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幽怪百物語  作者: 背戸山葵
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第三十三話 サマーキャンプ

 前回の話にも出てきた高橋さんは母子家庭で育った。高校へは片親や両親を亡くした人を支援する非営利の財団法人から奨学金を受けて通っていたのだが、そこの支援の一環で夏休みにサマーキャンプに行くことになった。

 レクリエーションを通じて親を亡くした子や家庭環境に問題のある子同士で交流を深め、お互いに支え合えるようにするのが目的なのだそうで、班ごとに分かれて浜辺でバーベキューをしたり、キャンプファイアーを囲んで歌を歌ったり、自分の境遇を語って聞かせたりしたという。

 つつがなく一通りのプログラムが終わり、宿泊施設に戻ることになった。

 その帰りがてら、最後のレクリエーションとして肝試しが行われた。

 ボランティアで参加している大学生のお兄さんが、その海にまつわる怪談を披露した後、班ごとに分かれて決められたルートを進むただそれだけだ。

 しかし、周囲には街灯はなく、手渡された懐中電灯は各班一本だけで、暗い夜道を進むのはそこそこに怖かった。

 道すがらの各箇所でボランティアの人がお化けの格好をしたり、音を鳴らしたり、竿に吊るした火の玉を見せたりして驚かせてくる。

 子供だましではあるが、同年代の班の人と打ち解けていたから、そんなくだらないものでも以外に楽しめた。

 ふいに高橋さんは道すがらにある学校の方に視線を奪われた。

 何かが光っている。

 校舎と校舎をつなぐ、渡り廊下だろうか。その辺りが妙に明るい。

 蛍光灯や投光器の明かりというよりも、廊下自体が自ずから光っている、そんな感じだった。じっと目を凝らして見ていると、渡り廊下に白いワンピースを着た女の子がいる。背格好から中学生くらいに見えた。その子が、こっちを見て手を振っている。手には赤い花のようなものが一輪握られている。

 なんだろうあの子、気味悪いな。どうやってあれ、光らせてるんだろう?

 奇妙ではあったが、あまりにはっきりしていたために、高橋さんは仕掛けの一つなのだろうと片付け、班の仲間についてさっさと先へ進んだという。

 肝試しが終わり、部屋についてから班のメンバーは大学生のボランティアの人の脅かし方が古典的で笑いそうになったとか、かつらがズレてておかしかったとかそういう話題になった。

 高橋さんは、

「だけど、あの学校のところの女の子はちょっと怖くなかった?」

 と、切り出してみた。

「え? 学校にはなにもなかっただろ」

 一緒にそれを見た、と思っていた班の全員が見ていないと言う。光る渡り廊下のことを出してみたが、そんなものは見ていない、と誰もが口をそろえて言う。

 そこで高橋さんは自分の見たものがボランティアの仕掛けではない、ということにようやく気が付いて、急に寒気がしたという。


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