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第四話

家に着き門を開け家に入ろうとすると鬼の女の子は門の前で不安そうな顔をして立ち止まっていた。


「入っていいよ。」

と俺が言いながら手招きすると鬼の女の子はパーッと顔を明るくし一緒に家に入った。


家に入ってすぐ俺は少し休みたいと思ったが、ヒメがいるので仕方なくヒメを風呂場までおぶっていきヒメを風呂に入れた。


風呂場を出ようとしたとき「覗いたら殺すから!」とヒメが言ってきたので「誰もお前みたいな貧相な体を覗こうなんて思わねーよ」と言うとヒメと牡丹に同時にぶたれた。


女ってめんどくせーと思いながら俺はそのままキッチンに行きヒメと俺の分の食事を作っているとヒメが風呂から上がったのでまたおぶって二階の自室のベッドに寝かせ「今食事持ってくるから」と言いキッチンに戻り出来上がった料理を持って二階の自室に行きヒメと二人で食べていると鬼の女の子が興味深そうにまじまじと見てきたので「食べてみる?。」と身振り手振りで伝えると鬼の女の子はコクンと頷いた。


憑依の陣を描き手を重ね鬼の女の子に身体を譲ってみると妖化をしないくらいのコントロールはできるようだった。


ただ頭からちっちゃな角は生えた。


鬼の女の子は最初箸の持ち方に困ったがまぁいいかと箸をグーで握りそのままおかずのから揚げに突き刺し口に運ぶと驚いた顔をしてから揚げをヒメの分まで食べてしまった。


ヒメは笑っていたが俺は内心これは先が思いやられるなーと思っていた。


牡丹はまだ寝足りなかったようでヒメの隣で俺のベッドに入り眠りこけていた。


食事を終えて体を返してもらうと鬼の女の子はウトウトし始めたので床にマットを敷いてその上に寝かせた。


ヒメももう限界を迎えていたので冷えピタを頭に貼り風邪薬を飲ませ寝かせた。


俺はようやく一人になれたので風呂に入り、上がったあと牛乳を飲み自室に戻って昨晩から今にかけてのことを唐突に日記に書こうと思い日記を書いていたら夢中になり気が付くと日記を書き始めて一時間が経過しようとしていたので俺もそろそろ寝るかと思い時刻は昼の10時になろうとしていたが俺は鬼の女の子の隣で床に横になりタオルケットを被って四人で眠りについた。


「ん・・・。」

俺が目を覚ますと隣で寝ていたはずの鬼の女の子は俺の腕にしがみつきヨダレを垂らして寝ていた。


ウチの近所、ましてや東京都内では鬼なんか住んでいない。


おそらく鬼の女の子は俺に会うため遠くから一人でやってきたため相当疲労していた上に心細かったはずだ。


ようやく安心して休眠できたからこれだけ眠りコケているんだろう。


俺はとんでもない馬鹿力でしがみついてくる鬼の女の子をなんとか引きはがし部屋の掛け時計で時刻を確認した。

17時16分・・・。


けっこう寝ちまったな。


しかし俺以外はみんなまだ寝ている。


まぁ無理もない。

あんなことの後だ。


俺は起き上がり夕飯の支度をすることにした。


俺は一階に降り部屋の電気をつけ夕飯の支度をし始めた。

適当につけて垂れ流していたテレビでは昨晩の出来事がニュースで取り上げられていた。


俺が夕飯の支度をし始めて15分ほどすると鬼の女の子が眠そうな目をこすりながら扉をすり抜けて入ってきた。


俺が「おはよう」と声をかけると鬼の女の子は「あー」と答えた。


鬼の女の子は最初何をしたらいいのかわからなかったらしくリビングとキッチンを右往左往していた。


俺は鬼の女の子をリビングのソファーに座らせて適当に録画しておいたアニメを観せといた。

鬼の女の子は言葉はわからないながらも目を輝かせて観ていた。


俺はその隙にちゃくちゃくと夕飯の支度を済ませ出来上がった料理を午前中同様二階に持って行った。


俺が部屋に入るとヒメも牡丹も起きており二人で何やら話していた。


ヒメの分の料理を並べていると鬼の女の子も部屋に戻ってきた。


ヒメと二人で食事を食べ始めると牡丹が切り出した。


「ねぇみつる~。」


「なんだ?。」


「この鬼の女の子ちゃんとした名前はあるんだろうけど鬼の文字とか私達はわかんないし鬼の女の子は人間の言葉がわからないじゃない?。」


「そうだな。」


「だからつけてあげた方がいいんじゃない?名前。」


「あー名前かぁー・・・。」

俺がそう言うと三人してうーんと頭を捻り始めた。


鬼の女の子はそんな俺達を不思議そうに見ていた。


「んじゃあ鬼の女の子だから『鬼子』。」

俺がそう言うと牡丹とヒメは二人して「はぁ?」と言い反発してきた。


「いくらなんでもそれはないわ。」

ヒメが幻滅した目つきで俺を見る。


「みつるって頭いいけどそういうとこセンスないよね。」

牡丹も同じ目つきで俺を見る。


「そういうお前たちはなんかいい名前思いついたのかよ。」


「女の子なんだからもっと可愛らしくマユキちゃんとかさぁ、ほら漢字に直すと魔優鬼とかなるでしょ。」

ヒメがピンと来たのか言い出した。


「最初良いかもと思ったがDQNネームみたいなこと言い出したから却下。」


「んじゃあ!私が牡丹だから花の名前にちなんでアマリリス!。」

牡丹もピンと来たのか言う。


「だっさ、お前もセンスねぇじゃん。」

俺が言い返すと牡丹がピーピー喚きだした。


「しかし花の名前かぁ・・・。」

「花、桜、桃、杏、苺、百合・・・。」


「百合!。」


「この子の名前は百合!。」

俺は頭の中でピコンと音が鳴ったので言ってみた。


「百合かぁいいかもね!。」

と牡丹。


「でもなんで百合?。」

とヒメ。


「ほら百合って花が白いだろ?だけどこの子の体はまさに鬼の名の恥じないキレイな赤色、情熱的で強い印象を与える赤だけど百合は白くて純情なイメージがするだろ?この子はまだ幼いし子供のままの無邪気な心を持っている。」


「その身とは対極的な白い心。」


「だから百合、それに百合の花言葉は純粋、無垢、威厳っていう意味があるんだ。」


「へぇ~なるほどね!。」

納得したようにヒメが答える。


「やるじゃんみつる!。」

と牡丹も気に入ったようだ。


俺は早速書道用の道具一式を出しその場で正座に座り半紙に『百合』とキレイに大きく書きその端に小さく異形の者が触れられるように陣を書いた。


それをドライヤーで乾かし半紙で表紙を丁度覆えるくらいのもう読まなくなった本を引っ張りだしそれの表紙に糊で綺麗に貼り付けた。


それを鬼の女の子に渡し俺は自分を指さし『みつる』と言い、鬼の女の子と書いた文字を指さし『ゆり』と言った。


すると鬼の女の子もとい百合はその手に持つ俺の書いた文字を見ながら目を輝かせ「ゆり!ゆり!」と喜んだ。


それから俺は牡丹とヒメを順番に指さし『ぼたん』、『ひめ』と伝えた。


すると百合は順番に指さしながら「みつる!ぼたん!ひめ!ゆり!。」と答えた。


「よくできた。」

と俺が頭を撫でると百合はあんまり嬉しかったのかその場でピョンピョン跳ねながら「ゆり!ゆり!」と喜んでいた。


その様子をヒメと牡丹は我が子でも見るように微笑んで見ていた。


こうして俺達と小さな鬼の女の子百合は初めて自己紹介ができた。


「これからは言葉も教えていかないとねっ」とヒメが言ったので素直に賛同した。


それから二日が経ちヒメはようやく体調が良くなり足の痛みもだいぶ良くなったらしく「あんまり長いしてると流石に迷惑だしね」と言い今帰るところを玄関で見送っているところである。


そしてこの二日間百合は何かあるごとに「みつる!みつる!」としきりに俺を呼んだ。


更に百合は信じられないスピードでどんどん言葉を覚えていき今はある程度の日常会話ぐらいならできるようになった。


まぁまだわかんないことだらけでほとんどの事は「あー」とか「うー」とか言って頑張って伝えようとしているレベルだけど。


「そんじゃまた近いウチに来るわ!。」

とヒメは言い俺の家を後にしようとしたのでいつものように牡丹をお供につけ見送ることにした。


「学校来る気になったら。」

とヒメが言い出したので俺は「絶対行かない」と断ったがヒメは「いつか絶対来させる」と言って牡丹と一緒に出て行った。


俺はようやくいつもの日常に戻れると思い自室にこもりいつも通りの自宅警備員作業に戻った。


百合には知育向けの絵本や遊び道具を与え俺が使わなくなった辞書なども渡し一人で熱心に勉強していた。


そのうちヒメから連絡があり「着いたよ~」と言われたので牡丹を召喚し帰って来させた。


すると牡丹はその手に手紙のような物を持って現れ「ポストに入ってた、多分いつものやつ~。」

と言って渡してきた。


その手紙には異形の者が触れるようになる陣が書かれていた。

明らかに召喚士からの物である。


はぁ・・・またか、どうせ・・・。

俺は黙って中身を開く。

やっぱりな・・・。


中からは『果たし状』と書かれた便箋が出てきた。


中身は『二日後の22時有楽町付近の高速道路の高架下まで来い。』と書かれたものが出てきた。


はいはい、と思いながら俺はその手紙をゴミ箱に丸めて投げ入れた。


「牡丹~二日後の22時に有楽町近くの高速道路の下だとさ~。」

「えぇ~遠い~メンドクサイ~。」


牡丹は昔テレビで見て「ほしい!」と言い出してだいぶしつこくねだられたので仕方なく買ってあげた部屋に置いてあるバランスボールに仰向けに寝そべって乗っかりながら答えてきた。


「俺だってめんどくせーよ。」


まぁいいやと思い俺は二日後の22時になるまでは特にやることもなかったので引き続きPCモニターと睨めっこすることにした。


そして二日後、時刻は21時30分。

俺は時計を見てそろそろだなと思い牡丹に声をかける。

「牡丹~そろそろ行くぞ~。」

「あ~い。」


俺と牡丹が立ち上がりマスクにサングラスにニット帽を被りどこかに出かける素振りを見せると百合も気づいて立ち上がった。


正直百合を連れて行くのはどうかと思ったがまぁいいだろうと思い三人で家を出た。


電車を乗り継いでそのまま指定された高速道路の下までやってくると待ち構えていたのは同じ学校の生徒三人組が待っていた。


「手紙通りちゃんと来たなぁせんごくぅ~。」


こいつは一年の時同じ召喚士専攻クラスだった・・・名前なんだっけ。

まぁいいやとにかくめんどくさい奴とそいつの取り巻き。


「よくもいつもいつも姫奈ちゃんと一緒にいたり仲良くしてくれたなぁ~。」


「この前なんて一緒に屋根の下で寝泊まりしたそうじゃねーか。」


「挙句の果てには俺達が捜査していたターゲットを横取りしやがって、てめぇちょっと他の召喚士達より適合地が高いからって調子こいてんじゃねーぞ!。」


いつも通りこういうやつらは俺の前に来るとケンカ腰に話かけてくる。


牡丹はそれをそっぽを向きながらあくびをしてまるで興味なさげにしている。


百合は少し怯えながら俺の足の後ろに隠れながらチラリと覗いている。


まぁ要約して何故俺が今こんな目に遭っているのかというと半分はヒメのせいである。


ヒメは美人だしそこそこスタイルもいいしおまけに頭脳明晰スポーツ万能性格も明るく八方美人。

ま、俺には遠く及ばないけど。


ともかくヒメは学校内ではアイドル並みに人気があり好意を抱いている異性もたくさんいる。


それを横から俺のような奴がヒメを独り占めしていることが許せないやつらは決闘という形で白黒つけてヒメから手を引けってのがこいつらの言いたいこと。


そしてもう半分は俺は引きこもりニートしているがその実召喚士協会から手強い異形な者達が現れた時に緊急出動し、召喚士としては優秀な成績を修めているためそれの僻みというのがもう半分。


まぁこんなことが月に三回ほど来るので俺と牡丹はそのたびそいつらを蹴散らし俺達はいつもお世話になっているのでヒメに迷惑をかけられてると悟られないように密かに成敗しているというわけだ。


「何も言い返してこないならこっちからいくぞ!。」


相手の男子生徒は早速召喚を行いビッグフッドを召喚した。


相手の男子生徒がビッグフッドを召喚すると辺りの気温が一気に下がり始めた。


まぁ世の中ってのはどんな綺麗ごとを並べてもその背後には暗い面が存在していたり、指摘をされれば言い返せないモノが見えないところに隠されるというものが大半を占めている。


召喚士も同じ、悪い異形の者を退治すると銘うっときながら都合が悪くなれば自身の力を使い人さえ襲う。


俺はそんなことは百も承知なのでさっさと終わらせようと憑依陣を書き手を乗せ牡丹に手を乗せるように向けた。


「めんどくさいなぁ~あんなのみつるが素手で倒せばいいじゃん。」

「だいたいあんな雑魚私の出る幕じゃないでしょ~。」

いつも通り牡丹はダダをこねる。


「お前なぁ、いつも人の食事を奪ってくくせによくそんな態度とれるな。」


「食事と戦闘は関係ありません~どちらかというと私は食べる専門です~それに相手が弱いと力加減とかいちいち考えなきゃいけないしますますいやです~。」


「もはやお前のわがままは呆れを通り越して賞賛に値するよ・・・。」


「そんなに言うんだったら百合ちゃんでいいじゃん。」

「いいデビューになるし経験も積めるし。」


「それこそ出る幕ないわ!。」


そんなやりとりをしていると俺のズボンが引っ張られた。


百合を見ると俺を見つめて「ゆり、やる」と言ってきた。


「ほぉ~ら百合ちゃんもやりたがってるしそれでいこう!。」


やれやれ、いきなり百合を投入することになるとは・・・。

仕方がない、軽くあしらってさっさと終わらせるか。


俺はしゃがみ憑依陣の上に手を置きその手を百合に差し出した。


「ぷっギャッハッハッハッハ!。」

「どんなやつが出てくるかと思ったらなんだそのちっさい鬼は!しかも女じゃねーか!」

「そんな雑魚相手じゃ俺様には勝てねーよ!。」

相変わらずアホどもは頭のネジが外れてるんじゃないかと思うような笑い声をあげている。


百合を雑魚呼ばわりされて俺も少しカチンと来たので言い返すことにした。


「・・・撤回するなよ・・・。」


「あ?。」


「今言った言葉、撤回すんなよ。」


すると百合は俺の手の上に手を重ね俺の妖化が始まった。


身体からは獄炎の炎が燃え上がり俺の体は見る見るデカくなっていく。


「うへー!これが百合ちゃんの本来の力!?そりゃあのデブゴブリンもやられるわ。」

牡丹が驚き呆れながら言葉を発する。


そして完全に妖化が終わるとアホ三人組が完全にビビって後ずさりしていた。


無理もない、いきなり俺の体がメラメラと燃え立ちながらその姿はまるで鬼そのものになったのだから。


「な、なんだこのデタラメな妖力は!?!?。」


「バケモノならお前らも見慣れているだろう。」

「ほら、かかってこいよまぁ気づいたらお前の首は飛んでいるだろうけどな。」






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