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幽怪百物語  作者: 背戸山葵
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第五十七話 アヒル顔の男

 プログラマーの二宮さんは子供の頃から色々と見えてしまう体質の人だった。

 以前勤めていた会社は恵比寿にあり、仕事も忙しく終業はかなり遅い時間になることもそれなりにあった。

 その日も仕事が片付いたのは二十一時頃で、二宮さんは疲れた体を引きずって郊外にある自宅を目指して電車に乗った。

 乗り替えのために高田馬場で一度電車を降りた。異なる線の電車に乗るために、一度駅の外に出なければならなかった。

 いつも通り過ぎる商業ビルの前に、紙袋を大事そうに抱えたサラリーマン風の男がいた。

 道の真ん中で、何かを探しているようにキョロキョロと辺りを見回している。

 なんか気味悪いやつだな。

 そう思った二宮さんは男を避けて通り過ぎようとした。

 ふいに、男がこちらを向いた。

 顔を見た瞬間、ゾッと寒気を覚えた。

 人間の顔じゃない。

 顔のパーツが異様なまでに中央に寄っていて、引っ付かんばかりの両目には瞳はなく、ただ木の洞のような黒い穴があるだけだ。

 口はアヒルのくちばしのように扁平で、にゅっと前に突き出している。

 そんな顔の人間が、いるわけがない。

 だが、二宮さん以外の人は誰も男を気にもせずその横を通り過ぎていく。

「この世のモノではないんだ」

 そう直感した二宮さんは、なるべく目を合わせないようにして、他の人と同様、男を無視して駅に急いだ。

「こいつじゃないな」

 男は異様な顔をしかめて小さく呟き、また辺りをキョロキョロし始めた。

 何を探しているのか、紙袋の中身はなんなのかそれはわかりようがない。しかし、ものすごく不吉な感じがしたという。

 その晩JRの山手線高田馬場駅で、人身事故があったそうだ。


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