第7話 訓戒
「きっ、気を付けます......」
未来は顔を真っ赤にして、ばつの悪そうな苦笑いを浮かべた。
「未来!!!」
突如美緒は雷に匹敵する程の雄叫びを上げる。地響きが伝わって来るような迫力だ。
「はっ、はい!!!」
未来は全身に電撃が走ったかのように、竦み上がってしまう。
「お前......分かってるな。自分のした事を」
「す、すみません。こんな如何わしい雑誌を持ち込んでしまって......」
「バカヤロー! お前がどんな雑誌読もうと、そんなのはこっちに関係ない。あたしが言ってるのは、その雑誌がどうしてこの家に有るのかって聞いてんだよ。答えろ!」
「はい......す、すみません......コンビニで......さっき買ってきました......」
「テメーッ!」
美緒は突如目の前に立ちはだかると、未来の髪の毛を鷲掴みにした。
「うわぁ、ごめんなさい!」
「ちょ、ちょっと美緒さん!」
「お母さん怖い!」
美緒の顔は、阿修羅の如く真っ赤に燃えたぎっていた。まるで煮え立つ鍋のようだ。
「家から絶対に出るなとあれ程言ったのに、何でお前はそんな事も守れないんだ! 外に一歩出たら、其処らじゅう防犯カメラだらけだ。相手は警察とも繋がってるんだぞ! しかもコンビニだって? ......呆れてものが言えないよ!」
それ以上引っ張ったら髪の毛が全部抜ける......それ程の勢いと力で美緒は未来の軽率な行動を正した。
「おい、青年! もう絶対家から出たりしないよな? 美緒さんの前で今すぐ誓え。早くしろ......ちょっと美緒さんもほら......」
さすがの圭一も極神島の血を引く美緒の剣幕にはたじたじだ。成す術がない。
「圭一さんは黙ってて......いいか、未来よく聞け! 私達は家族を巻き込んでお前の命を守っている。お前がフラフラ出歩いて殺されるのは勝手だが、もしお前が尾行されてこの家に押し込まれたら、あたしも圭一さんもそれから.....ももの命だって危険に曝される事になるんだぞ。お前......そこまで分かってるのか? ほんとにどうなんだ? もう手引いたっていいんだぞ!」
美緒は決して本気で怒っている訳ではなかった。勿論未来を見捨てるような事も考えていない。警戒心を緩めているつもりは無くとも、平穏な日々が続くと、人はどうしても『油断』という落とし穴にはまってしまう。食うか食われるかの局面においては、先に油断した方が、確実に食われてしまう。美緒は未来に身をもってそれを理解して欲しかった。ただそれだけの事だった。
「お母さん、もう許してあげて。お兄ちゃん可哀想だよ」
ももは今にも泣きそうな顔をして必死に未来を庇った。そんなももをじっと見詰める未来......こんな無邪気な少女の命が危険にさらされてるなんて......
自分は何て軽率な行動をとってしまったんだろう......自分の行動を悔やまずにいられなかった。
「申し訳ございませんでした! 自分の思慮が浅すぎました。金輪際、絶対に全ての指示に従います。どうか、どうか見捨てないで下さい!」
未来は正座し、頭を地に擦り付けた。気付けば、『もも』も未来の横で正座し、頭を地に擦り付けている。もっとも未来の真似をしているだけで、土下座の意味を理解している訳ではないが......
「いいか......今度、指示に従わなかったら、私達はこの一件から手を引く。それだけは覚悟しておいてくれ......わかればいい」
美緒はそういい放つと、未来に背を向けた。
その時だ。突如、美緒と圭一のスマホが振動を始めた。
ブルルルル......
ブルルルル......




