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幽怪百物語  作者: 背戸山葵
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第三十八話 土の中から

 泉さんはトンネル工事の仕事をしていた時の話を聞かせてくれた。

 トンネル工事の前の地質調査などをする際には、本格的なボーリング作業に移る前に、重機で周囲の土をさらえるのだそうだが、その時に掘り返した土には様々な異物が混じるそうだ。

 大抵は空き缶やビニールなどのゴミが出てくるだけだ。土砂置き場に移す際にそういうものを見つけた時には取り除くことになっていた。

 ふと、泉さんが何気なく土砂の方をみると、異様な物が目に留まった。

 こんもりと積まれた茶色い山から二本の腕が突き出ている。

 肌の白い、やせ細った腕だ。

 誰かが埋まっている。咄嗟にそう思った泉さんは、用具を手に掘り返そうとした。

「おい、何かあったんか?」

 先輩の作業員が声をかけてきた。

「えっと、今ここに人が……」

 振り向いて、再び土砂置き場に視線を移すと、手は消えていた。

「あれ、確かに人の手ぇあったんすけど」

 先輩は泉さんの顔を見て、ふーん、と唸った後、

「じゃあ、ちょい掘ってみるか」

 自分もスコップを手に土砂を掘り返してくれたという。

 土の山の中からは、人骨が出てきたという。

 腕の骨が丁度二本と手の骨のような細かい欠片がいくつか。

 いつの年代の物かはその場にいた先輩も泉さんもわからなかった。

 探せば他の部位も出てくるかもしれない。

 だが、先輩は骨を掘り返した穴に投げ込んで、再び埋めようとする。

「え、これ警察とかに言わないんですか?」

「そんなことしたら、このあたり全部ひっくり返して探さなきゃいけないし、工事が遅れるだろ。こういうのは無視した方がいいんだよ」

 先輩は骨を埋めながら何でもないように言った。文化財のようなものや昔の墓の跡なんかが出てきてしまった場合でも、ほとんどの場合現場の作業員が見なかったことにしてしまうらしい。

 全国のこういった作業現場では同じように見つけられても放置される死体は結構あるのかもしれないと、泉さんは語っていた。



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