チャプター10
PV三万突破&ユニーク1万突破いたしました。
みなさん本当にありがとうございます。
それでは、チャプター10をお楽しみください。
ナイスミドルとファーストキスの行方
最強美少女の称号を得たボクは、実に過ごしにくい日々を送っていた。
新聞の一面だけでなく各種のメディアに取り上げられてしまい、そうなると田舎町である海良町では顔がばれてしまっているため、
学校でも登下校中でも今まで話しかけられたことのない人からも声をかけられる毎日だった。
「まぁもともと不幸少女で有名だったんやから、回避対象として見られるか尊敬対象になるかの違いやん。」
「それでもさぁ。林先生のおかげでぇ、マスコミは来ないんでしょぉ?」
「そうでもないのよ。いつまでも隠し通せるわけじゃないからってことで、来週末には取材と記者会見のために東京にいかなきゃいけないのよねぇ。」
「そっか、じゃあお土産よろしく!!」
「バカ!!ギャラも出るし交通費から宿泊費まで全部マスコミ持ちとはいえ、おかげで時間の余裕もとれなくてせっかくのワンコ参観日の予定がパーなんだから。」
かなり多額の賞金をもらったボクにとってはお金よりも念願であったワンコが遠のくことの方が重要なのだ。
このままでは本当に中学にはいるまでワンコの無い生活になるかもしれない。
こうなったらギャラついでにワンコも請求するとか動物と一緒の取材など以外は断るのも手かもしれない。
「はいはい、ワンコが大好きなのはわかったからギャラで請求するのだけはやめとけよ。」
またしても口に出ていたらしい、司ならともかく竜に言われたのだから確実に口にだしていたのだろう。
この癖は直さないといけないな。
マスコミの前で変なことを口走ったらこんどは妄想美少女なんてあだ名がついてしまいそうだ。
「ところでぇ、今日は何で竜の家なんかにいくのぉ?」
「ああ、それは竜のお母さんが優勝祝いにご飯をごちそうしてくれるらしいのよ。ほら、ちょうどバスも来たし、行くわよ。」
遠くの方からバスの影が見え、こちらに近付くにつれて速度を落とし始めていた。
あれ?
あの子・・・
ボールばっかりみて、バスに気づいていない?
気づいてしまうと体が勝手に動きだした。
学校の側のバス停なため広い敷地でたくさんの子たちがまっている中、皆の目線をさけて後ろの方にいたのがあだになった、今向かっても間に合うかどうか怪しい。
耳をつんざくようなブレーキ音とともに、迫りくるバス、やっと少年は気づいたようだが、
驚いてしまって硬直している。
「あぶない!!」
バスとぶつかる寸前に少年とバスとの間に体をねじ込むと、少年をかばうように抱きかかえる。
「キィィィイ!!!ドカッ」
ブレーキは間に合わなかったようで、強い衝撃とともに、意識がフェイドアウトする。
『こんにちは、秋ちゃん。』
『こんにちは、洋司さん。』
『もう少し驚くかとおもっていたけど、大丈夫そうだね。』
『はい、前回の記憶のおかげだと思います。先に質問なのですが、エンマ帳ではあの子はまだ死なないのでしょうか?』
『おどろいたね。そんなことまで記憶の復元がすすんでいるなんて、大丈夫だよ。君のおかげで多少の擦り傷はあるものの、大事にはいたっていない。』
『それはよかったですわ。これで助からなかったら痛い思いをした意味がないもの安心しました。』
『和くんの記憶が復元されつつあるのに女の子の言葉づかいなんだね。』
『復元されたから余計に、です。』
『そうか、そうだったね。秋ちゃんは賢い子だったね。じゃああまり前置きを置かないで説明をはじめよう。』
『はい、助かります。』
『今回こうして話しているのは長い間臨死体験をするから説明を十分にできるためであること、そして記憶の復元が未完成であるため。』
『そうですか。でも、一般人であるはずの私にこのような記憶を残してよろしいのですか?』
『それについてはもう少し説明してからにしよう。先に秋ちゃんの記憶が部分的にとはいえ残っていることについて、秋ちゃんが再転の間にいたことに関係してくるんだ。あそこには同時に保存の珠玉が置いてある。本来万全をきすために、保存の珠玉には複数名入るのが普通なんだ。』
『でもあの時は洋司さんしか入っていなかった。』
『その通り、ではなぜ僕しか保存の珠玉にははいっていなかったのか。それは鬼人ではない秋ちゃんの記憶を部分的とはいえ残すためなんだ。』
『でもなぜそんな回りくどいことを?』
『それは将来秋ちゃんが鬼人になるからだよ。そして前世では鬼人でなかった秋ちゃんには保存の珠玉の溶液はきつすぎるため、間接的な方法をとらざる得なかったからだよ。』
『鬼人にですか。冥界で保護されるなんていうからおかしいと思っていたら、再転の宝玉や保存の珠玉に加えて真実の鏡まで使うのですね。』
『本当にすべてお見通しといった感じだね。あ、ちょっと話は中断して見てごらん。』
いきなり話を中断されて驚いたがボクは洋司さんが指さす方向をみて絶句した。
『ボクのファーストキスが・・・・』
そこには一心不乱に心肺蘇生を行っている竜の姿があった。
道場で教えられてできるようになったとはいえ、初めてのことにぎこちないしぐさではあるが、一生懸命ボクのことを助けようとしている姿はちょっとかっこよかった。
しばらく唖然としてみていると、近くの民家で電話を借りて救急車を呼んだことを司が伝えてくれた。
素早い応急処置は蘇生の確率を飛躍的に伸ばすというので、今回は竜の応急処置と司があわてずに救急車をよんでくれたことがボクの命を救うと考えると、さっきまでの羞恥心はどこかへ行き、感謝の念で涙がでてくる。
少しの間ぐずっていたが、だいぶ落ち着いてくると洋司さんが声をかけてきた。
『秋ちゃんはこんなにも愛されているんだ。頭の記憶は生きかえった時に消えるけど、感謝の念の様な魂の記憶は残ることが前回の再転の前に確認されている。生きかえったらきちんとお礼がいえるはずだよ。』
この、感謝の念が消えないことがわかり、少し安堵したボクは顔をあげ、洋司さんを見上げた。
すると洋司さんはボクのことを優しく包み込むようにして抱きしめると、顎をもちあげ、
『鬼人である僕には現世の君にキスを送ることはできないけど、魂のファーストキスはいただくね。』
そういって、優しくボクに唇を近付けた。
ボクはさっき現世で感覚はないとはいえファーストキスをされたばかりなのに、魂のファーストキスまでされそうになりびっくりしたが、なぜか抵抗する気が起きずにされるがままになっていた。
しかし、眼を閉じていたのにいつまでも唇にその感覚がやってこない。
そういえば抱きしめられているはずなのにその感覚さえなくなっていた。
『まだ、不完全なままか、ファーストキスは36回目の臨死体験までお預けだね。』
目をあけると、そのままの格好だが、ボクの体が透き通ってしまったようで、
洋司さんのうでが不格好にクロスさせられ、普段のナイスミドルな微笑みを苦笑いにした洋司さんがいた。
魂の方の唇はとりあえず今のとこと守られたらしい、そのことに安堵の気持ちと残念な気持ちが半分といった気分だった。
『ここで、唇を奪っていたら、鬼人になるのを早めることができたのだが、まぁ当初の予定通り秋ちゃんには45歳から鬼人になってもらうことにしよう。』
『え?キスが鬼人に関係あるのですか?』
『冥界とのつながりが強い秋ちゃんなら、真実の鏡の力だけでも鬼人になれるだろうけど、鬼人と交わることによってより安全に鬼人化が成功することになるんだよ。』
無駄なことをあまりしない洋司さんのことなのでそんな気がしてはいたが、そこまで理由のある行動だったことに胸の奥でチクリと何かが痛むような気がした。
『そこは嘘でも優しく愛の言葉をささやいてくださいよ。』
『もちろん秋ちゃんのことは大好きだけど、秋ちゃんにはまだこれから現世での生活があるからね。
冥界とのつながりを深めるのはもっとゆっくりでいいんだよ。今後の臨死体験では、それらの作業に入るつもりさ。』
『しかし、普通とは違うとは思っていましたが、鬼人になれるほどだったとは・・・』
『前世もあわせて冥界で清められた強い魂と今回は300年もの寿命をもつ強い肉体があるからね。
再転をしなかった場合は肉体が損傷をうけて魂が著しく低下するためいくら回数を重ねても鬼人化は中々難しかったが、だいたい30回目の臨死体験以降であれば鬼人化は可能になるだろうね。』
『肉体と精神はそんなに密接に関係しているんですね。でもそれだったら今回だってそれだけの数の臨死体験をしたら体がこわれてしまうのでは?』
『大丈夫だよ。今回の秋ちゃんは和くんの時とは違って普通の人とは違って強すぎる肉体に魂の方がついていけるだけの成長をしているから、これからおこる困難を柔軟に乗り越えて今後ここまで長い臨死体験をすることもほとんどないんだ。』
『さりげなく今後の人生が平穏無事ではないことがわかってしまいましたね。しかも、その言いぶりだとボクはかなりの超人になってしまうのではないでしょうか?』
『和くんの時に比べたら平和なもんだよ。最後の臨死体験の理由も食中毒かなにかだしね。秋ちゃんの超人的な性能についてなんだけど。』
最後の臨死体験ということは現世での死因にあたるはずのことが食中毒と聞いてボクの中でなにか大事なものをなくした気がしたが、もっとカッコ悪い死因はたくさんありそうなので我慢することにしよう。
『秋ちゃんは今後実力的には東京大学に軽く主席でうかって地球上どんな大学にだって行けるだろう頭脳と、正直オリンピックに出場したら出場可能であればほぼすべての種目で金メダルくらい取れちゃうような運動能力をもっているかな。』
『ええ?それってかなりの大問題なのではないでしょうか?』
『そうだね。でも秋ちゃんだから、今後家族や竜くん、司くんと相談してそれらは隠して生活するようになるんだ。
高校や大学には首席合格をして学費は必要ないように調節するみたいだし、運動だって個人での遊びの時は思いっきり力を発揮するけど、大会などは前回の柔道のことがあってからはある程度手を抜くのをまわりも認めてくれるからね。』
『そうですか。でもそんなすごい人もいるんですね。なんか欠点が見つからないですね。最強美少女じゃなくて、完璧美少女だったんですか?』
実際は不幸体質というやっかいな欠点があるのだが、これは棚にあげておいた。
洋司さんも不幸少女に関しては気にしていないのか。
『本来否定したいところなんだけど、これだけ完璧でしかも性格まで良いから現世においては完璧美少女っていっても間違いじゃないだろうね。
それだけ、様々な分野において鬼人になっても認められるような人物ってことさ。』
『そうなんですか。まぁ、不幸少女なんで、恋愛などができないことだけが少し残念ですが。おおむね良好な未来が見えてきました。』
前世の記憶が残っているので不幸に巻き込まれて離れていってしまった恋人たちに悲しい気持が隠せないが、これだけなんでもできるのであれば、贅沢をいうのも悪いと思い、前向きに考えることにした。
『うーん。前世と違って鬼人になることが決まっているから問題ないし、少し教えてあげるなら、秋ちゃんは女の子だから大丈夫だよ。
大学を卒業後は小説家になるんだけど、自分の不幸体験を書き記してベストヒットを連発させ、きちんと永久就職もして不幸体質を除けば幸せな人生を送る予定だから。まぁ小説を書くのは和くんも予定していたみたいだけどね。』
『エンマ帳って確か生死にまつわることしか書かれていないはずですよね?』
『ああ、会社にも入ってるかもしれないけど、小説を書くのは確かだよ。ファンの人からの贈り物で臨死体験をするし、結婚に関しては子どもが生まれるからわかって当然なのさ。』
『理解しました。というかわかっていても気付きたくない事実を理解させられました。』
このあとも、現世に持ち帰れないはずの現世での能力について、今後の鬼人化にむけてのこと、それに秋についての話だけでなく、冥界や洋司のことなどをのんびり話しながら救急車にのって運ばれた体にもどるために病院にむけて飛んで行った。
『今さら言うのも変だけど、これからよみがえろうというのにほんと落ち着いているよね。』
『エンマ帳で、前もって予定を把握している洋司さんがいますから。洋司さんにあわせていれば特にあわてる必要がないじゃありませんか。』
『エンマ帳に乗っているのは生きかえる時間くらいなものだし、それだって僕がうっかり時間を間違えてしまうかもしれないじゃないか?』
『うーん、でも今までそんなことが一度もなかったので信じますよ。洋司さんなら大丈夫なんだって安心感があるんですよね。』
『全幅の信頼をありがとう。さて信頼に応えるべくそろそろ準備を始めようかな。』
『はい、大変な仕事なのはわかっていますが、回避不可能なようですのでこれからもよろしくお願いします。』
『はいはい、臨死体験を当然のように受け入れるのもどうかと思うけど了解したよ。』
洋司さんは以前のように頭に手を乗せると記憶を操作するために集中するのか眼を閉じた。
その姿になんだかほっとするような、そして少しのドキドキを感じながらボクも目を閉じ冥界とのしばしの別れを告げるのだった。
「意識を取り戻しました。」
「秋!」「秋ぃ!」
「秋!!お母さんよ分かる?」
「秋ちゃん!!」
病室には竜と司、好美と祝賀会のために休暇をとっていたから駆けつけることができた竜の母親がいた。
「おはよう。よく寝たよぉ。」
「馬鹿。こんな時にぼけるんじゃないの。」
「開口一番冗談をいえるんなら平気そうやな。」
さっきまで意識がなかったとは思えないのんきな発言に安心した秋に、四人は緊張した顔から少し疲労はあるもののそれでも笑顔を見せた。
心配をかけてしまったことに申し訳ない気持になったのだろうが、確認したいことがあったので口を開いた。
「あの子は?」
短い言葉だったが、察しの良い司には伝わったらしく答える。
「かすり傷程度のものだよぉ。一応検査のために病院にいるけどぉ、特に問題ないみたいだよぉ。安心してぇ。」
間延びした司の声と少年が無事だったことに対する安堵から秋は自然と笑顔をみせる。
そんな様子を見ながらも医者はテキパキとなにかカルテやら機械やらをいじっていたが、最後にもう一度体を確認すると、もう大丈夫だろうと判断したようだ。
「安心してください。意識もはっきりしているし、しばらく入院はしていただきますが、若いこともありますし、きっとすぐに良くなりますよ。
外傷も大したことはないし、骨や神経の方も正確な検査は後日行いますが、おおむね問題ないでしょう。」
声にいつものハリはないものの、医者からの言葉もあり今度は完全に安心したのだろう。
好美以外は安心したようで、意識がもどったばかりなのでと病室を後にした。
「お母さん、また心配かけちゃってごめんね。」
「本当よ。ついこの前川に溺れたかと思ったらこれだもの。親より先に死ぬなんて絶対やめてよ。」
実際は300年近くも生きるし、逆に現世においては親よりも先に死んだことになってしまうのだが、現世の秋と好美はそんなこともしらない。
心の底から心配をする母親と申し訳ない気持でいっぱいの秋がそこにはいた。
「無理かな。ボクだって死にたいわけじゃないし、こんな経験好きでこんなことしてるわけじゃないけど・・・。
やっぱり、今回みたいなことがあったら体が動いちゃうと思う。だって、あの時助けられたのにって後悔したくなんてないから。」
「それで、秋が死んじゃったら意味ないじゃないの!!」
「ううん、ボクはもう既に二人の命を救ってるんだよ。こんな体質だからこれからだってそんな場面あるかもしれない。
そんな度に見殺しにして自分が安全な方法をとるなんてボクにはできないよ。」
秋の言葉に、今までたくさん起こってきた出来事と、性格を知っている好美は、
悲しくて心配で張り裂けそうなおもいと、立派に成長した娘への嬉しい気持が同居していた。
「それにね。前にも言ったけどボクには司と竜がいるし、今回は偶然間に合わなかったけどこれでも最強美少女だから。ちょっとやそっとのことじゃしなないわよ。」
そう言って微笑む自分の娘に、強い意志と希望の光を見た気がする好美だった。
「いいわ。お母さん人助けをするなとはこれから絶対に言わない。でもね。
できるだけ秋が安全な方法をとって、今回みたいに自分の身を呈して守るんじゃなくてあなたも相手も助かるような工夫をしてちょうだい。」
「うん、約束するよ。どうしてもじゃない時を除いて絶対に自分の命も大事にするね。」
「まったく、本当はどうしてもじゃない時は自分の命を優先してほしいけど、それは秋だから仕方ないわよね。
本当に普段は親孝行な子なのに一番大事なことで親不孝なんだから。」
好美は普段から子どもたちの意思を尊重してくれるところがあった。
命にかかわることだけに今回は引き留めたい気持ちもが大きいようだ。
秋の様子をみてそれが不可能だと察すると、せめてもの妥協案としてできる限りでも自分の命を大事にしてもらうように説得するのだった。
「お母さん、できたら竜と司と話したいんだけど、三人だけで、良いかな?」
ベットの横でまだ様子をうかがっていた医者に確認をとると好美は答えた。
「お医者さんももう大丈夫って言ってくれたしあの二人ならいいわ。」
そうして、医者と共に病室をでると一言二言二人に何かをつげて入れ替わるように司と竜が入ってきた。
「本当にもう平気みたいやな。」
「ほんとに今回は心配したよぉ。」
「心配かけてごめんね。あと、本当にありがと。」
「なんだよ。あらたまっちまって。」
「みずくさいよぉ。」
司はいつもと変わらない様子だが、竜はなにか緊張しているようだ。
緊張するとえせ関西弁が標準語になるのかな?
「だって二人がボクの命救ってくれたんでしょ?誰も説明してくれなかったけど、あの場で対処できたのは二人くらいしかいなかったからね。」
「ああ、司が近くの民家に駆け込んで救急車を呼んでその間に俺が心臓マッサージをしたんだ。」
「やっぱり、そうだったんだ。ということは胸さわられちゃったなぁ。どうしよう。秋は汚れてしまったわ。もうお嫁にいけないぃ。」
からかい半分でそんなことを言うと竜は真赤になってうつむいた。
「違うよぉ。前と違って呼吸もとまってたから人工呼吸もしてたよぉ。」
「「・・・・」」
空気を読める司のことだ、態と教えたんだろう。
「人工呼吸・・・ってことは??」
「ごめん、ファーストキスの相手は俺だ。」
真赤になりながらも前からファーストキスにこだわっていた秋のことを知っていたので、申し訳なく思っていたのだろう、竜は思い切り頭をさげた。
「いいわよ。緊急事態だったんでしょ。」
いきなりのことで、驚いたものの状況が状況なので怒ることもできず、むしろ感謝の気持ちの方が大きかったので秋は許してあげることにした。
「それに、初めてが竜でよかったわよ。」
「へぇぇ。秋ちゃんもたまには素直だねぇ。」
「バカ!!そんなんじゃないわよ。変態ロリコン男とか定年すぎのおじいちゃんなんかと比べたらましってだけよ!!」
そう叫びながらも、流石に恋愛に鈍い私も司の言っている意味がわかった。
秋は自分でも顔が熱くなって、真っ赤になっているのが鏡を見ないでもわかり、よけいに恥ずかしくて布団をかぶろうとする。
「いた!!」
思っていた以上に体に負担がかかっていたようで布団を引き上げることに失敗し、顔を隠すことはできなかった。
しかし、そんな様子を見て口は元気だがけが人なのだと二人も気付き、さっきまでの桃色の雰囲気は和らいだ。
「まだ安静にしてろ。ブレーキ踏んでたとは言えかなりの衝撃だったらしいからな。」
まだ、標準語が抜けていないので少し緊張はしているのだろうが、それでも心配していってくれているのでふざけるのはやめて、素直に聞いておくことにする。
「うん、ともかく感謝してるの。これは本当よ。ありがとう。」
これまでも何度も助けられた二人に、今回は命まで助けてもらったこともあり、
感謝の気持ちをもう一度伝えると二人はそれぞれ微笑み、大したことはないといってくれた。
するとノックの音が聞こえて今度は看護婦さんが入ってきた。
「けが人なのでそろそろ面会は終えて安静にしてください。」
そう言うと、さっき動かそうとして動かなかった右手とは逆の左手についている点滴を確認したりとボクの状態をチェックしだした。
二人は「また来るから」といって病室を出て行った。
精密検査の結果右手にはひびが入っているためギブスをはめることになったが、夏までには今までのように戻るといわれ、他には目立った外傷もなく週末までには退院できるとのことだった。
マスコミの取材はわざと包帯だらけで行くことによって顔を隠せるし、家族と話し合った結果今後このような大会には参加しなくてもよく、
学校などでもあまり目立ったことをしたくないという秋の意見を取り入れることになった。
ちょうど良いので子どもを救って怪我をし、その事故のせいで選手生命がたたれたことにしてメディアには伝えることにした。
それと、助けた男の子の両親からは涙ながらに感謝され、ひとりっこだったらしくどんなに大事にしていたのかが伝わり秋も嬉しくなった。
今回はいろんなことがあったが、少し成長することができた三人だった。
皆様にお礼を綴る前に先にお詫びを、話の途中で視点が変わってしまいました。
本当に申し訳ありません。
読みにくく感情移入がしにくくなっていたら本当にごめんなさい。AKIもずっと秋視点でと考えて苦心をしたのですが、伝えたいことを表現しようと考えた時にやはりこの方法が一番のように思いこのような形に落ち着きました。
今後もAKIの判断によりこのようなことが起こるかもしれません。
それなら、話を二つに分ければいいのかもしれませんが、あまりぶつ切りになるのもどうかと考えてどうせ一話ずつ投稿するなら読み応えのあるものにしたかったのでこれでキャプチャー10にいたします。
話の内容に入ります。
ちょうど10話目ということもありまして今回は節目となっております。
今回のテーマは“秋の謎”です。この作品は、秋が幸せを手に入れるお話という趣向ですので、秋にまつわる周囲の想いや秋本人の秘密について節目であるこの10話を通してみなさんに理解していただけたらと思っています。
ついでに、前回の臨死体験が大会前に必要だった理由については魂との調和のために一度冥界とのつながりが必要だったのです。
実はあの臨死体験前は、普通の女の子に近かったのですが、あれ以降秋ちゃんは鬼人に向かって邁進しております。
ここらへんはとあるアニメの野菜星人みたいですね。
それではここまで読んでいただき読者の皆様には本当に感謝しております。
ありがとうございました。