第四十九話 見つかった死体
物件の管理をしている鳥井さんの話である。
管理業者の仕事の中には隣人トラブルや雨漏りといった入居者からのクレームがあれば、その内容に応じて対応をする、というものがある。そのクレームの中には当然と言えば当然だが、入居者の死にまつわるものもあるという。
ある日、管理を請け負っているマンションの住民から「隣室から臭いがする、郵便ポストが溢れている」から対応してほしいと連絡が入った。
住人はKさんという六十代の気のよさそうな独り身の男性で、心臓に疾患を持っていた。
これはもう確実だな。覚悟を決めて部屋の確認に行った。
扉を開けた瞬間、生暖かい空気と共に、死臭というのか、生ゴミのような端的に言えば腐臭のようなものが鼻をついた。
Kさんの遺体はキッチンとトイレの境に倒れており、顔は黒く変色し、どんな顔をしていたかわからなくなるくらい崩れてしまっていた。
見慣れている、とは言わないまでも腐った遺体を見たことは初めてではなかったが、気分のいいものではない。鳥井さんは遺体を確認するとすぐにベランダに出てそこで警察と病院に連絡を入れた。死体とわかっていても、救急車を呼ばなければならないそうだ。
到着を待つ間、胸のムカつきを誤魔化すためにベランダの手すりによりかかって煙草を吸っていると、ふいに近くに人の気配を感じた。
ふと横を見ると、Kさんが立っている。契約更新の際に何度か顔を突き合わせているから顔は覚えている。パジャマを着て、申し訳なさそうに鳥井さんをじっと見つめていた。
鳥井さんが驚いて言葉を失っていると、
「お金、払えんままでごめんね」
小さく頭を下げる。
「え、あ、はい」
咄嗟にそう答えて、パッと部屋の方を見る。
遺体は依然としてそこにある。
では、死んだのはKさんとは別人なのだろうか?
そんな馬鹿な、そう思い再びKさんの方を見ると、すでに姿はなかった。
その時になって、
「あ、見ちゃったんだ」
と思い至ったという。
お金、というのはKさんが滞納していた家賃のことだろうと鳥井さんは語っていた。二月ほど支払われていなかったのだが、Kさんの事情を考慮して猶予していたそうだ。
その後、警察の検死の後、部屋は業者の手で清掃されたのだが、まだ黒い染みは残ったままだという。




