始動
ある程度、計画の詳細を話し合ったあと、僕と闘也は別れた。
理科室を出た後,あらかじめ買っておいたスポーツドリンクの一本に,注射器を使い作りたての薬品を入れた。
それを持ってグランドに向かう。
グランドでは,運動部が元気よく活動していた。
僕は辺りを見渡しながら、目的の人物を探す。
「零!」
声のした方を見ると、陸上部のユニフォームを着た女子が、こちらに駆け寄ってきた。
「零が自発的に、グラウンドに来るなんて珍しいな。」
「最近会えてなかったから、差し入れついでにね。」
「そうか、ありがとう。」
僕は彼女に細工をしたスポーツドリンクを渡す。
彼女は、それをなんの疑いもなく、口にした。
彼女の名は、夜桜 輝夜。
僕のもう一人の幼馴染みで、僕の好きな人だ。
そして、僕のつくる物語の主人公でもある。
「最近、忙しくしていたが大丈夫なのか?
私に出来ることなら手伝うが?」
「大丈夫たよ。
闘也に手伝ってもらってるから。」
「そうか、それならいいんだ」
輝夜は、そう言いながら笑う。しかし、その笑顔はどこか寂しそうだった。
「それじゃあ、あんまり長居すると邪魔になるから、そろそろ帰るね。」
「ああ、気をつけてな。」
「そっちも部活頑張ってね。」
僕は、残りのスポーツドリンクを輝夜に渡し、帰路に着いた。
※※※※※※※※※
家までの道のりで、計画について考えた。
どこまで計画完遂までの期間を、短く出来るか、どこを削減出来るか。
さっきの、彼女の表情を見て、計画の完遂を早めなくてはならないと思った。
(早くしなければ、輝夜の心が壊れてしまうかもしれない)
その思いが僕を焦らせる。
しかし、どう頑張っても、計画完遂に3年はかかる。
しかも、トラブルなんかを考慮すると、半年から一年は、長くなる可能性がある。
でも、今さら計画を見直す時間もない。
だから、このまま今の計画を進めるしかない。
その為に、この焦りは封じ込もう。
(焦らず慎重に、それでいてできるだけ早く。)
それを心掛けよう。
大丈夫、まだ猶予はある。
こうして、僕の計画は始動した。
1ヶ月後,世界で初めて本物の超能力者が確認された。