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幽怪百物語  作者: 背戸山葵
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第五十六話 駅の子供

 高校時代の同級生で、阪急電車の駅員として働くことになった奥崎くんから聞いた話だ。

 駅員には一昼夜通して勤務する泊り番というのがあるのだが、その泊り番の際に時々奇妙なものを見ることがあった。

 夜中、終電もなくなった後は窓口を締めたり、券売機の締め切りをしたり、細かな業務を行うのだが、時々駅内で小学校低学年くらいの男の子を見かけることがあるのだという。

 大抵は視界の端の方に映って、眼を向けると、角に入ったり影に隠れたりする。

 だが、追いかけてみると誰もいない。

 そんなことが多々あった。

 夜遅くにしかも、駅の中にいるのはおかしいから、目の錯覚かなとも思ったのだが、それにしては同じような場所でばかり男の子を見るのだ。

 それは、決まってコインロッカーの近くなのである。

 気になって、ある晩同じように遅番をしていた先輩の駅員に、夜に男の子見ることありませんか? と訊ねてみた。

 すると、先輩はこんなことを話してくれた。

 昔、赤ん坊の遺棄事件がこの駅であった。

 これは新聞にも載った話だそうで、簡単にまとめると、近所の高校の女の子が、隠れて産んで、けれど育てられずにロッカーに入れた、そんな内容だ。

 泣き声を上げられないほど衰弱していたようで、発見された時には赤ん坊は亡くなっていたという。

 それから、時々遅番をする駅員の中からロッカーから赤ん坊が泣く声を聴いたと訴えが出るようになった。先輩も、その声は数えるほどだが耳にしたことがあるそうだ。

 そこまで聞いてから、奥崎くんは自分が見たものは赤ちゃんではなく男の子だと先輩に言った。まったく別の話ではないかと。

 だが、先輩はバツが悪そうに頭を掻きながら、

「いや、昔は赤ん坊だったんだけどな、今は男の子になったんだよ」

 そう語ったそうだ。

 つまり、赤ん坊から小学校低学年くらいまで成長しているのだという。

「こんなことって、あるもんかな?」

 奥崎くんは、未だに納得できていない風にそう語っていた。

 今でもその男の子は成長し続けているのだろうか。

 赤ん坊遺棄事件があったのは、その話を聞いてから二十年も前だそうだ。


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