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第十七話 腕
若い頃色んな仕事をしていたという佐々木さんが、以前に働いていた工場で起こった奇妙な死亡事故のことを語ってくれた。
古い畳などを処分するための破砕機を点検中、Tくんという大学生が腕を切断するという事故があった。機械の外にいたRさんという男性は機械が突然動き出したと証言し、その結果、機械の誤作動による事故として処理され、地元の新聞に小さく記事が載っただけに終わった。
しばらくして、Rさんが件の破砕機のすぐそばで亡くなっているのが見つかった。
死亡したのは夜の間らしく、出勤してきた工場長が遺体を見つけた時には、すでに死後硬直が始まっていた。
死因は窒息死だった。
Rさんの首にはくっきりと指の後が残っており、首が折れるほど強い力で締め付けられていたそうだ。
そのため、殺人事件として捜査されたのだが、ほどなくして警察は方針を変え、最終的には自殺として片づけられた。
これはあくまで噂でしかないけれど、と前置きをして、佐々木さんは当時なぜ地元の警察が自殺として処理したのかについて話してくれた。
Rさんの遺体の首の締め痕からは当然指紋が発見された。
犯人を特定するのにこれ以上ない有力な証拠である。
だが、その指紋が一致したのは、亡くなったはずのTさんだったそうだ。




