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糸目笑顔の聖女  作者: 神崎未来
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プロローグ1 彼女と俺の日常

[裕之SIDE]


昨夜、となりの家に救急車が来た。

修一がまた喘息の発作で運ばれたようだ。

中学生になってから減ったとはいえ、毎度毎度御苦労様なことだ❗

まあ、おかげで、こうして裕美にどうどうと会いに行けるんだけどな。


となりの家のインターホンを鳴らすと、裕美がでてきた。

「おはよう!ゆう兄!」


裕美の笑顔は可愛い!!

今朝はじゃまな修一がいないから、よけいに可愛いさパワーアップだ!

当分病院から帰ってくるな。


「おはよう裕美!昨夜また修、病院送りか」

「うん」


「おばさんも?」

「・・・うん」


「おじさんは?」

「今朝早く帰ってきたけど、すぐ仕事に行ったよ」


「朝、ちゃんと食べたのか?」

「たっ食べたよ」

目をそらす


「ウソつけ!」

「・・・・・・」


「ほら!」

手提げ袋からおにぎりを三つ渡す


「いいの?」

「ああ」


部活用に握ったおにぎりだ。いつもは面倒だから母さんに頼むが、昨夜は救急車が来たから、朝炊きあがるようにセットしてあった炊飯器の蓋をあけて、米を足したのだ。

母さんが朝から、ニヤニヤと俺の顔を見ながら「裕美ちゃんと仲良くね~」と、訳知り顔で言ったのには少しムカついたが、裕美の笑顔で帳消しだ。


「ありがとう❤ ゆう兄」

「おう」


「まだ少し時間あるから食べていけよ」

「3つも、多いよ・・・」


裕美の肩に手を乗せて、家の中に押し戻して、玄関のドアを閉める。

靴を脱いで上がり台所に行く、勝手知ったるなんやらだ。

テーブルを見ると、飲みかけの牛乳がマグカップに入っている。

それだけだった。


「なんだ、また牛乳だけじゃないか、ほらこれも食べろ」


俺は袋からタッパーを取り出して、蓋を開けた。

冷蔵庫からマヨネーズを取り出し、ブロッコリーにかける。


「うふふふ、ゆう兄のいつもの信号機だね♪」

「・・・これでいいんだ。さっさと食べろ。遅刻するぞ」


中身は、ブロッコリーとプチトマトとウインナーだ。

信号三色の組合せのおかずは俺の定番だ。

小学校の頃、ひもじい思いをしていた裕美を見て、婆さんに相談した。

婆さんは、俺に栄養と信号色のおかずの話をした。

栄養の話は少し難しくて、小学生の頭にはよくわからなかったが、ようは赤緑黄の信号三色のおかずに肉か魚を食べればバランスが良いということらしい。

それから、俺は救急車が来ると、冷蔵庫をあさる。

赤はたいていトマトで、緑は野菜、あとは卵か肉をさがす。

野菜はラップにくるんで、電子レンジでチン。

肉も塩胡椒か市販のタレをつけて、電子レンジでチン。

黄色がないときは、マヨネーズをかける。

赤がないときは、ケチャップをかける。

緑はブロッコリー・ほうれん草・インゲン・アスパラは冷凍食品の定番だ、コンビニでも売っているからいつも常備している。

完璧だ!!

・・・・・・ちょっと違うんじっゃないか?って、・・・いいんだよ、だいたい合ってれば!

そもそも料理を習ったことのない俺に何を求めるっつうんだ。

裕美が笑えば、それでいいんだよ。


「ごちそうさま、ゆう兄」

「もういいのか?」

「うん、残りは後で食べるから」

「そうか」


裕美が笑う、俺を見て笑う、二人だけのこの空間で、上目使いに笑うとタレ目気味の彼女の瞳孔がが縦に伸びてクリ目になって可愛い、ああ可愛い、可愛くてたまらない、こんまま押し倒したい。

・・・・・・ヤバイヤバイ、朝から息子がまた起きそうだ。

なけなしの理性をかき集めて、そっけなく言う。


「そろそろ行こうか」

「うん」





俺たちは、中学校へ行く。

裕美は1年、俺は2年。

裕美の兄の修一とは同じ年で、いつもは3人で登校する。

去年は、小学校と中学校で離れていて、しかも方角が逆で悲しかった。・・・主に俺が!

裕美は幼馴染の望美と真由美と、途中で待合せ合流するからぼっちではないのだ。

女も3人揃うとかしましい、と言うが、そのとおりだと思う。

そして、裕美を女どもに取られるまでのわずかなひとときを、2人だけの時間を楽しむのだ。

・・・修一当分入院していろ!




裕美を女共に取られた後、もうひとりの幼馴染の宏太と合流して、校門を通る。

いつも宏太はギリギリ登校だから、門前で会うことは少ない。


「はよ!、修は?・・・」

「昨夜、入院」


「はっ、最近おさまっていたのにな」

「最近、空気が乾燥して寒くなってきたしな」


「・・・勉強のしすぎじゃね?」

「弁護士の息子は大変なんだろ」


「勉強より体鍛えた方がよくね?」

「今更だろ」


「あいつの母ちゃん過保護だからな~」

「・・・おまえん家の放任もどうかと思うが」


「・・・俺は男だからいいんだよ、楽だし・・・裕美っち、かわいそうだろうが」

「・・・・・・」


「悪い男に捕まりそうで、将来が心配だ」

「・・・どういう意味だ」


「別に・・・」

「おい!」


鐘が鳴り、いつものように授業が始まり、終わる。


放課後、ルンルン気分で部活に行く。

なぜなら、裕美も同じ弓道部だからだ。

1年の入学時、部活を選ぶ時に男女が同じようにできる運動系を基準に探した時に、弓道はうってつけだったのだ。

バスケ、バレーボール、テニス、バドミントンは、部は同じでも練習は男女別だった。

ガキの頃から水泳はやっていたが、水泳部はなかった。

弓道部に入る事を伝え、1年かけてアピールし、入学した時に、問答無用で入部届に書かせた。

「いいよ」と言った時の彼女は、呆れたようなそぶりで、嬉しそうな笑顔だった。






















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