領主補佐
水分補給は大切ですね。
「ソフィア、悪いがこの書類の確認を頼む」
そう言って父から書類の束を渡された。
「はい」
私は書類を受け取り、自分の席に着いた。
補佐になってから今日で5日が経った。
5日前まで入った事がなかった執務室に、今では毎日入っている。
最初に執務室に入った時も思ったが、書類が多い。
しかも、私の勘違いでなければ日が経つごとに書類が増えている。
昨日、そこに無かった書類が次の日には山の書類があるたんて当たり前の日常になりつつある。
この書類の山も見慣れてしまっている、自分がいる。
しかし、父はこの書類をいつも一人で処理していたのだろうか?もし、そうなら大変な労働になる。
「ソフィア。この書類も確認してくれ」
「はい」
父から追加の書類を受け取り、確認作業を続ける。
『これも、計算ミス』、補佐を始めた日から思っていたが領に提出されている書類なのに計算ミスが多すぎる。
「お父様、この書類も計算ミスがあります」
「何!?またか?」
「はい。またです」
私は父に計算ミスがあった書類を渡した。
書類を受け取った父は目を通し始める。すると、計算ミスがあった個所を見つけたのかため息を漏らしながら頭を抱えた。
「何故、こんなにミスが多いんだ?」
「お父様。前からお聞きしたかったのですが、平民の方はどうやって文字や計算を覚えるのですか?」
「ほとんどは、両親から教えてもらうだろうな。あとは、稀だが独学で覚える者もいると聞いた事があるな」
「それだと、領民は皆まともな教育を受けていないのですか?」
「ソフィア、違うぞ。この国の平民すべてだ」
「どうして教育をしないのですか?」
「理由はいくつかあるが・・・まずは、平民に教育する為の予算がない事もあるし。そして、なによりも大きい理由があって。昔からこの国・・・いや、貴族の考え方で平民には教育は必要ないというものがあって。今なお、その考え方は変わっていないんだ。だからこの国で平民に教育しようとする貴族の者はいない。それ以外にもあるが・・・・・・」
その後父から語られる平民への考え方に、私は何とも言えない感情が湧き上がってきた。
「それではまるで奴隷のようではありませんか?」
私の考えは、下手をするとこの世界では間違っているのかもしれない。でも、前世の記憶を持つ私には到底受け入れる事が出来ないものだ。
「何を言っているんだソフィア?」
私の発言を聞いて驚いたのか、父はそう言って不思議そうな表情をしていた。
そして、続けて父は「この国には奴隷制はないよ。他の国になら有るけど」と教えてくれた。
「いえ、お父様。私が言いたいのはそう言う事ではなくて、その考え方が奴隷対するそれではないでしょうか?」
「いや、違うな。平民には自由があるが、奴隷には自由がない。その違いがある限りソフィアの意見は違うな」
そうかもしれないが、私の感覚ではそれは奴隷に近い。
「なら、お父様。このドルトムン領で平民の学校を造りませんか?」
◆◆◆◆◆◆
「なら、お父様。このドルトムン領で平民の学校を造りませんか?」
私の可愛い娘のソフィアが突然こう言ってきた。
先ほどまで、ソフィアと平民に教育は必要がないという話をしていたのに・・・何故?急に平民に学校を造る事になる?。
私はソフィアの突拍子のない発言に驚いたが、『ここで前のようにこの意見を頭から否定してしまうと話しがまた平行線になるかもしれない』、そう思った私は冷静な対応することにした。
「理由を聞いてもいいかな?」
すると、ソフィアは待ってましたとばかりに私に学校の必要性を語ってくれた。
「まずお父様は、この領をどうしたいですか?」
「今のまま平和であればいいと思っているよ」
私は素直に自分の思いを口にした。
「今のままと言う事はスラム街も、そのままでいいと言う事ですか?」
少しムスッとしたソフィアがそう言ってきた。そんな表情も可愛いなと思ってしまう。私は親バカなのだろか・・・。
「私も何とかしたいと思っているが、でもどう対処すればいいか分からない状態だな。他の領でも対応に困って領からの追放という形での対処しかなかったからな。どうすればいいのか・・・」
「それなら私にいいアイディアがあります」
胸を張って自信満々に言うソフィア。
ソフィアの言う、いいアイディアがどんなものかは分からないがそれでスラム街を何とか出来るのならすごい事だ。
「それは、ちなみにどんなアイディアなんだい?」
「彼らに職を与えるのですよ」
「職?どんな仕事を与えるんだ?」
「ドルトムン領のインフラ整備をしたいので、その為に彼らには道路を造ってもらおうと思います」
自信満々に言うソフィア。しかし、その発言には一つの疑問がある。
私はその疑問をソフィアに聞いた。
「その道路を造る予算は、どこからでるんだ?」
「それは勿論、領の予算から出します」
そう簡単に答えるソフィアに、私は驚きを隠せなかった。
恐らく、ソフィアは領の予算がどれだけ大切かをしらないのだろう。だからこうも簡単に言えてしまうのだろうな。ここは領主として、しっかりと言った方がいいな。
「ソフィア。領にある予算は無限にあるわけではない、それは分かるね?」
「えぇ、それは分かりますよ」
「なら、そんな無駄と思える事に予算は使えない事は分かるだろ!?スラム街を何とかする為に予算を使いたいのは分かるが・・・例え予算を使ったとしても、そんな一時的な対策では根本的な解決にはいたらないだろう」
私は諭すようにソフィアに言った。これだけ言えば分かってくれるだろう、この子は馬鹿じゃない賢い子だから。
すると、ソフィアは一枚の紙を私に渡してきた。
その紙には何かの計算式が書かれていた。
「何だいこれは?」
「私が先ほど言った事をする為に掛かる1年間の予算表になります」
いつの間にそんなものを作っていたんだ。
ソフィアの今している仕事は、私の補佐だが。それでも補佐といっても仕事が少ないわけではない、むしろ最近は増える一方だったからこんなものを作る余裕なんてないと思うのだが・・・この子は私が思っている以上に賢い子なのかもしれない。
私は改めてソフィアから渡された資料を見直した。
そこに書かれている予算の割り当て方、予算の総額を見て驚いた。
「ソフィア・・・本当にこの予算で出来るのか?」
「はい、1年間であればこの予算で回せます」
「ちなみに、ここに書かれている所得税とは・・・なんだ?」
そう。ソフィアが作った予算表には、いくつか分からない項目があり。
その中に一つに所得税と書かれた項目があった。税と書かれているからには、これは領民が領に収めるお金である事は分かるが・・・具体的にはどんな税なのだろうか?。
答えを聞く為に、予算表からソフィアに目を向けると。
何故か困った顔のソフィアがいた。
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