイクもグローブも買うことになり、レジへもっていくと、意外とお金がかかってしまった。
それぞれのリストバンドは自分のお金で買って竜が選んだ赤いものをボクが、ボクが選んだ水色のものを司が、司が選んだ緑色のものを竜がつかうことになって、店からでると先ほど交換したリストバンドをさっそくつけた。
心友の証みたいでなんだかむずがゆくて照れくさかったけど、ちょっとあったかい気持ちになった。
中学生になってもずっと心友でいようね。二人とも大好きだよ。
というわけで、キャプチャー12お送りいたしました。
正直はっちゃけ過ぎました。不快に思う方がいらしたら、ごめんなさい。
今回のテーマは“どれだけはっちゃけた文章を作れるか”です。
ほんとやりすぎでしょ。AKIもわかってはいるのですが、書きたくて仕方がなかったのです。そのために、ワザと字の文を減らして背景描写の無い文章にしたりと、秋ちゃんの可愛さが伝わってくれたらいいなと思いながらも意地悪な文章を作ってしまいました。
それでは次回からもどうぞよろしくお願いいたします。
これまで読んでいただきありがとうございました。