主治医
高台を下り、待機していた車の所に着いた私は、運転手に「出して」と言った。
運転手は指示通りに車を動かし始める。
でこぼこの道を進むことで揺れる車体により、私の体も揺らされていた。
それと同時に私は誰か、いないかな。と考える。
恋愛はしたくても、誰だっていい訳じゃない。少女漫画とかでは、誰だって運命の人がいていつか出逢うとか言っているけど、あんなの本当かどうかわからない。
仮に、本当のことだったとして、私にはそれを確かめるすべも時間もない。
だから、こんな事を考えていても何の意味もないのだ。
私は、自分が本当に信じられるって思える人に会ってみたい。そんな人のもとで死ねるなら、私が生まれてきた意味が少しはわかるかな…………。
とりあえず、明日から学校でいろんな人に会ってみよう。と結論が出たところで車が家の前に到着した。
運転手さんにお礼を言って下りると、お母さんの代わりに専属の医者の西ヶ谷祥さんが出てきた。
「お嬢様、お帰りなさいませ。また、あの高台に行かれておられたのですか?奥様が心配しておりましたよ。」
「祥さん、ただいま。今から診察ですよね……。」
私は憂鬱な気分で祥さんに聞く。
「はい、診察室に行きましょうか。」
祥さんは私を促すように言った。
診察室に着くと、祥さんは私に何かやりたいことは見つかったか、と聞いた。
恋をしてみたいと言いそうになったが、私はあと少しの所でこらえた。
代わりに、まだです、と言うと祥さんは少し残念そうな顔をした。
「そうですか……。でも、焦らなくていいですから。ゆっくり考えていきましょう。」
私を励ますような言葉に私は少しだけ罪悪感が芽生えた。
祥さんは優しい。
私が恋愛をしてみたいと言ったら、きっと応援してくれるだろう。
何か手伝う、とまで言ってくれそうだ。
でも、この話は必ずお母さんの所まで届く。
そしたら、お母さんに止められることになるだろう。
それは、それだけは避けたい。そんな事になったら、私の寿命なんてすぐに尽きてしまう。
だから、この事は自分だけの秘密にしておくのだ。
私は心の中で祥さんに謝った。
診察が終わると、私は自分の寝室に向かった。
病状の悪化は診られないと言われ、帰されたのだ。
そして、私は、ベットに寝転がると明日の学校のことを考えながら眠りについた。
読んで下さり、ありがとうございます。
今話はあまり話が進みませんでした。
すみません。
次回もお楽しみに!