第12話 始まり
美緒が扉を開けるとすでに室内は明かりが灯されており、ドアの外からでもその異様な装飾がはっきりと見渡せる。
「何じゃこの部屋は?!」
健介のあんぐり顔が実に滑稽に見える。
ここはドラキュラの部屋か?
大体何だこのでっかい十字架は?
手足の所にごっついベルトが付いてんぞ。磔だ!
おっ、面白れぇ......超本格的じゃん!
健介の口からは自然とよだれが垂れ落ちている。見ていてあまり格好のいいものではない。
「いつまでそこに突っ立ってるの? 早く入んなさいよ」
気付けば美緒はすでにドラキュラ邸の中に。バッグをソファに投げ、既に上着を脱ぎ始めているではないか!
なんだ、この女も待ち切れないってか?
まぁ、焦るなって......今可愛がってやっからよ。
それにしてもシャワーくらいしねえのか?
因みに俺昨日風呂入ってねえぞ......まぁ、そっちがいいんなら俺は構わねぇけどな。フッ、フッ、フッ......
「俺の可愛い子猫ちゃん。そろそろ始めようかねぇ......」
「......」
すると美緒は無言のまま、突然健介に向かって突進を開始する。
タッ、タッ、タッ......
おお来たぞ!
健介は自分の元に駆け参じる美緒を無謀にも抱きしめようとでも思ったのだろうか? 目を瞑り両手を大きく広げ笑顔で待ち受けた。
すると......
バコンッ!
なっ、何だ?!
バコンッ、バコンッ!!
何だ? 顎が痛いぞ? もしかしてエルボー打たれてる?
「そうりゃあ!」
今天井が見えたんだけど......まさか投げ飛ばされてるの?
バサッ!!!
背中痛い!
「おうりゃあ!」
バサササッ!!!
今一瞬男の姿が逆さまに見えた気がするんだけど......
「ていやぁ!」
バサッ!!!
『ていやぁ!』の声ちょっと太くないか......
気付けば健介は身体中を四方に打ち付け、大の字になって倒れていた。
「いてててて......ちょっともう勘弁してくれ。いてててて......」
健介は苦痛に顔を歪めながら、恐る恐る視線を上にあげる。涙目に映った景色......それは怒りに満ちた表情を浮かべた二人の男女だった。
何で男が居るの? いつの間に入って来たんだ?
最初から待ち構えていた事は言うまでもない。
「起きろ!」
男は倒れ込む健介の髪の毛を鷲掴みにして無理矢理立ち上がらせた。
「痛いっ、痛いって!」
「うるせぇ黙れ。さあ美緒さん!」
「はいよ!」
何なんだこの二人は?
おいちょっと......何服脱がせてんだよ?
あれっ、ちょっと待て。パンツ一丁じゃねえか!




