殿下の思い
最近、網戸にしてたら虫がめちゃ入ってくる。
エアコンか~
マーフィスに案内され、本日二度目の殿下の部屋に到着した。
コンコン。「ドルトムン様をお連れしました」。
マーフィスが扉をノックした。すると中から「入れ」と言うアレン様の返事が聞こえた。
「では、ドルトムン様」
マーフィスが頭を下げ、扉を開ける。
私は、マーフィスの前を通るかたちで部屋に入る。
アレン様とクロフォードさんは椅子に座り、紅茶を飲んでいた。
『あらっ!?私はてっきり二人はイチャイチャしているかと思ったけど、以外と普通にしているわね』、私は二人が座っているところまで行き、空いている席に座った。
部屋に入った時には気がつかなかったけど、アレン様は何だか気まずそうに紅茶を飲み、クロフォードさんは満面の笑顔で紅茶を飲んでいる。
なにかしらこの二人の差は?。
私が席に座ったタイミングで、アレン様の傍にいた使用人の方が私の分の紅茶を淹れてくれた。
紅茶を淹れた後、使用人の方は部屋か出ていった。
部屋には今、私・アレン様・クロフォードさんの三人だけいるかたちになった。
「クロフォードさん、何だか嬉しそうですけど何かいいことでもありました?」
「やだっ!私、そんなに嬉しそうに見える?」
「えぇ、とっても」
「何だか、恥ずかしいわ」
クロフォードさんは両手をほほのところにまでもっていき、目を瞑りながら頭を左右に振った。
なんともわかりやすい、照れ方だ。
見ているこちらが恥ずかしくなるわね。
そして気になるのは、クロフォードさんを横目で見ているアレン様が先ほどよりも明らかに気まずそうにしている。こちらはこちらで、面白いわね。
「やっと私の思いが伝わりまして・・・それがとても嬉しくて」
先ほどまで照れていたクロフォードさんは、今度はアレン様の方を向きながらそう言った。
アレン様は目線を合わせる事はなく、紅茶を飲んでいる。額に汗が流れているのは不思議だけど。
『紅茶が熱いのかしら?』、私はそれをあまり気にすることなく話を続けた。
「それは良かったですね、クロフォードさん。それで、今のアレン様のお気持ちは?」
私は失礼と知りつつ、アレン様に詰め寄るかたちで聞いた。
アレン様は私の質問にたいし、目を泳がせて口をパクパクするばかりで答えてくれなかった。
『なにか、言いにくい事でもあるのかな?』私は浮かした腰を下ろし、自分のティーカップに手を伸ばした。
すると、急にアレン様は立ち上がり部屋から出ていってしまった。
「私、アレン様を怒らせてしまったかしら?」
私は、クロフォードさんに聞いてみた。
「そうかもね。今のあなたの質問はデリカシーにかけていたから、アレン様は気分を害されたのじゃない?」
「そう・・・よね」
私は少し血の気が引いた。
私の破滅エンドを回避する為に、あれだけアレン様に対する行動には気を付けなくてはならにと分かっていたのに。
『私のバカ、早くアレン様に謝罪を』、私も立ち上がり部屋を出た。
私は部屋の前にアレン様がいると思っていたが、実際は誰も居なかった。
そう、使用人の方も居なかった。
目に入る範囲で誰も居ないのだ。
『ヤバい、部屋を出るのが遅かった』、私はさらに血の気が引いた。
本当なら、アレン様を探しに行きたいが王宮を勝手に歩き回るわけにもいかず。私は、焦る気持ちを抑え部屋に戻った。
不味い、汗がともらない。それに、クロフォードを見ていると自分がした事の重大さに改めて気づかされる。
「・・・それで、今のアレン様のお気持ちは?」
クロフォードと話していたはずのソフィアが身を乗り出した状態で僕の近くにいる。
『今の気持ち?』、そんなこと答えれるはずがない。
僕の本当の気持ちを言えば、クロフォードは傷つきソフィアは僕を嫌いになるかもしれない。そんな事、出来るわけがない。
だから僕は、逃げるという行動をするしかなかった。
そして、逃げた先は僕の隣の部屋だ。
隣にはマーフィスも居る。
「殿下、突然どうされたのですか?」
「逃げてきた。僕はどうしたらいい?・・・助けてくれマーフィス」
「逃げ・・・誰から助ければよろしいのでしょうか?」
「ソフィアとクロフォードからだ」
「殿下。それは難しいです」
いつも、頼りにしているマーフィスが今日に限って頼りにならない。
「それはどういう意味だ?」
「殿下なら分かっているでしょう?」
マーフィスの言う通り、分かってはいる。分かっているのだが。
「僕の経験値では、この状況を打破する手段が思いつかないのだ。だから経験豊富のマーフィスに頼っているのだ」
自分でも無理を言っている事くらいは分かっている。でも、だからと言って諦めるわけにもいかんのだ。
「わかりました。参考になるか分かりませんが、私の友人の話を聞いてみますか?」
「あぁ聞きたい」
今、僕の助けになるのなら何でも聞きたい。
『いや。頼む聞かせてくれ』。
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