第6話 茨の道
※ ※ ※
ここで一つだけ補足しておく。
売店の店主は、尼さん達が来るようになってから自殺者の数が減ったと言っていた。確かに発見される遺体の数は減っている。そういった意味では、店主の発言はあながち間違っているとは言えない。
しかし発見される遺体の数が減ったとは言え、ここを訪れた自殺志願者が皆無事に生還しているかと言うとそれはまた別の話。そこだけは混同しないよう願いたい。あくまでも補足の話ではあるが......
一方、珠の元を後にしたポールはと言うと、
ここが樹海の入口か......そんな入口の手前で一旦足を止める。『生と死の狭間の世界』そんな不気味な言葉が頭を過ってならない。
それまで僅かながらに顔を見せていた太陽も、いつの間にやらその姿を隠し、眼前に広がる深い森はブラックホールと化していた。
一度吸い込まれたら二度と出て来れない......こんな夜更けにここを訪れる者が居たとしたら、誰しもがそのような錯覚に囚われるであろう。決して心霊体質とは言えないポールも、その例外では無かった。
明らかに先程までとは違う空気。科学では説明出来ない何かが作用しているのかも知れない。
「こんな所で怖じ気付いてどうする! さぁ、行くぞ!」
ポールは邪気を払うかのように小さく声を上げると、鉛のように重かった足を執念で前に踏み出した。
一応遊歩道になってるのか......ポールはライトを灯し、続いて二歩、三歩と突き進んで行った。
ザッ、ザッ、ザッ......
ザッ、ザッ、ザッ......
静寂しきった妖気漂う世界に響き渡る足音は、自分の足が繰り出す一対のみ。耳を凝らしても他に足音は聞こえない。
ザッ、ザッ、ザッ......
ザッ、ザッ、ザッ......
ポールは生い茂った木々の合間を掻い潜りながら、遊歩道を着実に奥へと進んでいく。そして樹海の入口から凡そ500メートルくらい突き進んだ頃だろうか。ポールは突如立ち止まった。
その場所は他でもない。未来が遊歩道からコースを外れた正にその場所だった。ここからが正に茨の道の始まりだ。




