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幽怪百物語  作者: 背戸山葵
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第七十話 ゲームが壊れた


 今から二十年ほど前、子供の間ではモンスターを育てて戦わせるゲームが大流行していた。私も当時、ポケットワンダーランドの付くメジャーなものからタイムネットと付くマイナーなものまで色んなソフトを遊んだ記憶がある。

 私の同級生だった松浦くんはその当時、そういった育成ゲーに人一倍ハマっていた、というかやり込んでいた。個体の厳選をしたり技の構築などをしっかり考えたり、表に表示されない努力値という数値を細かく振り分けたりして――最近では誰もが当たり前のように行っており、最適な育成も簡単になったようだが、当時私の周りでは松浦くんしかやっていなかった――最強のモンスターを育て上げていた。仲間内では当たり前のように負け知らず、大人も参加するような大会にも出場するような名トレーナーだった。

 そんな松浦くんが家に帰っていつものようにモンスターを育てていた時だ。

 何の前触れもなく、グワアアアアン……と部屋全体から割れ鐘をついたような不快な音が鳴り響き、強烈な頭痛に見舞われた。

 携帯ゲーム機の液晶画面を見ると、数字や文字がめちゃくちゃに画面に走っていて、調子の狂ったBGMを奏でている。

「壊れたのかな?」

 初めての現象に、頭痛を我慢しながらボタンを押してみたが、画面の文字が意味不明なものから意味不明なものへと変わるだけだった。

 松浦くんは強烈な吐き気を覚えて、トイレに直行し、胃の中に入っていたものをほとんど吐き出してしまった。

 しばらくして落ち着くと、頭痛は消え、部屋に戻っても音はしなかったそうだ。

 ただ、部屋の中はめちゃくちゃで、壁紙がところどころめくれており、ジュースの入っていたコップはひっくり返り、地震があったみたいに本棚の漫画が床に広がっていた。

 ゲーム機の電源は切れており、つけて見ると、

「うううううううううううううううううううううううううううううう……」

 と、うの文字が延々と流れ続けるばかりだった。

 気味が悪くなって、けれども自分の育てたモンスターがどうなったのか心配で、電源を切ったり入れたりを繰り返していると、やがてソフトは通常どおりに起動したのだが、データが全て初期化されていたのだという。

「今思えば気味の悪い話だけどさ、当時は怖いとかそういうのよりもデータが消えちゃったことの方がショックでさー、泣いたよね」

 今でも松浦くんはそのシリーズの最新作を本気で遊んでいるという。


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