古き友との邂逅。
昨日来週投稿といったような気がするが、そんなことは関係なく投稿します。
筆が乗ってしまったのでしょうがない。
まさか、覇道将軍のお披露目の理由が「勇者が完全に人間の味方であることの証明」のためだとは思わなかった。
と、いうか、見ただけで威圧感で何もできなくなったって、逆にトラウマ体験なのではないだろうか。
……まあいいや、どうせ俺が出張ることになるのは魔王クラスの異変が起きたときだけだ。他人がどう思おうが、あんまり関係な……いや、ハーレム作るのには関係あるか。一応愛想くらいは良くしておこう。
というか、正直皆が威圧されたのって、俺の装備も原因だと思う。総ミスリル製の全身鎧に、神の鉄が使われた聖剣”リーデスアンサー”。それに、聖国より下賜された円盾”宝盾ミスデュラム”この三つの装備は俺の威圧感を5割増しくらいにしているに違いない。
何しろ全身鎧は非常に厳ついし、聖剣はなんか近寄りがたいオーラ的なのを発したり、実際光ったりしてるし、盾は円盾のくせに俺の体の3分の2くらいの大きさがある。
盾の取り回しの問題は、いざとなったら盾を投げ捨てても耐えきれる俺だから問題ない。が、盾の表面にもいくつか槍上の突起があり、相手を威嚇していて非常に威圧的なフォルムとなっている。
うん。とりあえずハーレム要員を探すときは全部外して地味な服装で行くことにしよう。俺はそう決意した。
と、言うわけで俺は城に用意されている俺の自室に鎧と剣と盾を置いて、出かけることにした。現在の装備は、皮のジャケットにパンツ、それに羽根のついた帽子、更に濃い赤をしたマントだ。本来旅中での防寒として使うものなので、マントの必要性はないのだが、お洒落なのでよく着ている。
鏡で見ると、なかなか似合っている。自分で言うのもなんだが、端整な顔をしているので物語に出てくる優雅な吟遊詩人を彷彿とさせる出で立ちだ。
俺は自信を持って、街に繰り出した。……一応言っておくが、ハーレム要員探しではない。もちろん片手間で探すが、そう簡単に見つかるとは思っていない。
この街は、俺が初めてやってきた街。冒険の出発点なのだ。だからこそ、行くべき場所があった。
俺は目的地に向かって進んでいった。……何やらこちらを見てぎょっとしたような顔をして逃げていく人々の姿が見えるが、気のせいだろう。だって着替えているのだ。威圧感などないはずだ。
そう自分に言い聞かせながら俺は目的の場所まで足を進める。
そして、目的の場所が見えてきた時、突如俺の後方に人の気配がした。とっさに振り上げた手刀が、背後にいた女性の首筋1センチ前で止まる。
「おー。いい反応するね。流石勇者様、あのひよっこがよくぞここまで成長したもんさね」
「デネボラさん!!」
その女性は、身体全体を覆うような黒スーツの上から、純白の半そでを着ているような恰好をした女性だった。身のこなしは直前まで俺に気配を悟らせなかったことからも分かるように見事の一言だ。
デネボラ。この街に住むベテランシーフであり、そして、俺が初めて組んだパーティのパーティリーダーでもある人だった。
俺は、デネボラに誘導されるように目的地、冒険者ギルドに入っていった。
「あぁ、懐かしいな、この雰囲気」
「全く、あんたはまだ若いだろ?そんなじじむさいこと言いなさんな」
そんな風に言いながらデネボラがクスクス笑うと、俺もなんだかおかしくなって笑ってしまった。
「デネボラさんも、頑張っているんですね」
「あんたほどじゃないさ。リタイアしちまった私達より、あんたの方が大変だったろう?」
そう、俺たちがパーティを解散したのは、抜けなければならない理由があったから……というわけではない。単純に彼女たちが俺についてこれなくなったのが原因だった。
俺は防御力が祝福によって異常に高いことをいいことに、高難度の魔物を次々と討伐していった。自分を害そうと躍起になる魔物を引き付ける。それはかなりの達成感と充足感を感じられたし、実入りもそこそこよかった。
だが、当時の俺は防御力は高いものの、技術も腕力もなかった。狡猾だったり、素早かったりする魔物に間を抜けられ、後方の仲間を襲われる事態が起きたのだ。
ベテランのデネボラが囮になっている間に回復が間に合わなければ、何人か死んでいたかもしれないこともあった。そんな状態が続くこと耐えきれず、俺はその時、丁度怪我で動けなくなっていたデネボラたちを置いて、先に向かったのだ。
そして、その後も何度かパーティに入れてもらいながらも、その時のことが頭をよぎり、ついにはたった一人で魔王に挑み、現在に至っている。
正直、「あんな危険な場所に連れて行くなんて最低」と詰られるか「なんで私達を置いていったの?」と問い詰められるか、どちらかだと思った。が、デネボラはどちらでもなく、以前と同じように、しかし、少し寂しそうに微笑むだけだった。
その顔を見て、俺は思わず問いかけてしまった。
「あの時のこと、どう思ってるんだ?」
それを聞いて、彼女は驚いたように目を見開いた後、静かに語り始めた。
「そうだね、当時は色々考えたよ。あんたが居なくなった後、リシアンやファンメイとも話してね。私達を置いていったことに対しての憤りもあったし、こっちに帰るにしろあそこに残るにしろ、魔物をどうするかっていう不安もあった。でもさ、一番思ったのは、あんたを失望させちまったって後悔だったよ。
私たちがもっと強ければ、私たちがもっと頑張れば、もしかしたらあんたを引き留められたかもしれない、そう思ったら、自分たちが情けなくて、あんたのことが心配だったよ」
その言葉に、俺は胸を詰まらせた。俺が勝手にいたたまれなくなって、対峙したくなくて逃げ出したようなものなのに、彼女たちは俺を思っていてくれたのだ。
「でもさ、お前さんが帰って来てくれたから、私はそれで満足さ」
その言葉を聞いて、俺は彼女に対する思いを決めた。本当はするつもりではなかった。だけど、こんなことを言われたら我慢などできるわけがない。
「デネボラさん」
「ん?なんだい?」
「僕と結婚してください!」
それはもう、ギルドに響き渡るように言った。何事かと俺たちを伺う冒険者たち、驚いたようにこちらを凝視する受付嬢。そして、何故か気まずそうに首の後ろを掻くデネボラ。
そんな状況の中、デネボラが口を開いた。
「あー。その、なんだ。気持ちはとてもうれしいんだけど、さ。これ、見てくれない?」
彼女の薬指には、控えめではあるものの、きらびやかな宝石があしらわれた指輪が輝いていた。
その意味に気が付き、茫然とする俺の方に、男らしい太い腕がばんばんと振り下ろされる。
「残念だったな、ソーヤ坊!!だが、魔王討伐の英雄様なら、こんな年増よりもいい女なんていくらでも手に入るさ!さあ、今日は英雄凱旋記念に失恋記念だ!ジャンジャン飲もう!」
「ちょっと、年増って誰のことよ!」
昔なじみの冒険者が音頭を取ったこの宴会は、夜半まで続き、失恋のショックを引きずる俺は酔いつぶれるまで酒を飲んだのだった。
ちなみに、この時酔いつぶれずに相手探しをすると相手が見つかります。
冒険者は強者への耐性もあるうえ、まだ未熟な時期のソーヤのことも知っているため、他の人々に比べれば交際のハードルは低いです。
あと、作中でも薄々分かっていることですが、装備だけでなくソーヤ自身の威圧感も相当なものです。自然体ですら、常在戦場みたいな緊張感が漂うレベルです。それと【傾国の体(男)】の効果も、完成された美みたいな近寄りがたい雰囲気を醸し出して威圧感を助長しています。
残念……!