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傷だらけのGOD 樹海の怪 地獄のサバイバル!  作者: 吉田真一
第1章 追い詰められて
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帝徳ホテル

1日2回、0時と18時に更新です。宜しくお願い致します!

挿絵(By みてみん)


【目次】


 1章 追い詰められて

 2章 フラッシュバック

 3章 女神

 4章 オーラ

 5章 BAR SHARK

 6章 深すぎる森

 7章 夕やけ

 8章 銃殺

 9章 尼寺

10章 死に人なる者

11章 追跡

12章 アマゾネス

13章 白昼の悪夢

14章 マンタ洞窟

15章 四神

16章 仮面

17章 玄武

18章 獅虎豹鷹 朱雀

19章 コピー

20章 隠者の村

21章 Dr.八雲

22章 珠の結末

23章 FERLD

24章 焼却炉

25章 絶望への道程

26章 サバイバル

27章 最強兵士

28章 白虎VS玄武

29章 野望

30章 トロイの結末

31章 PATRIOT

32章 10 minutes

最終章 神と悪魔 



挿絵(By みてみん)




「どこに逃げたんだ?!」


「まだこのホテルにいるはずた。探せ!」


従業員にしては、少しばかり体も顔も厳つく見える黒服集団。


スーツの内側に潜んだ鋼のような筋骨......


凡そサービス業には向かない鋭い目付き......


彼らを何かに例えるとしたら『獲物を追い詰める狩人』そんな代名詞が一番しっくりとくる。


そして四方に分散し、ひたすら駆け回る。



ダッ、ダッ、ダッ......


ダッ、ダッ、ダッ......


静寂しきったホテル内の至るところに、複数の足音が響き渡った。


ダッ、ダッ、ダッ......


ダッ、ダッ、ダッ......


その足音は地を伝い、壁にこだまする。やがてその音は、非常階段の片隅に身を潜めるタキシード姿の青年の耳にも確実に届いていった。


「うっ、うっ、うっ......なんでこんな事になっちまったんだ。......くっ、くっそう。やっぱ......やっぱ死ぬべきだったんだ」


唇は痙攣しているかのようにワナワナと震え、嗚咽するかのようなその口調は、追い詰められた人間の典型的症状とも言えよう。まだあどけなさが残るその青年は、ガクガクと震える膝にムチを打ち、よろけながらも何とか立ち上がる。額からは病的とも言える大量の油汗が滝のごとく頬を流れ落ち、血の気を失ったその顔は鬼気迫るものがあった。


するとよろけた拍子に、ズボンの右ポケットから半分だけ顔を出していたずっしりと重い個体が、見事に床へと転げ落ちた。


ガシャン......ガタガタ......


さして大きいとは言えないその音も、内階段ともなると遥か下階まで、まるでやまびこのように広がっていく。


「!!! 何か音がしたぞ。上だ!」


身を隠すその場所から遥か下方。突如沈黙を破る怒号が響き渡った。


「うわぁ、しまった!」


ダッ、ダッ、ダッ!


ダッ、ダッ、ダッ!


散らばっていた複数の足音のベクトルが、一斉に立ち尽くすその青年に合わさった。


青年は黒光りするその個体を即座に拾い上げ、目を覚ましたかのように、階段を掛け上がっていく。青年が拾い上げたもの......なんとそれは『銃』だった。


彼はなぜ狩人逹に追われているのか?......現時点でそれは分からない。ただ『銃』などと言うもの、一介の青年が気軽に持ち歩けるような代物ではない。これから起こる惨劇を予告するかのように、怪しい空気が辺りに立ち込めていく......


  ※   ※   ※   ※   ※   ※


  ※   ※   ※   ※   ※   ※


明治時代から続く老舗中の老舗『帝徳ホテル』。由緒ある当該ホテルの非常階段で、そんな血生臭い騒動が起こる30分も前の事......2階の『金色の間』では、きらびやかなイベントがいよいよクライマックスを迎えようとしていた。


入口の頭上には、『青島麗子 生誕60周年記念ディナーショー』そんな横断幕が、スポットライトに照らし出されている。大広間のカーテンはその全てが開放され、窓外には、小雪混じりの皇居の景色が、訪れる人々の心を和ませていた。


外ではコートの襟を立て、ポケットに両手を突っ込んで駅へと小走りに進む人も多いこの季節。『金色の間』では、ショーの主役である『青島麗子』とその生誕六十周年を祝うゲスト達の放つ熱気が、飛び交う龍神のごとく、会場内を包み込んでいた。


この日の為に用意したシャンソン全20曲を、トレードマークとも言える重厚なハスキーボイスで見事歌い上げた青島麗子の顔は、充実感がみなぎり、吹き出した汗すら、信者とも言えるゲストには、輝くダイヤのように見えたに違いない。


「ブラボー!」


「ブラボー!」


それぞれの円卓を囲んだゲスト達は、皆席を立ち、喝采の声を上げる。


「ブラボー!」


「ブラボー!」


「ホラッ、二人もタッテ! いつまで食べてるんデスカ!」


感激に目を潤ませた若干二十歳そこそこのハーフ顔の青年は、ステージに背を向けて未だ黙々と食べ続けるこれまた二十代の男女に起立を即した。


全く興味なし......言葉には出さずも、態度が露骨にそう語っている連れの男女は、互いに顔を見合わせる。


「だってお前これディナーショーだろ。食べてて何が悪いんだ」


口を横にひん曲げながら持論を披露したのは、左の目蓋に大きな傷の入った連れの色男だった。一応正装はまとっているものの、『アンチ社交場』のオーラを盛大にまきちらしている。


「ショーが始まるマエに食べ終えるのが、ディナーショーなんデス! さぁ、ホラ立って、早くホラ!」


蔑むような眼差しで、二人を見下ろす長身のハーフ男は、再び吠えまくる。



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