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再転の姫君  作者: 須磨彰
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チャプター11

今回と次回は完全につながっております。

秋の(ラブラブ?)大運動会!!









「ほんとあんな大きな怪我したとおもえへんな。」


「右手が使えなかったから授業とか大変だったんだから。」


「まぁでもおかげでぇ、僕らもまじめに授業受けるようになったよぉ。」


そうなのだ、この二人はいつもボクに頼って授業を受けていたので今回右手の使えないボクがノートを書けないようになった影響で小学六年生にしてやっと真面目に授業をうけだしたのだ。


「意外とちゃんと授業受けると面白いもんやな。いつも秋から勉強のやり方教えてもろてたから結構ついていけるしな。」


「そうだねぇ。中学になったらクラス分けなんかもあるしぃ、ちゃんと勉強できるようにならないといけないねぇ。」


「本当よ。学生の本分は勉強なんだからしっかりしなさいよね。」


「そこの三人!!さっさと次の場所いきなさい!!」


「「「はぁい」」」


三人でまったりと会話をしていたが、実は今は運動会のリハーサルの真っ最中である。

運動会の知らせがあったころにはまだギブスがはめられており、司と竜も面倒なことは他のクラスメイトに押しつけてしまったのであまり仕事がないとはいえ、最上級生として最後の運動会なのでしっかりやらなければならない。

この学校は縦割り班で全校生徒を4つの組にわけて競技をおこなうのでバランスを考えた班分けをされた結果、運動神経の良いボクらはライバルどうしである。



「秋の大運動会を開催します。」


「よかったな。秋のために運動会ひらいてくれるんやて。」


古典的なボケをする竜に突っ込みをいれつつ、前をむく。


「そう言えば最近秋ちゃんってぇ。竜に優しくなったよねぇ。」


「は?なにいってるのよ?」


「さっきみたいなボケかました時はぁ、いつも悶絶させるダメージを与えてたのにぃ。」


「骨折してる手で殴るわけにもいかないし、これでもギブスとれたばっかりなんだから当然でしょ。竜に優しくなったんじゃなくて自分の体を大切にしてるのよ。」


そうはいっているが、実際怪我もずいぶん治っており右手でなくても突っ込むことはできるので悶絶させることは可能なのだが、なぜか前ほど竜のボケや失言に強くあたれないでいるのだった。

自分でもよくわからない変化にとまどっている。


「まぁ、最強美少女に攻撃されたら、俺の命がいくらあってもたりひんわ。」


「そっか、最近竜って男女ネタ言わなくなったかも、前一番腹がたった失言がなくなったからボクもそれほど強い突っ込みしなくなったんだよ。」


「確かにねぇ。竜最近秋のこと男っぽいとかいわなくなったねぇ。」


そういってニマニマしている司に少しキョトンとしてしまう。

暴力が減って介抱する必要がなくなったからよろこんでいるのだろうか?


「当然だろ、司だって同じじゃないか。」


「確かにぃ。でも竜は特に最近かわったよねぇ。」


そういうと、なぜか竜が赤くなっている。

それに標準語になっていることからなにかテンパっているようだ。

まぁ二人とも楽しそうだし悪いことを考えているわけでもないし良いとしよう。


「ねぇねぇ。この前100Mはかったら怪我の影響でかなりタイムおちてたのよ。ちょうど二人のタイムと変わらないし、今度の運動会賭けをしない?」


「へぇ。そう言えば秋と勝負事なんて久しぶりかもぉ。いいよぉ何をかけるぅ?」


幼稚園時代あんなに対抗意識を燃やしていた司も小学校の半ばにもなると秋のスペックにあきれて勝負事を申し込まなくなった。

しかし、それまでの勝負と武兄ちゃんと約束した野球をはじめたことによって運動神経はとても良いので100Mのタイムはかなり良い。


「ついに秋を俺の前にひれ伏させる時がきたか。で?何秒だったんだ?」


一方竜は柔道などでもずっと対抗意識を消すことがなく、前回の大会を見て流石に表面上は見れなくなってきたが、

小学校六年間の間中ずっとボクにことあるごとに勝負を挑んできていた。

もちろん一回も勝ったことがないが、じゃんけんですら動体視力と反射神経のいいボクには負けているので、最近では公平になるようにとくじ引きを持っている始末だ。


「一応この前は16秒くらいだったけど、体の調子も良くなってるからもっと良いタイムでるはずよ。」


「余裕やん。俺の前のタイムは14秒もうすぐでいくとこやったしな。」


「僕もぉ、そこまで早くはないけど15秒の前半だから運次第ではかてるかもねぇ。」


「じゃあ、司はちょっとハンディあるし、負けてもいいことにしてボクに勝ったらこの前の賞金で何か欲しいものかってあげるよ。」


「うん!負けてもいいなら安心だねぇ。」


「は?負けた時のことなんか考とんなや。16秒だぞ?絶対にひれ伏させたる。」


「強気だね。じゃあ竜はボクに負けたら何でも一日言うことをきくってので、どうよ?」


「いいぜ、秋も負けたら一日召使だからな。」


「ああぁ、二人ともあつくなっちゃってぇ。まぁ一日奴隷がんばってねぇ。」


そう言うと司は竜の肩をポンと叩いた。

昔からの付き合いでボクの異常な回復力をしっているので今回もどうせベストのタイムをたたき出すと予想しているようだ。


「ボクだって人間だぞぉたった一週間かそこらで16秒のタイムがベストの時みたいになるわけないじゃない。」


実際ベストには戻らないだろうが良い勝負になるだろうと考えていた。

まぁなんだか今回はいつも以上に回復がはやく、右腕もギブスを長くつけすぎたせいで衰えていたが骨なんかは結構早い段階でくっついてらしいのだが、まぁ気にしないでおこう。

















「「宣誓!」」「僕たち(私たち)・・・・・・誓います」


定番の選手宣誓を終えると秋の大運動会が始まった。

季節がらかよく晴れており、父兄席では子どもに引っ張られる形ですっかり仲良しになった三人の家族たちがカメラやビデオを手にかたまって座っていた。

地区ごとに別れてすわるはずなのだが、元々地区が同じ蟹津家二つのところに竜のお母さんは座っており、弟も生徒として運動会に参加しているため一人くらい増えても平気なのだろう。

こちらとしてもカメラの角度が決まっていて助かるので何もいわないことにした。


競技のプログラムは基本的に低学年からはじめ、閉会式の手前から全校リレー・100M走となっているので勝負が決まるのは結構最後の方になる。

ついでに100Mとリレーと二回連続で走ることになっているが、六年生の最後はいつも一番早い生徒たちがはしるし、リレーもそのメンバーはアンカーを務めることがおおいので問題はあまりない。

むしろ100M走で負けても縦割り班次第では勝つこともあり、それはそれで盛り上がるようだ。



最初の競技がはじまり、低学年による可愛い催しや高学年によるちょっと危険もある組み体操などが終わると、昼前に保護者たちによる綱引きがあり、すぐに昼食がはじまった。


「お兄ちゃん、お疲れ様。」


結構年がいってきた父に代わり若い兄は綱引きに参加し、うちの地域も同着の3位となかなかいい成績を残してきた。

そんな兄とご飯を食べるために既にみな集まっていた。


「早くたべよぉよぅ。」


「腹へってもたわ。」


成長期真っ盛りの二人はボクらが来るまでまたされて広げられているお弁当のおかずに夢中だが、一応待ってくれていたようだ。


「ほら、ちゃんと手を拭いてからよ。」


そう言って手を拭くための濡れタオルを渡しているのはお母さんたちだった。

綱を握って手が汚れていた武兄ちゃんは丁寧にタオルで拭き取ると輪の中にはいっていくと腰を落ち着けた。



「「いただきまぁす!!」」



ちゃんといただきますの挨拶をするあたりはしっかりしているが、お弁当の中にはいってるおにぎりやらサンドイッチや唐揚げを食べる手は司も竜もかなりのはやさだ。


「ちょっと、私の分まで食べないでよね。あ、竜!それ私の好きなおかかのおにぎり」


「モグモグと、モグッないからだ。」


口の中に物が入っていて何を言ってるのかわからなかったが、伊達に六年間一緒にお昼を食べていない。

おそらく“さっさとたべないから”とかそのようなことを言っているにちがいない。

竜がおにぎりと格闘している間に竜の前に置いてあった、野菜をお肉でまいたものを箸でつかむと口の中にいれた。


「ああ!!それ俺の。」


「あら?さっさと食べないのがいけないのよ。」


ボクらが奪い合いを始めるが、司は自分の分はうまく確保し、保護者達は仲の良い子どもたちの様子をながめている。


「秋姉ちゃん、それ僕のだよ。」


ついつい、ヒートアップしすぎて竜の弟の貴史たかしくんの分まで取ってしまったボクは、冷静になり、周りを見渡した。


「ほんと仲がいいわね。」


「秋ちゃんに食べてもらうならおばさんもお弁当作ったかいがあったわ。」


司のお姉ちゃんの真美子さんは中学校の部活で忙しくていないものの、三家があつまった場所での失態にボクと竜は赤面する。


「まぁ二人はこの運動会でも約束をかわす仲だからねぇ。」


「な!なに言ってるのよ。司だって一緒にかけてるじゃない。」


「そうだ。しかも“今回は”約束とかじゃねぇし。」


「秋ちゃん、竜が標準語になるときは何か動揺してたり隠し事をしてる時なのよ。」


あ、やっぱりそうだったんだ。今度から覚えておこう。


「母さん。余計なこといわないで!」


「まぁ、それで今度はどんな約束をしたのかしら?またお母さんたちには秘密かしら?」


「「約束じゃない!!」」


保護者たちはあらあらとか困っている風な言葉を発しながらも全然困っていない様子だった。

お父さんは微妙な顔をしていたが、相手が竜で男勝りな性格や色々なことから今まで浮いた話の一つもなかったので貰い手のなさそうな娘が、将来お嫁にいけるのであればと我慢しているようだ。










そんなやりとりをしているとお昼の時間はすぐに過ぎてしまい、午後からの競技の準備の時間になってしまった。

田舎の小学校とはいえかなりの人数がいるので100M走やリレーなどを終えると結構な時間になってしまうため計時係の司は持ち場に向かい午前中で役目を終えていたボクらは休憩時間をのんびり過ごしてから生徒たちのテントに向かった。




六年生の100M走は特にトラブルもなく、ついに決戦の時がおとずれた。

毎年だと若い男の先生も最後の走者と走るのだが、今年はダントツに早い三人がおり、若いというには微妙な先生しかいないので生徒だけで走るようだ。


「位置についてよ〜い・・・・ドン」


競技用のピストルの音とともにボクらは綺麗にスタートをした。

一人一番そとのレーンを走っていた子がもたついていたが、司と竜はなかなかの出だしをしたようだ。

ついでに、グラウンドがあまり広くないので、100M走はトラックを回るようになっており、一番内のコースからボク、司、竜、もたつきくんの四人で走っている。

もたつきくんにはリレーでがんばってもらおう。


カーブに差し掛かってくると司とならび、抜き去ることに成功した。

しかし、竜は健闘しており、カーブが終わってやっと並ぶような状態だ。

これはかなり白熱した戦いになりそうだ。


後ろからは司の足跡がかなり近い位置で迫り、眼の端でボクのことが見えたのだろう。

顔を真っ赤にして竜は腕を振り、足をだす。あと10Mといったところで勝負はきまった。



「お疲れ様です。すぐにリレーがあるのでアンカーの出番までゆっくりしていてください。」



百合後輩の真奈美ちゃんは大会いらいボクにこうして機会があるたびにアピールしてくる。

気のきく良い子なのだが、ノーマル宣言をしたボクとしてはあまり仲良くしてはいけないと警鐘がなっているので、手硬くせっしておく。


「ありがとう。真奈美ちゃんも計時係の報告がおわったら来てね。」


一声かけただけなのだが、顔を真っ赤にしてルンルン気分でタイムを書いた紙を提出していた。

これならおそらく僅差だった場合、真奈美ちゃん効果により賭けが成り立たなかっただろう。


「司!秋!さっさと行こうぜ。」


竜はさっきの結果もあって元気にリレーのアンカーの待機位置へと向かっていった。


「ああぁ、欲しいものあったのにぃ。」


「そんなに落ち込むなら、リレーで勝てたら考えてあげるわよ。」










結局リレーでも、もたつきくんの活躍はなく、三人で競り合うことになったが、班のメンバーが優秀だった司が一番にゴールし、二番目にボク、三位に竜、結構差がついてもたつきくんの班だった。

まぁ100M走で力を使い果たしていたらしい竜は案外あっさりとボクに抜かれてさっきと違い結構落ち込んでいた。


「司も頑張ったし、ホントに賞金使い道ないし高いものでなかったらかってあげるわよ。」


「ホントにぃ?やったぁ!じゃあ明日までにリストアップしておくねぇ。もう少しで出来上がるからぁぁ。」


「一個だけに決まってるでしょ。」


「わかったぁ。じゃあ明日までにどれが一番欲しいか選んでおくぅ。」


本当にわかっているのか微妙な発言だが、司のことなので明日には一番欲しがっていた新しいグローブでも請求してくることだろう。


閉会式も終わると、秋の大運動会は無事に終わったのだった。






ご愛読ありがとうございます。


秋の(ための)大運動会終了しました。


ずばり、“次回への伏線をどのように伝えるか”です。


この構想は次話とともに作品を書きだした当初から考えておりましたので、次話ではAKIがどんな風に二人の関係を持っていきたいかが分かると思います。


皆様への感謝の気持ちが多すぎて事前に書くことができることもあり、あとがきが長くなりがちですが、今回はすっきりテーマ発表をしてみました。






それでは今回もありがとうございました。


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