魔王を倒した王城で。
どもー初投稿です。私は怠け者なので、かなり適当な投稿頻度になると思いますが、よろしくお願いします。
憎らしいほどの晴天、割れんばかりの歓声。そんな中、俺は手を振りながら心では泣いていた。
俺の名前は宗谷昴元の世界でトラックに轢かれ、そして神様に転生を勧められた、こってこての異世界転生者だ。
前世でトラックに轢かれたこと、それ自体はショックだったのだが、その時はそれ以上の感動と興奮が襲ってきたことを覚えている。何しろ異世界転生だ。
少なくとも異世界転生のテンプレートに慣れ親しみ、そして可愛い彼女もおらず、家族仲もそれほど良好でなかった(おまけに言えば頭の出来もそこそこ止まりの)俺にとっては、この展開というのは異世界無双や、自分だけのハーレム形成をするための第一歩にしか思えなかったのだ。
そんな俺に、俺を呼び出した神様は同情し、そして異世界への熱意に期待もしてくれた。神様は俺に、転生し英雄として魔王を討伐してほしいと言ってきたのだ。
俺は奮い立った。この展開こそまさに、異世界転生譚そのものではないかと!!
俺は色々と神様に聞き、そして3つの祝福を貰って異世界、エルデバルドに降り立った。
因みに、祝福と言うのは神から与えられる力のことで異世界の住人も持っているらしい。
しかし、俺が与えられた祝福は現地人の物よりも効果が高く、また、本来であれば選択できない祝福の種類を自分で決められるので、現地人に比べれば十分に優遇されていると言える。まあ、ありていに言えばチートというやつだ。
俺が選んだ祝福は、【金剛体】、【豪運】、【傾国の肉体(男)】の三つである。
【金剛体】は自分の身体能力に応じて、外部からの攻撃に対して強くなる祝福、【豪運】は運勢シリーズと呼ばれる祝福で、運が良くなるタイプの祝福、【傾国の肉体】は自分の肉体が極限まで魅力的になる祝福だ。
エルデバルドには魔物が存在しており、そして魔物を倒すと肉体が日本にいた時の常識を超えて強化されることを神様から聞き出していた俺は、【金剛体】で敵に倒されないようにしながら身体能力を強化しつつ、不運にも死亡みたいなことにならないよう【豪運】に頼りながら侵攻。魔王撃破後は【傾国の肉体(男)】によってハーレムを作る!!と考えていた。
そして、その目論見は半ば成功していた。所謂レベルアップに近い概念で肉体が強化されるエルデバルドにおいて、肉体を強化するのに最もネックだったのが魔物の攻撃の激しさだったのだ。
誰しも死の危険を冒してまで魔物と戦いたくはない。しかし、魔物を倒さなければ能力の上昇は元いた日本で筋トレした時と変わりなく、それでは上位の魔物等には勝てはしない。
さらに言うならば、そんな上位の魔物を相手取ると、能力値の上昇に比べて敵の攻撃能力が高く、やられてしまうという悲劇が起きてしまう。
そんな中、【金剛体】を持つ俺はそんなことお構いなしに相手を倒すことができた。金剛体の耐久力上昇値は元の能力値の約10倍。
それだけの違いがあれば、他の奴なら一撃で頭を吹っ飛ばされるような攻撃も、盾で何とか受け流せる程度の攻撃になってしまう。
それと、もう一つ【金剛体】でよかったことがある。それが、度胸がついたことだ。高速で自分に向かってくる棍棒、あるいは自分を溶かそうとしてくる粘液、そんな殺意マシマシの攻撃も、受けた衝撃が意外と軽く、あるいは溶かされるにしてもちくちくするぐらい、といった感触なら、飛んできても何とか立ち向かうことができる。
最初の頃は入れてもらったパーティのメンバーに応援や罵倒を浴びながらへっぴり腰で戦っていた……いや、あれはもはや戦っていたというより立ちすくんでいたというほうが正しいか。
とにかく、最初は眼を開けておくことすらできなかった俺は、段々と敵に攻撃されることに慣れ、巨人の金槌で頭を殴打されても、目を見開いて反撃できるくらいの度胸を身に着けて行ったのだ。
そして、そんなこんなで力を手に入れた俺は、とうとう魔王の城に乗り込み、魔王を討伐したのだ。
そして、その後俺を待っていたのは、城に召集され、魔王討伐による叙勲と覇道将軍という地位だった。ここまでは予想道りだったのだ。ここまでは。
「勇者ソーヤよ。そなたをこの国に招くことができて、儂は本当にうれしく思っている。どうか、その力を我が国、そして人類の平和の為に使ってほしい」
聖国リーンファレスの王である聖王アルファレスは俺に向かってそう告げた。
その顔は朗らかで、そして何とも晴れやかだ。何しろ、この世界に長年恐怖を与えていた魔王が居なくなったのだから当然だろう。
ただ、その横で座っている姫であるエリエールの様子が気になった。あわよくば俺のハーレム第一号になるのだ。ここは気にしたほうが良いだろう。
「アルファレス陛下、過大なお褒めの言葉ありがたく頂戴します。……ところで、エリエール姫殿下の顔色があまりすぐれぬようですが……」
「ひっ……!」
俺が視線を向けると、エリエール姫はひきつったような顔を浮かべ、更に顔色を悪くした。
「あー。うむ。その、先ほどまでは元気だったのだがな。どうやら、歴戦の勇士である貴殿の凄みに飲まれてしまっておるようじゃ。何分会う者も限られておるのでな。気分を悪くされたなら謝罪しよう」
……いや、あれ明らかに飲まれたとかいうレベルではないだろう。なんだか、キメラに追い詰められたホーンラビットを見ているような絶望感を感じるぞ。
いかん、あれを見ると結婚してとか口が裂けても言えんぞ。下手すりゃ心労でショック死しかねん。
「……そうですか。こちらこそ失礼いたしました」
その後、褒章とか叙勲とかいろいろあったが、姫と会う機会はこれ以降無かったとだけ追記しておく。
ちなみに、主人公は防御チートで体術とか全くチートでも何でもないので気配とか消せません。姫様からすれば、常にあたりを警戒してるアフリカゾウが自分との間に遮るものもなく目の前にいる感じです。
王様は若いころ戦場に出てたので耐性がありますが……つまり?