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第11話 孤独な戦い
自分の目の前に胡座をかく龍貴なる女......これ程までにはっきりとした二面性を持つ人間をエマは見た事が無かった。
医務室にこの龍貴が入って来た時、エマが強烈に感じたもの......それは他でも無い。背筋が凍るような『殺気』だった。そんじょそこらの人間が出せるようなものでは無い。
そして今目の前に居る龍貴には、そんな『殺気』はまるで感じられない。明らかに別人だ。
この『聖経院』には必ず裏の顔がある。
二つの顔を持つ尼寺......
そして二つの顔を持つ尼の取締役......
『虎穴に入らずんば虎穴を得ず』と言うことわざがある。エマは『聖経院』の裏の顔を暴くべく、虎穴に入り込む覚悟を決めた。そして口を開いた。
「どうか私をここに置いてやって下さい。今日から私は龍貴さんの手足となって命を削ります」
エマの目は爛々と輝いていた。
尻尾を掴んでやる!......
「よしっ、言ったな! 今日からお前はあたしの舎弟だ!」
舎弟?......やっぱ元ヤンだ......
「宜しくお願いします!」
エマは深々と頭を下げた。
この髪の毛よ...... 暫くおさらば。
もうどうにでもなったれ!
やけくそだ!
龍貴、そしてエマが続いて清掃小屋を後にする。エマの孤独な戦いが今正に始まろうとしていた。




