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独自

白浜 雫side

私は、自分が好きな人以外を人間と思っていない。いや、自分より低能なモノを、同じ人間と考えたくないと思っていると言った方がいいか。

そう思うようになったのは、小学生の時からだ。当時の私は遊ぶより、本を読んだり勉強したりする方が好きだった為、周りが誘ってきても断って部屋の隅で本を読んでいた。そんな私に教師達は、「周りと仲良くしろ」とか、「周囲の和を乱すな」とか言ってきたが、無視していればその内何も言わなくなってきた。そんな頃、一人の男子が私の読んでいた本を取り上げて言った、


「本ばっか読んで、頭良いつもりかよ」


その言葉に少し腹が立った私は、そちらの言動がどれだけ非常識か、そちらが私より劣っているかを事細かに説明した。その男子は、最初こそ反論してきたが、私が片っ端から論破していくと黙り込み、最後には泣き出した。その後、担任がやって来てやっと解放されると思ったが、何を思ったのか本を取り上げ悪口を言ってきた男子ではなく、私を叱ってきた。後で知ったが、私が泣かした男子は園の中でも人気者で、大人達からもある程度信用されている存在だったらしい。対して、私は教師の言うことを碌に聞かない問題児という認識だったため、叱られたんだと思う。しかし、そんな事情を知らない――まあ、それはそれで納得できないが――当時の私は相手のしてきたことを説明し、抗議したが聞き入れられなかった。学校からの連絡を聞いた私の両親も、私の話を聞かずに叱った。その場は兄さんが両親を諫めてくれて収まった。その後兄さんは、私に何故周りに私の主張が聞き入れられないのか教えてくれた。


「人は自分の主観で、物事のほとんどを決めつけてしまうんだ。だから、自分の主張を聞いてほしいのなら、まずその主観を何とかしないといけない」


その後、兄さんは「例外もあるけどね」と、付け加えて笑った。私は兄さんにどうしたら人の主観を変えられるか聞いてみた。そうしたら兄さんは、「人の喜ぶ事をするといい、人は自分の都合の良い者の言葉は素直に聞くからね」と教えてくれた。

私は直ぐにそれを実践した。教師の注意や忠告は聞き入れたし、手伝いも買って出た。周囲のお願いもできるだけ引き受けた。そうやって優等生を演じた。しかし六年生になった時、私の人気者というレッテルがはがれた。特に何かがあった訳ではない。


「自分より優秀なのが、気に入らない」


ただそれだけの理由で、私はいじめられるようになった。初めは、物を隠されるとか大したことはなかったが、次第にエスカレートしていった。担任に報告したが、主犯格も教師から信用されている為、聞き入れてもらえなかった。それでも、私は演技を続けた。演技しながら、いじめの証拠を集め、担任に提出した。そこで漸く問題になり、主犯格は学校内で居場所を失い、転校していった。その数か月、またいじめられはじめた。私は呆れて、ものが言えなかった。前回の件で、何一つ学んでいないのだ。私はもう諦めた。それからは、面倒ごとにならないように演技を続けながら生活した。その生活は中学に入学してからも続いている。そんな中、兄さんの話を聞いて、もう一度考えてみた。

なんで、演技なんてしてるんだろう?

自分の主張を通す為に始めたことなのに、私はなんでこんな生活をしているんだろう?


「くだらないな」


そう考えたら、全身がスッと軽くなって、胸の内に全能感が溢れてきた。





白浜 零side

廃工場での一件から一週間が経ち、僕たちはまだ希少な能力者の捜索という名の、能力者狩りをしていた。というのも、未だ雫達から返事を聞けてないからだ。緑川は、「雫ちゃんが協力するなら、私もするのです」と言って雫に判断を委ねている為、実質雫の返答から待ちだ。雫の様子から、遅くても数日で了承を得られると思っていた為、少し予想外だ。


「それにしても、騒がしいな・・・」


僕は現在、表向きの身分である学生の本分を果たしていた。今は午前の授業も終わり昼休みに入っていたが、それを踏まえても騒がしすぎた。周りの様子から校庭で何かが起きているようだ。

僕は好奇心から他の人達と一緒に、窓から校庭を覗いてみると、そこには、殴り合いをしている三十人程の生徒がいた。遠目からでも大量に出血していると分かるのに、声一つ上げず殴り合っているその様子は、明らかに異常だった。

だが、僕はそんなことよりも、その様子を朝礼台の上から見ている人物が気になった。恐らくあそこにいるのがこの事態の原因だと思われる。大体予想はついていたが、僕は目を凝らして、その人物の顔を確認する。


「何してるんだろ、あの子・・・」


朝礼台の上に居たのは、雫だった。

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