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幽怪百物語  作者: 背戸山葵
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第八十二話 門番

 五条さんの通っていた中学校には門番がいたそうだ。

 守衛さんとか警備員とか見守りの先生ではない。ただ、そいつのやっていることが門番めいているから、五条さんは門番と呼んでいるのである。

 門番は黒い袈裟をまとった顔が物凄くいかつい巨漢だそうで、身長は二メートルをゆうにこえ、肩幅はラガーマンよりも広い。肌は日に焼けて赤らんでいて、質感は陶器のよう。髭の濃く目玉の大きな顔は、某無双ゲーの張飛翼徳にそっくりなのだそうだ。

 門番は普段は正門の横に立っている。通学や下校の時間だけでなく、授業中や夜遅くでもそこに立っているから、おそらくずっと立ち続けているのだろう。

 生徒たちが通っても微動だにせず、何も言わない。

 しかし、学校の外からよくないものが来ると、毅然とした態度で追い返したり、時にはその巨大な拳を振るって叩き潰してしまう。

 一度は生徒の背中に憑いてきた霊を両手で掴んで、おにぎりを握るみたいに小さく圧縮してから自分の胸の辺りに押し込んでしまったこともあるという。

 五条さんの周りでは五条さん以外に門番に気が付いているものはいなかった。

 五条さんは好奇心もあって、誰も周りにいない時を見計らって、門番に挨拶をしたり、「何してるんですか」「あなたは何者なんですか」と訊ねてみた。

 何度か試みたものの、無言の一瞥が返ってくるばかりだった。

 それでも、一瞥が返ってくるだけに、こちらのことを認識してはいるようだ。

 初めに見た時はヤバイものだと思ったが、次第に五条さんは門番の存在に慣れていき、ほとんど毎日顔を突き合わせることもあって親しみすら覚えた。

 そんなこともあって、学校を卒業する日に、今までありがとうございましたと挨拶すると、五条さんを見て、小さくうなずいてくれたそうだ。

 五条さんが学校を卒業して十年以上が過ぎたが、今でも中学の前を通ると、ただ黙って立ち尽くす門番の姿を見ることができるのだという。


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