第4話 試食
麗子は言われるがまま、車の中に身を置いた。
さぁ、楽しみだわ。超楽しみ! どうやって私を殺してくれるの? 樹海の回しもの君!!!
麗子は体の心底から込み上げてくる笑いを必死に堪えていた。
フッ、フッ、フッ......
フッ、フッ、フッ......
しかし、車の外で必死に作業をするポールにその笑い声は聞こえない。ボンネットを開けた向こう側で作業をするポールに麗子の不適な笑顔は見えない。
狐と狸は味方同士なのか? 敵なのか? この章が終わる頃には、流血と共にその答えも出るであろう......
「ちょっとエンジンかけてもらえマスカ」
立て掛けられたボンネットの横からポールが顔を出し一言。麗子は即座に頬の肉を引き締める。
怪しい笑い顔を見られたかも?......
まあ、別にいい......見られたところで。
「解りました......」
麗子は何食わぬ顔でキーを回す。すると......
ブルルン......!
聞き慣れたエンジン音が、直ぐ様聴覚を支配し始めた。
いつ聞いても心地よい重低音だこと......
その音は、無駄金を使う事に美徳を感じるブルジョア熟女にこの上もない満足感を与えた。
「あらっ、かかったみたいね」
「電気系のプラグが外れたみたいデス。もう大丈夫でショウ」
ハーフ男は冷たい風が吹き付ける中、額に浮かんだ汗を拭いながら詳細を報告した。
いくら真冬とは言え、それまで高回転で回り続けていたエンジン。吹き付ける冷風も、そこにやってくれば瞬く間に熱風に早変わりしていく。
「物凄い立派なエンジンです。さぞかし速いんでショウネ」
ハーフ男はボンネットを閉めながら問い掛けた。
「ご自身で試食されたらどう?」
麗子はさらりと言葉を重ねる。よくそんな誘い文句がすんなり出るものだ。正に芸術的と言えた。
「私が試食するのは車デスカ? それとも貴方デスカ?」
熟女キラーも負けてはいない。そんな発言を躊躇無く言えるこの男も並みでは無かった。




