回想
計画が始動してから、半年がたち、僕と闘也は、忙しい毎日を送っていた。
「はぁ~,今回もハズレかよ。」
闘也はため息を吐きながら,積み上げた人の山に腰掛ける。
「そうだね。」
僕は,彼の言葉に相槌を打ちながら,この半年間にあったことを思い返してみる。
水道水に例の薬品を混入させることは,予定していたより早く三週間程で終わった。
次に僕たちは,自分自身を超能力者にし,その超能力を鍛えた。因みに,僕には冷却能力が,闘也には自己強化能力が,それぞれ発現した。まあ、僕の方は一概に冷却能力とは言えないが。
ある程度鍛え終えた僕らは,新たにつくる組織の幹部候補を探し始めた。判断基準は,希少で強力な能力をもっていることだけだ。
しかし,ここで問題が起きた。その基準を満たす者が,極端に少ないのだ。能力者が全国的に確認されるようになってから,今までの間で基準を満たしていた者は,3人しか見つからなかった。目標人数は5人のため,あと2人どうにか確保するために、僕たちは能力者が所属していると思われる組織を、片っ端から潰して回っている。おかげで、《能力者狩り》なんて呼ばれる始末だ。だがそれでも、なかなか見つからないため、どうしたものかと頭をひねっているのが現状だ。
「おい聞いてんのか、零!」
「あ、ごめん、考え事してた」
「おいおい、ここ一様敵地だぞ。」
「もう制圧済みだけどね。
で、なにか見つけたの?それとも、新しい狩場の情報が入ったのかい?」
「後者だ。しかも今度のには、当たりぽいぞ!」
闘也は手元にある携帯を、こちらに渡しながら、興奮したように言う。
僕は画面に写っていた『山内 桜』の文字を見て、少しげんなりしてから、それをうけとり、耳にあてる
「もしもし、僕だけど。」
『あ、零くん!
私、見つけたよ!精神干渉系能力てやつ!!』
「ほんとかな~
前もそう言って、実は薬で操ってただけでしたって、おちだったじゃないか。」
『今回のは、しっかりと裏はしっかり取った!!!
だから大丈夫だよ!!!!』
どんどん大きくなっていく彼女の声に、顔をしかめる。
山内は半年前に見つけた創造能力を持つ女子校生で、無から有を何も使わずに創り出すことが出来る。本人は武道、武術に長けており戦力としては期待できるが、それ以外が壊滅的であるため、戦力としてしか期待できない。因みに、僕は精神干渉系能力者を探せなんて一言も言ってない。
(正直、山内の裏をとったは信用できなし、また無駄骨になる可能性が高いけど・・・)
そこまで考えたところで、闘也の方に視線だけを向ける。
そこには、「よっしゃー!これであと一人だ!」とガッツポーズしながら、人の山を踏みつけている男がいた。
僕はそれを見て、いろいろと諦めた。
「情報ありがとう。
今から向かうから、場所を教えてくれるかな?」
『了解!!!!!
場所は○〇市△□町の山奥の廃工事だから!!!!!
それじゃあ待ってます!!!!!』
うるさいくらいの元気のよい返答のあと、僕の返事も待たずに通話は切れた。
「じゃあ、行こうか闘也」
「おう!」