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幽怪百物語  作者: 背戸山葵
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第六十話 キューピットさん

 これも、こっくりさんの系譜の話だ。

 佐久間さん中学で流行ったのはこっくりさん、ではなくキューピッドさん、というものだった。これは、こっくりさん禁止令が出た後に普及した亜種のようなもので、危険なこっくりさんとは違い、キューピッドさんという良い存在が下りてきて占いをしたり質問に答えてくれたりする、というものだ。

 その、キューピッドさんを毎日のようにやっているHさんという同級生がいた。

 奇妙なことにその子はキューピッドさんに使用した紙をすべてバインダーに保管し、10円玉もコインケースに集めているのである。

 佐久間さんは一度それを見せてもらったことがある。

 あいうえおと数字、YesとNo、それから十字架の書かれた紙が何十枚とまとめられている様はかなり偏執的なものを感じさせたという。

 それらはすべて、Hさんが書いたものだった。

 こっくりさんなどのルールとして、使ったものの処分の方法はいくつかパターンがある。

 使った紙は捨てなければならない。

 破って燃やさないといけない。

 決められた数にちぎらねばならない。

 絶対に捨ててはならない。

 何度も繰り返し使用してもいい。

 十円玉はすぐに使わなければならない。

 使ってはいけない。

 などである。

 捨てれば呪われるとか、持っていれば呪われるとか理由も様々だ。

 佐久間さんはHさんになぜ紙を集めているのか訊ねてみた。

 すると、Hさんは、

「キューピッドさんに集めろって言われたの」

 どうやら、初めにキュービッドさんを呼び出した時に、処分の方法が気になったHさんは直接訊ねてみたのだそうだ。すると、

「あ・つ・め・て」

「1・0・0」

 と指示されたそうだ。

 Hさんは百枚集めると願いが叶うのだと嬉しそうに笑っていた。

 おもちゃの缶詰のようだと思ったが、佐久間さんはキューピッドさんが言ったのか、本人がそう思い込んでいるのかは聞かなかった。

 それから、しばらくしてHさんの家が焼けた。

 夜中に火の手が上がり、Hさんだけが亡くなったそうだ。

 出火の原因は不明で、火元はHさんの部屋だったという。

 佐久間さんは、もしかしたらキュービッドさんの紙が原因ではないかと思ったそうだ。

「そういった遊びに使ったものでも集めすぎると、よくないことが起こるのかもしれませんね」

 私がそう述べると、佐久間さんは、

「そうかもしれませんね。でも、私はそうじゃないかもしれないって思ってて……」

 と、言う。

「Hさんのご両親は仲が良くなかったんですよね。離婚寸前だったみたいで。夜中に大声で怒鳴り合ってて、寝られないし怖いって、Hさんもよく友達に愚痴をこぼしたり、キュービッドさんに相談してたりしたんですよね。だから、キュービッドさんに何かをお願いして、それが叶ってしまったんじゃないかって」

「死にたい、とかそういうことでしょうか?」

「そういうことをお願いする子じゃないから……両親に仲良くなって欲しいとかそういうことじゃないかなって。まあ、私の想像ですけど」

 Hさんの死後、両親の不仲は解消されたのだそうだ。


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