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数十分の家族

作者: HAYATO

30代半ばをむかえた、独身のボク


ちょっとした出来事で、家族というものを考えさせられた





ボクは仕事が終わり、帰りの電車を待つ駅のホームで、

他愛のない事を考えていた。


年も終わりに近づき、世間ではクリスマスで賑わい、

そのクリスマスを楽しむモノ、働くモノ人それぞれだけだ。


ボクは働く側の人間、楽しんでるモノに妬んだりしない。

気にしたことない。

何故なら、生まれてからこの時期遊んだことはないからだ。


しかし、家族連れの親御さんたちは どんな気分なんだろう?


年の暮れの忙しい時期に、クリスマスが終わるとすぐに正月の準備。

お年玉とか、料理とか色々大変の中、今 家族と過ごしているんだな。


愛する家族だからこそ、大変だと思わず過ごしているのかな。


ボクには分からなかった。



気にしないと思いつつ、少しばかり疑問に思っている時のことだった。


「パパ!パパ!」


後ろに並んでいた 2、3歳ぐらいの 子どもがボクの手を握っていた。


その横にいた母親が、

「コレ!勝敏(仮名)、パパじゃないのよ」



「パパなのー!パパ!」



勝敏くんの幼い瞳は何とも言えない純粋な目をしてた。



母親は、ボクに言った。

「ごめんなさいね、父親と間違えている見たいで…」


母親はなぜか寂しそうっていうか、切なそうにも見えた。



「数日前、うちの主人が事故で亡くなりまして、この子はまだ小さいから実感が無いみたいなんです」


「いまだに家でパパの帰りを待っているんです…」


少しばかりの涙目で、他人のボクに話した。



ボクは思わず、

「・・分かりました!ボクが少しの間、この子の父親になりましょう」


母親は

「エッ!?」


帰りの電車が駅に到着し、少し混み合った三人 電車に乗った。



「勝敏、いい子にしてたか?」



「うん、パパはどこに行ってたのー?」

勝敏くんはオレの手を離さない。



「いいか?これから大変だけど、勝敏は男の子なんだから強くないとだめだぞ」



「ボク、強いもん」


勝敏くんの覚えたての言葉は心に残る。



「よし!約束だぞ」


ボクは勝敏くんと指切りした。




そして、ボクが降りる駅わずか数十分、たった一駅

あっという間に時間が過ぎていた。



「勝敏くん、またね」


「パパ、何で降りるの?家に帰るんでしょ?」


「パパはいつも勝敏くんの中にいるんだよ」


「パパー!行かないでよー」



母親は

「さっき約束したでしょ?強い子になるって」



ボクは母親に挨拶し、最後に勝敏くんの頭をなで、電車を降りた。


動き出す電車の窓に勝敏くんが、ホームにいるボクを見つめる。

何かを言っている。

発車のベルが大きすぎて、何言っているか分からない…。


そして、ボクは電車が見えなくなるまで、見送った。



少しの時間だったが、これが家族なんだな。

初めて暖かい気持ちになった気がするよ。



ありがとう 勝敏くん




〜勝敏くん、ごめんな。


最後までボクは、勝敏のパパじゃないこと言えなかったよ。


勝敏くんと指切りまでしといて、ボクが一番嘘つきだよね。


でも パパは勝敏くんの心の中にいることは本当だよ〜


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