第5話 ヒヨコ
「あなたのご自由に」
麗子はニヤリと笑う。殺し文句だ。
「デハお言葉に甘えて......まずは車カラ」
「存分に」
麗子は運転席から離れて助手席へ。ポールは上着を脱ぎ運転席に腰を落とした。車は一気に幹線道路に躍り出ていく。
ブウォン......!
流星の如く飛び出した黒の稲妻は、一気に更なる南下を始めた。品川を秒速で潜り抜けた車は、更に先へ先へと突き進んでいく。もはやこの先に存在するものと言えば、東京湾のみだった。
「どこへ連れて行って頂けるのかしら?」
「地上の楽園とでも言いまショウカ......」
「地上の楽園......それは楽しみだわ」
いつしか車は人気の無い倉庫街に......信号は視界から消え失せ、羽田空港に離着陸する旅客機が間近に見えてくる。
※ ※ ※
「ヒヨコはターゲットを乗せたまま、予定通り大井の湾岸付近道路に入りました。そろそろです」
「よし、そのまま尾行を続けろ」
「それが......すみません。奴ら気違いみたいに飛ばすもんで一旦見失いました。でも発信機を持たせていますからすぐに追い付きます」
「あんまり近付くんじゃないぞ。あそこら辺は人気の無い道路だ。追尾に気付かれてターゲットに怪しまれてもいかんからな」
「分かってます。ご安心を」
上下黒のスーツで身を固めた細身の男は、カーナビ上で移動を続けるターゲット車を追って倉庫街へと車を進めて行った。
「ヒヨコは旨くやってるようじゃないか?」
シートを極限まで倒し、スナック菓子を頬張りながら助手席の男が呟いた。
「まあ今回は大丈夫だろう。話に寄ると、あのヒヨコは事業に失敗して億単位の借金があるみたいだ。おまけに奥さんが保証人ときてる。若いのに苦労してんな。家族を救う為に是が非でもやり遂げるんじゃないか。そういった意味じゃ、正に俺達は弱者の救世主だよな。感謝して欲しい位だ」
「お前......本当にお目出たい奴だな」
「なにが?」
「金なんて払う訳ねえだろう。死んだ後、遺族に意味不明の大金が振り込まれたらどうする? 不気味がって警察に相談する奴だっているかも知れんぞ。それとも何か? 事前に遺族に説明入れとくのか? どうやって説明するんだ?」




