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第四十五話 挟まっている
去年の4月のことだ。
作家業などというものをやっていると、生活リズムは夜型になりがちでその夜も三時ごろまで一人で黙々と作業をしていた 不意に炭酸が飲みたくなった私は、仕事がひと段落ついてから、薬局の向こうの自販機まで足を運んだ。
真っ暗な夜道で誰もいない夜道で、自販機の光はやけに目立った。
二つ並んだ白い自販機が、ブウゥン、と音を立てている。
財布から小銭を取り出し、目的の黄色い缶のボタンを押そうとして、ふと手が止まった。
視線を感じた。自販機からだ。
すこし顔を横に向けると、誰かと目が合った。
二つ並んだ自販機の間に20センチくらいの細い――というよりも薄い?――人が挟まっていた。
細すぎて顔立ちはわからないが、男だと直感した。
顔のパーツはどれも異様に小さく、中央にぎゅっと寄っていたが、二つの真黒な目で、私の方をじっと見ていた。。
私がぎょっとして、
「えっ」
と言って後ずさると、細い男は、
「あ、すいません」
小さく頭を下げて、しゅるっ、と隙間の奥の方に引っ込んで姿を消した。
自販機の裏は壁だ。
横に回って隙間を覗いてみたが、何もいなかった。




