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理不尽

「あっ、有栖川さんっ……………。」


三枝君が私を呼ぶ。


告白されてから早くも二週間が過ぎ去り、私達の仲も深まりつつあった。


「………有栖川って言うの長いでしょ。栞でいいよ。」


私はそう言った。


「あっ、うん。じゃ、僕のことも湊でいいよ。」


三枝君がそう言う。


「わかった。じゃ、湊。結局何の用だった?」


私は湊に聞きたかったことを聞いた。


「ええと、今日、一緒に帰らない?」


湊は少しだけ頬を染めながら(そう見えるだけかもしれない)そう言った。


「うーんと、ごめん。私は車が迎えに来るから。」


私は残念に思いながらも断る。


「へー、そうかぁ……。残念。……栞は毎日迎えが来てるみたいだけど、実はお嬢様とか?」


確かに、私の家は他の家庭と比べてお金持ちだと思う。


でも、ここまで過保護なのは私が病気だからなんだけど………。


多分、私が病気じゃなかったら、ここまで過保護にはならなかっただろう。


まぁ、そんな事を言う訳にもいかないので、ここは肯定しておくことにする。


「まぁ、そんなところかな………。家は少し過保護なところがあるから。」


「あっ、そうだ!良かったら、一緒に乗ってく?」


私は湊に聞いた。


「えっ……いいの?じゃ、お言葉に甘えるよ。」


こうして私達は車にて一緒に帰ることとなったのだった。





「送ってくれてありがとう。また明日。」


湊はそう私にさよならを言うと、自分の家の中に入っていった。


私は湊とここまで仲良くなれたことに感動しつつも、運転手さんに車を出してもらい、家に帰ったのだった。





翌日


今日は気分転換に学校へ歩いて行こうと思った。(いつもは送ってもらっている。)


学校に行こうと、家を出て学校の前の通りまでいきかかった時、私は絡まれていた。


「お嬢さん、かわいいね。今から学校?そんなところ行かないでさ…………。俺らと遊ぼうよ。」


理不尽過ぎるだろう。


学校になんか行かないでさ、なんて…………。


ナンパでもそんなこと言う奴はほとんどいない。と思いながら私はどうしようか考える。


多分、こういう場合は私が何を言おうと聞いてくれないんだろうな。


助けを求めて、学校に行こうとしている通学者を見るも、目を逸らされてしまう。


そりゃあそうだろう。


私だって、無闇にトラブルに首を突っ込みたくない。


手を差し伸べてくれる人がいる方が不思議だ。(知り合いなら別だが。)


私が半ば諦めて、この人に従おうかな……。などと考え出した時、見知った声が頭に響いた。


「有栖川さん。大丈夫?」


その人、木室くんは私にそう声をかけると、私をナンパしていた人に向き直って言った。


「すみません。僕ら、学校があるので。こういうことされると困ります。では、失礼します。」


木室くんはその人に間髪入れずにそう言うと、私の手引いて学校へ向かった。



「えっと、あの……ありがとう。実はもうほとんど諦めてたから。」


私は助けてくれたことに驚きを感じながらもお礼を言った。


「ううん。どういたしまして。良かったよ。間に合って。」


「じゃ、早く教室に向かおうか……。授業に遅れないように!」


木室くんは笑顔でそう言うと、私の横に並んで教室へと歩き出した。



本当に、優しいんだな。


優しすぎて、お人好しの域に達してしまっているぐらい。


あのままじゃ、絶対いつか自分が損することになると思うのに………。


でも、そんな事、考えていないみたいだった。


しかも、助けられた方が嫌になることなんて無い、そんな距離感だから誰からも好かれるんだな。


私は妙に納得した様子で木室くんを見つめていた。

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