三話 一考察
全く推敲してないので多分修正します!
沈黙が流れる。
ていうか……。
「ね、ねぇ。私、もう、戻っても、いい?」
普段ならもう寝ている時間なのだ。眠たくて仕方ない。
「え、あ、うん、いいけど。君はいつもさっきの場所で寝てるの?」
「うん」
「そっか、ごめん引き止めて」
「いや、えっと、ううん、その、おやすみなさい」
私がそういうと彼は、うん、とだけ言った。
失礼しましたーとだけ小声でいい私は部屋をあとにした。
極力静かにできるだけ速くドアを閉めて廊下を進む。
……。
疲れたああああーーーーーっっっ!!
ほんと、人間ってすごい。毎日毎日こんなことをしているのか。話すってなんて神経を使う行為なんだろう。人間じゃなくて良かった。
同じ意味でも選ぶ言葉で印象は大きく変わる。
せっかく私の存在がわかる人に出会えた。つまらない人間だと思われたくない。もっと仲良くなりたいのだ。
自分の発言を今一度思い返す。何か誤った表現はなかったか。
言葉は不思議だ。
同じ内容でも言葉遣いや声音で印象が大きく変わる。しかもそれらは状況や相手によって変えなければいけない。
相手を傷つけないように、相手を不快にしないように。
一つ一つの言葉選びが命運をわけるのだ。
何度でも言う。人間ってすごい。
蓮音くんはいつも近寄り難い感じの雰囲気をかもしているけど、そうする気持ちもよくわかる。わざとヘッドフォンをつけたり前髪をのばしたりしているのかもしれない。
いや、決めつけは良くない。彼ももしかしたら学校ではテンション高き陽キャ軍団の長かもしれない。
学校という場所にほんとにそんなものがあるのかは知らないけれど。
ていうかよく考えれば家でテンションが高い高校生っているのか。まあ私は蓮音くん以外に現実に存在する高校生を知らないが、一般的に高校生という人種は保護者に反発して家では暴言を吐いたり無口になったりするものなのでは?
そう考えると蓮音くんが家か学校、もしくはその両方で多少なりともキャラを作っている可能性が出てくる。そうなるとなかなか難しい。
まず家でキャラを作っている場合、私が今まで見てきた蓮音くんは本当の蓮音くんではないとなる。つまり私は彼を全く理解していないということになり、これから仲良くなる上で支障をきたす。
しかしこの場合、彼が庄次郎さんという『大人』に対してキャラを作っているとしたらあくまで可能性だが子どもの私には心を開いてくれるかもしれない。
問題はそれ以外だった時、つまり学校でもキャラを作っている場合だ。
キャラを作る、というのは相当な労力だろう。違う自分を演じるのだから。私なら絶対無理。
そして私がここにいることで彼がとる行動は二つ考えられる。
一つ目は彼が私の前でもキャラを作ること。これは彼が家でキャラを作っている場合と同じように仲良くなりづらい。
二つ目はなかなか深刻だ。しかし合理的でもある。
私を追い出すこと。そうすれば全ては解決する。しかも透明とはいえ女の子である私がひとつ屋根の下にいることが心穏やかではないかもしれない。
というかそもそも私は勝手にここに滞在しているのだ。普通に追い出されてもおかしくない。むしろそっちの方が自然じゃないか? 蓮音くんはさっき何やら考え込んでいたようだったが、もしかして私をどう追い出すかを考えていたのではないか?
……え、私やばくない? だいぶ危機じゃない? 追い出されるんじゃない?
まあ、追い出されてもまあ仕方ないか。自分で言うのはなんだがこれはばっちり犯罪である。私が人間だったらなかなか大事だ。
えーどうしよっかな。もういっその事図書館に住んでしまおうか。でもあそこは火曜日は誰も来ないからな。あんなに広い空間にぼっちは無理だ。怖い。変な話かもしれないが私はおばけの類が大の苦手なのだ。
待って、おばけといえば今何時だ?
なんということでしょう。時計を見ると二十一時をまわっているではありませんか。
そう思うと一気に眠たくなってきた。
もういいや。追い出された時はその時に考えよう。もう今日は疲れた。こんな時は寝てしまうのが一番だろう。
遅れてすみませんね!しかも少ないですね!来週はちゃんとしますからね!てへぺろ!