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第一話 

「え?。」


俺は自分でも思う程マヌケな声を出してしまった。


「よかったじゃんみつる!新しい契約者増えるよ!。」

ヒメは自分の事のように喜んでいる。


「私も一人で寂しかったし仲間が増えるのは嬉しいよ!。」

牡丹も何やら喜んでいる。


「ダメだ。」

俺は喜んでいる二人を横目に否定の言葉を発する。


「え-!?。」

二人は同時に驚きの反応をした。


「戦力増えるのはいいことじゃん!。」

牡丹が不満そうに言う。


「そうだよ!それにこんな小さな子ほっとくなんて可哀そうだよ!。」

ヒメも同様に言うが少し怒っているようだった。


鬼の女の子は言葉はわからないながらも否定されたことはわかったようで少し涙ぐんでいる。


「これ以上面倒なのを増やすのは嫌なんだよ。」

「しかもこんな小さな鬼の子供じゃ全然戦力にならない。」

「それに俺は・・・。」


俺がそこまで言うと二人は察したように「あー・・・」と言いそれ以上言及するのを辞めた。


「とにかくこんな子と契約するなんて御免だ。」

「それに鬼なら自分一人でやっていけるだろう。」

そう言い俺はその場から立ち上がった。


「帰るぞ牡丹。」

「ヒメも晩飯作りに来てくれたんなら行くぞ。」

二人にそう言い俺は歩き出した。


牡丹とヒメは不安そうに後ろを見ながらみつるの後についていく。


家路につくために歩いていると牡丹が切り出した。

「ねぇみつる、あの子ついてきてるよ。」


一瞬目をやると鬼の女の子は俺達と距離を置きながらもおずおずとついてきていた。

「ほっとけ、そのうちどっか行くだろう。」


「・・・。」

そんなやりとりをヒメは不満そうに眺めていた。


家に着き中に入るとき俺はもう一度後ろをチラリと見たが鬼の女の子は門の前で家の中に入っていく俺たちを見つめていた。


この時俺の胸の奥で何かがチクリと刺さるような感覚を覚えた。


家に入ってからはヒメがキッチンで料理を作り始め俺と牡丹はそれが出来上がるのをリビングでテレビを見ながら待っていた。


テレビではウチの近所でペットや子供が相次いで失踪するという事件が報道されていた。


ヒメの料理が出来上がりダイニングで俺は牡丹に身体を譲りヒメと牡丹は「いただきまーす」と言って晩御飯に手をつけ始めた。


「うん!ヒメちゃんの料理は今日もおいしいね!。」


「ありがとう、牡丹ちゃんにも今度作り方教えてあげるよ!。」


「ホント!?ヤッター!。」

と女性陣二人組はわいわいとご飯を食べていたがなんとなくいつもより空気が重たいことには俺も気づいていた。」


まぁあんなことの後だ、鬼の女の子のことが気になるんだろう。


そんなちょっと重たい空気の中食事が終わり牡丹とヒメは食器を片付けヒメが帰るための身支度を始めた。


そのころには俺は牡丹に身体を返してもらいヒメを見送るため一緒に玄関までやってきた。


「んじゃみつる私帰るから。」


「ああ、飯ありがとう。」


「学校、来る気になったらまた連絡でも頂戴。」


「一生ならないから安心しろ。」


「それじゃ安心できないよ・・・。」

「牡丹ちゃん、このバカが変なことやらないようにちゃんと見張っといてね。」


「了解ですヒメ隊長!。」


「バカとはひどい言い方だなぁ。」


そんなやりとりをして改めてヒメが「んじゃ!」と言って玄関の扉を開けるとザーっとけっこうひどく雨が降っていた。


「うわー降り出しちゃったかぁー。」


「そこの傘使ってけよ、どうせ俺は使わないし。」


「いいよ、すぐ近くだしダッシュで帰る!。」


「そうか、夜道は危険だからな。」

「一応牡丹、召喚一旦切るからヒメを家までついてってやってくれ。」


俺はそう言うと最後に牡丹を召喚するために描いた召喚陣の書かれた紙を取り出しそれを真っ二つに破り牡丹の召喚を解除した。


召喚された異形の者は召喚を行った召喚士を守るためという契約上の約束があるため召喚した召喚士の半径10メートル以上は離れられない。


「あいあいさー!。」


「悪いね牡丹ちゃん。」


「いいよいいよ~私は濡れないし~!。」


そう言い二人は家から出て行った。


俺はそれから自室に戻り今日買ってきたゲームをプレイするためPCを起動し、いつも通りの自宅警備員作業に戻った。


それと同時になんとなくあんまりやっていても味気ない感覚にも襲われた。


楽しみにしてたゲームなのになんだか内容が入ってこない。


俺はふと外が気になり自室の窓のカーテンを開け窓越しに自宅の門を見下ろした。


すると鬼の女の子が土砂降りの雨の中門の前で三角座りでこちらに背中を見せて座っている姿が見えた。


まぁ実体はないから濡れることはないがその姿を見て俺はまた胸の奥にチクリと何かが刺さるような感覚を覚えた。


すると俺のスマホの着メロが流れ出した。


画面を見るとヒメだった。

電話に出ると。


「無事家に着いたよー!。」

とヒメが言ったので俺は。


「わかった。」


と返し適当に手に取ったノートのページ一枚をちぎり召喚陣を描きながら。

「風邪引かないようにさっさと風呂入れよ。」


と電話越しに言い、ヒメが「わかってるよ、ありがとねー。」

と言ったところでヒメが電話を切ったので俺は召喚陣の上に手を乗せながら召喚術を唱え牡丹をこの場に召喚した。


「ただいまー。」


「お帰り。」


「ていうかみつる~あの鬼の子外で座ってるよ?。」


「わかってるよ、どうせすぐいなくなるって。」


「ホントかなぁ~?。」

と牡丹は不安そうに声を漏らした。


それから三日が経ち俺はいつものように部屋に引きこもりゲームをしている。


時刻は午後11時30分。


牡丹は俺のベッドに入り「くかー」といびきをかいている。


「ふぅ、今日のノルまは達成したな。」


俺は今やっているFPSのデイリーミッションが終わって凝り固まった体をほぐすように伸びをする。


すると俺のスマホからよく聞き慣れた音楽が鳴りだした。


画面を見るとヒメからだった。


「もしもし。」

こんな時間になんだろうと思い素直に電話に出る。


「ゴホッゴホッ、みつる・・・私・・・ヒメだけど。」


「お、おうなんかいきなり辛そうだな。」


ヒメは鼻声で途切れ途切れに言葉を放ってきた。


「ごめん・・・ちょっと風邪引いちゃったらしくて・・・ゴホッゴホッ。」


「そら見ろ傘さして帰らなかったから。」


しかし電話越しのヒメはかなり辛そうである。


「悪いんだけどゴホッゴホッ、助けてもらえないかな。」


ヒメも俺と同じで一人暮らしである。


しかし俺と一つ違う点をあげれば俺は両親が新築で購入した一軒家に住んでいるがヒメはアパートの一室に住んでいる。

両親は幼い頃に事故で亡くしており俺もその時の葬儀には参列した。


「今から行くから暖かい格好して布団に入ってろ。」


「わかったゴホッゴホッ。」


俺は急いで上着を着てサイフとスマホを持っていつも通りマスクにサングラスにニット帽を被り部屋を出ようとしたところで牡丹をどうしようかと気づいた。


まぁ起こせばついてくるだろうが事情を説明してる時間がもったいないと思いポケットの中の召喚陣の紙を破いた。


念のため何かあった時のためにいつでも牡丹を召喚できるように普段外出するとき持ち歩いているノートを持って家を出ることにした。


家に鍵をかけて早歩きで俺はヒメの家に向かおうとしたとき門に座っている鬼の女の子に気づいた。


まだいたのか・・・と俺は思ったが今はそれどころじゃないと頭を切り替え門を開けヒメの家に向けて歩き出した。


ヒメの家に向かって歩き出すと鬼の女の子はやっぱりついてきた。


一定の距離を置きつかず離れずその手にあの紙を持ってついてくる。


俺が十五分ほど歩きヒメの部屋の前まで来るとどうやら明かりをつけていないらしい。


一応チャイムを鳴らしてみると返事はない。

ドアノブをひねるとドアは鍵がかかっていなかった。



「ヒメ、入るぞー。」

と一声かけ家の中に入ってみる。


やはり電気をつけておらず真っ暗だったのでスマホのライトで中に入っていったが奥の部屋を見ても人の気配はなく布団は敷いてあるがそこにヒメの姿はなかった。


すると俺のジーパンを引っ張られた感覚があったので足元を見てみると鬼の女の子が一緒に入ってきていた。


入ってきちゃったのかよ・・・と俺は思ったが鬼の女の子の様子がおかしいことにすぐに気づいた。


紙を持ってないほうの手で俺のジーパンを引っ張り紙を持ってるほうの手の人差し指を何もない壁のほうを指さし凄く怯えているようだった。


最初は俺の気を引こうとしてるのかと思ったがそうではないらしい。


するとここでまた俺のスマホが鳴った。


画面を見るとやはりヒメだった。


「おいヒメ、今どこにいるんだよ部屋まで来たぞ。」


「ゴホッゴホッあーごめん、今みつるに負担かけさせないようにしないとって思ってスポーツドリンクとかコンビニで買ってたところゴホッゴホッ家の鍵は入れ違いになるかもと思ってワザと開けといた。」


「そういうのは俺の役目だろうが。」


「だいたい俺は日がな部屋に引きこもってるだけだから負担とか思わねーよ。」


「ゴホッゴホッヘヘッそういうとこ昔から変わらないよねみつる。」


「はぁ?どういう意味だ?つか今どこにいるんだよ。」


「みつるはゴホッゴホッいつもはツンケンしてるけど本当は優しいってこと。」


「意味わかんねーよ、ってそうじゃなくて今どこにいるんだ?。」


「ゴホッゴホッあー今もう帰ってるところだから5分くらいで・・・。」


「ヒメ?どうした?。」


「みつる・・・なんか変なのいる・・・。」


「変なのってなんだ異形の者か?。」


「多分そうだけど・・・何か食べてる・・・。」


「食べてる?何をだ?。」


「多分・・・人・・・子供食べてる・・・。」


「はぁ?そんなやつこの街にいるわけ。」


「ヤバイ!見つかった!ドシンドシンドシンドシンドシンッ!きゃあっ!ブツッ。」

「プープープープー。」


ヤバイ!ヒメが襲われた!でも場所がわからない!どうする・・・考えろ。

ヒメの言葉を思い出せ。


あと5分、これはおそらくあと5分で家に着くと伝えたかったんだろう。

それとわずかだが電話の最初ほうで電車の踏切の音が聞こえた。


そしてヒメは最寄りのコンビニから帰ろうとしていた。


今体力のないヒメは最短ルートで帰ろうとするだろう。


これらの情報を総合すると・・・あの緑丘公園付近だな、しかし的確な位置は少しバラつきがある。


ん?その方角って今鬼の女の子がさしてる方向じゃないか!。


「もしかして場所がわかるのか!?。」


鬼の女の子は一瞬戸惑ったような表情をしたがコクンとうなずいた。


「案内してくれるか?。」

と身振り手振りで伝えると鬼の女の子はコクンと頷いてスタタターっと走り出し部屋を飛び出して俺を導いてくれた。


待ってろヒメ、今すぐ行くからなんとか持ちこたえてくれ。



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