第5話 防犯カメラ
ポールはさり気なく警察手帳? をチラつかせる。それがフィットネスジムの会員証である事は言うまでもないが......いきなり警察と言われれば、多少なりとも動揺を見せるのが人間の常。そしてレジの内側に立つこのオタク男もその例外では無かった。
「けっ、警察?! ちょっと今店長が不在なんですが......ど、どうしよう」
期待通りの狼狽振りだ。案の定フィットネスジムの会員証などには目が行っていない。
「早く見せなさい。逆らうと公務執行妨害で射殺......いや逮捕するわよ!」
この迫力は一体どこから出てくるんだ?......あんな怖い顔で言われたら、誰でも竦み上がるに違いない......やっぱこの人これが天職だ。お、恐ろしい......
「射殺? 逮捕?!......わっ、分かりました。どうぞこっ、こっちです!」
精算途中の客を放り出して、レジ裏の事務所に駆け込む店員。そこまで焦らなくてもいい気がする。
「さぁ、行くわよ」
「了解デス」
二人は互いにアイコンタクトを送ると、ざわめき立つ客の目を他所に事務所の中へと進んで行った。
「こちらです」
事務所の扉を開けると、すぐ正面の机の上に防犯カメラのハードディスク。机の横の棚にはモニターが置かれている。モニターの画面は全部で4分割。レジに1ヵ所。店内売り場に2ヵ所。そしてもう1ヵ所は駐車場を映し出していた。そして駐車場の先には、前面道路の様子が鮮明に映し出されている。
我が予測に誤りなし!
美緒の顔が見る見るうちに紅潮していく。
「よしっ、お前はレジに戻ってよし! ご苦労!」
「はいっ、戻ります!」
店員は美緒に一礼すると、待たせている客の元へ一目散に駆け出して行った。
何なんだ? この一瞬にして出来上がってしまった上下関係は?......美緒さんも美緒さんだけど、この店員もちょっとどうかしている気がするんだけど......
「さぁ、見ましょう。ポールさんお願い」
「分かマシタ。店長が帰ってクル前にやっちゃいマショウ」
ポールは素早く椅子に腰掛けると、ハードディスクの操作を始めた。
「12月24日の17時15時分過ぎデスネ......」
ポールは監視画面から再生画面に映像を切り換えると、時刻を昨日の犯行時間へと巻き戻していく。
「ハイ17時15分デス。ここから見ていきマスカ」
モニター画面の左上には再生時刻が映し出されている。二人は身を乗り出し、食い入るように画面を見詰めた。駐車場には数台の車が停められており、その先に見える幹線道路では、断続的に行き来する車の様子が映し出されている。映像はカラーだ。しかも思いの外、鮮明に映し出されている。
これは結構いけるかも......胸の高まりを緒さえ切れない。
「17時20分......そろそろよ」
「焼鳥屋の信号につかまってるコロデスネ」
ドクン、ドクン......
二人の心臓が高鳴る音が静寂した事務所内に響き渡る。
そろそろ来る!......
やがて正面から一台の黒いワゴン車が画面中央に現れた。その車は信号を右折し、コンビニの前を見事に通過してく。
「!!!」
「!!!」
二人の血圧は一気に急上昇。顔が紅潮を始めた。
「今のだ! ポールさん巻き戻し!」
「了解!」




