父とコズミさんと・・・
最近、すごくアツい。
「お父様にお願いがあるのですが・・・」
「どうしたんだい、ソフィア?」
「今から農業地区を見て回りたいのです」
「今からかい?」
「はい、今からです」
少し悩む素振りを見せる父。
「今から行くにしても、まだ漁業管理所にも商業管理所にも行かないといけないから・・・今から見て回るのは時間的に無理かな。興味を持ち始めているソフィアには悪いが今日は諦めてくれ」
「予定があるのは分かっています。せめて一ヶ所でもいいので見ておきたいのです・・・それでも無理でしょうか?」
「う~ん、一ヶ所だけなら大丈夫かな。コズミ、ここから一番近い地区まではどのくらいかかったかな?」
「そうですね。馬車を使って10分くらいですかね」
「10分か・・・それぐらいなら問題ないだろう。それでいいかなソフィア?」
「ありがとうございます、お父様」
時間にそこまで余裕があるわけではないので、私達はすぐに建物を出た。
私は馬車での移動中も窓から外の景色を見ていた。
少しでもいいから私はこの領の情報を集めたかった。
しかし、窓から見える景色では得られた情報は少なく。やっぱり歩いて見た方が情報量は多そうね。
でも今回は時間が無い為、仕方のないことだと思うしかなかった。
『もう、そろそろ着く頃ね』、馬車の速度が遅くなったのがその証拠だろう。
その後、すぐに馬車は止まり私達は馬車から降りた。
降りた後はコズミさんの案内で、地区の事を教えてもらった。
「どうですか、ソフィア様?」
地区の説明が終わったのだろう。コズミさんが私の反応が気になり、質問してきた。
「正直に申し上げて、効率が悪いですね」
「効率ですか?」
「はい、効率です。コズミさんの説明と現場を少し見ただけで分かってしまうのですから・・・恐らくここで働いている方々も私と同じ事を思っていると思います」
「ソフィア様と同じ事ですか?よろしければ、教えていただけますでしょうか?」
「教えしますよ。ですが、その前にここで働いている方とお話したいのですが?コズミさんお願いできますか?」
「はい。今、呼んでまいります」
そう言ってコズミさんは走って呼びに行ってくれた。
「ソフィアはこういう事に興味があるのだな」
父が私の方を見ながら話かけてきた。
「興味とは、また違うかもしれません。ただ貴族として生まれたからには、責任ある生き方がしたかっただけなのです」
「責任か・・・ソフィアにとっては今やろうとしている事が貴族としての責任なのかな?」
「お父様、私は恵まれていると思うのです。何不自由なく生活している今を、何の疑問も無く過ごす事は私には出来ません。『まぁ一番の目的は破滅エンドの回避だけどね』だから、私は思ったのです。この恵まれた生活を送れているのは、私が貴族だから平民の上に立っている存在だから送れているのだと。人の上に立つという事はそれなりの責任があります。私はその責任を果たしたいのです」
「なるほど。ソフィアはその責任をどうやって果たすのか聞いてもいいかな?」
「簡単な事です。ドルトムン領に住むすべての民の生活レベルの向上です」
「生活レベルの向上とは?」
「説明したいのですが・・・どうやらコズミさんが戻ってきましたので、この話はまた後でお話します」
私はそう言って父との会話を止め、コズミさんの元へ向かった。
コズミさんが連れてきた農家の方は何故、連れてこられたのか分かっていないみたいで怯えている様子だった。
私は怯えている農家の方に話かけてたが、農家の方が怯えているせいか上手く会話にならない。
しかし、粘り強く話を続けたおかげか何とか会話になってきた。
そこで私が思っていた事を農家の方に話したら、やはり農家の方も同じ事を思っていたらしく私の考えは間違っていなかった事が分かった。
これで自信を持って父に提案できる。
その後しばらく農家の方と話した後、次の場所に向かう時間になってしまい私達は馬車に乗り次の場所、漁業管理所に向かう。
移動中の馬車の中は沈黙の世界だった。
さっきまでは、それなりに会話が有ったのに何故か父もコズミさんも黙っている。
でも、今の状況は私にとっては好都合だった。
今は私の中にある考えをまとめたかったから、だけどこの考えに説得力を持たせるには追加の情報が欲しい。
私が欲しい情報はこれから行く場所で得られるだろう。残る目的地は漁業管理所、商業管理所の二つ。
私の予想が正しければ、この二つも現状が停滞しているはずだ。
『私がこの領を変える、前世の知識を活かせばそれが可能だ。十分過ぎるほどに可能だ』、だが問題は一つある。
父が私の事をどこまで信用してくれるか・・・だが。簡単なのは、信用させるだけの実績を見せられればいいのだけど、その機会を父がくれるくかが問題になってくる。
馬車が進むたび、現実が私の予想にシンクロしてくる。
『喜ばしい事ではないが』でも自分の予想が当たっていると思えば思うほど、これから先の事を考えてしまう。
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