第四十八話 おめかしする幽霊
須崎さんが大学生だった頃の話だ。
その時期は古いアパートに一人暮らしをしていたのだが、そこが、どうやら出る物件だったらしい。
夜、ふと目を覚ますと体が動かない、金縛りになることがしょっちゅうあったそうだ。
そのまま、ぼんやりと天井を見上げていると、寝ている自分の身体の上に色白の髪の長い女が浮いている。
それは現れたというよりも、女は最初からそこにいたのだが、何かピントというか波長のようなものが合った瞬間、須崎さんの方で気が付いた、という感じなのだそうだ。
最初の方こそ驚いたものの、女が何かをしてくるというわけではなく、遭遇が両手で数えられるくらいの回数になれば、流石に慣れてくるらしい。
金縛りにあっても、ああ、またか、くらいにしか思わなくなってきた。
そんな頃だ。
ふと、夜中に目が覚める。
やはりしばらくすると、身体の上に女がいる。
と、いつもと女の様子が違うことに気が付いた。
睫毛がくっきりしていて、口紅が濃い。そんな風に見えた。
須崎さんは何気なしに、
「今日、化粧濃いですね」
そう口にしてしまった。
その途端、女は怒りの形相で、首を絞めてきた。
助けてくれ。叫ぼうとしたが声が出ない。
苦しさのあまり気を失った。それでも、次の日は無事に起きられた。
鏡で確認してみると、細い指の後がついていた。
しかし、その日を境に、女は現れなくなったそうだ。




