プロローグ
プロローグ
「まーたこいつかよ。」
「お顔真っ赤だな。」
「まぁ俺に5回もキルされてればなるわな。」
古来より世界では妖や妖怪、UMAエトセトラエトセトラなどの悪い異形の者達によって様々な被害を引き起こされてきた
規模の大きいものであれば噴火や地震、津波に雪崩、神隠しや誘拐。
小さければ停電や不審火、騒音に家の物を勝手に動かされたりなどのイタズラ等々。
困った昔の人たちはそれら異形の者達と接触ができる一握りの人間達に悪いことを行わない、むしろ人間に協力的な異形の者達に事情を話して悪い異形の者達の悪行を止めるように言ってくれないかと頼んだ。
頼まれた人間達はそれを悪いことを行わない異形の者達に伝え理解のある悪い行いをしていた異形の者達は悪さをすることをやめた。
しかしそれでも悪行を行う異形の者達や逆にそれを言われ怒ってしまい事態を悪化させる異形の者達もいた。
そこで異形の者達と接触ができる人間達は人間に協力的な異形の者達と契約を結び召喚術や口寄せをして異形の者達を召喚し目には目を、異形な者達には異形な者をという形で悪い異形な者達を退治することに成功した。
それがきっかけでその異形な者達を召喚できる人間は召喚士と呼ばれ、召喚士達は現代の日本でも依頼されたり悪行を行う異形の者達と遭遇したら退治する。
という文化が根付き今でも人類は悪い異形な者達と戦っている。
そして召喚士の中でも取り分け召喚能力が高く異形な者達とより強いコンタクトを取れる召喚士達がいた。
その召喚士達は召喚した異形の者を一時的にその身に憑依させることができ、憑依した異形の者は一時的ではあるが実体を持っていることになり召喚士達の持つ異形な者達への適合値により本来持っている能力や力が潜在解放されとてつもない力を持った妖人となり悪い異形の者達と戦うことができる。
その憑依を行える召喚士。
現在自分の部屋で絶賛FPSをプレイし日々自宅警備員として仕事を全うしているのが俺、千石みつる17歳。
「ねぇーみつるひまぁーひまひまひまひまひまひまひまぁー!。」
「だったら召喚前に戻ってどっか散歩でも行って来いよ。」
「それだと憑依しておいしいごはんが食べれないじゃん!。」
「お前達は飯なんか食う必要ないじゃんか。」
「必要がないのとご飯が食べたいのは関係ない!。」
「ていうかいい加減外出くらいしなよ!毎日毎日昼間なのにこんな暗くてジメジメした部屋に閉じこもってさぁー!。」
「またヒメちゃんに怒られるよ!。」
隣でピーピー騒いでいるコスプレみたいな恰好してる女の子は牡丹。
自称天狗の妖怪らしいがそんな風には見えない。
俺が唯一契約している妖である。
「運がよかったな牡丹、今日はこれから外出するぞ。」
「やったー!どこへ?。」
「秋葉。」
「うえーどうせまた新しく発売のゲームでしょ。」
「嫌なら付いてこなくていいよ。」
「行くけどさぁ~・・・じゃあ帰りにファミレス寄ろ!。」
「まぁそれくらいならいいけど注文は三品までな。」
「それじゃお腹一杯にならないよ!。」
「お前なぁ、食い終わって憑依が抜けた俺の身にもなってみろ。」
「胃がもたれて大変なんだぞ。」
「ブーッまぁいいですー今日はそれくらいにしといてあげますー。」
「そうと決まれば外出の準備をするか。」
俺はせっせと着替えをして帽子にサングラスにマスクをつけて準備を終えた。
「毎回思うんだけどさぁ~なんでそんな恰好で外歩くの?不審者にしか見えないよ。」
「バッキャロウェイ同じ学校のやつらに見つかったりしたら嫌だからに決まってんだろ。」
「みつるが学校に行きたくないのはわかるけどさぁ~もっとオープンな心を持ったほうがいいと思うよ?。」
「余計なお世話だ。」
そう言いながら俺は自室を出て太陽の下に出た。
流石にサングラスをかけているとはいえ久々の日光はキツイなぁ。
さっさと行って早めに帰ろう。
俺は足早に駅まで歩き電車に乗り目的地の秋葉に着いた。
「うっへ~やっぱ人混みすごいねぇ~。」
「お前は実体ないから関係ないじゃん。」
「まぁねぇ~あったとしてもこんな風に飛んでればいいだけだし~。」
「クッソー憑依使うと目立つしいつも通り歩きだな。」
俺はそう言い一番近くのゲームショップまで行き目的のゲームを手に入れすぐ近くのファミレスに入った。
道中同じく召喚士の人間二人ほどに俺と牡丹は見られたが契約者同士と判断され何事もなかったかのようにお互い振る舞い事無きを得た。
ファミレスの中も結構人がいたが二人用の席へ案内され席に座った。
店員さんは「ご注文が決まりましたらお手元のボタンでお呼びください」と言い別の席の対応に行った。
「はやくぅ~はやくぅ~!。」
嬉々とした表情で牡丹が催促してくる。
「わかってるって。」
「それより絶対に妖化はするなよ。」
「わかってるわかってる!。」
俺はその言葉を聞き席の端に置いてあるナプキンを一枚取りいつも通りの手つきで憑依をするための陣を描きその上に手を乗せた。
そして牡丹が俺の手の上に手を重ね陣がわずかに光ると吸い込まれるように牡丹が俺の中に入ってきて、体の自由を渡した。
「あ~やっぱ実体があるっていいね!生きてるって感じがする!。」
「(あんまりデカイ声を出すな。)」
俺は牡丹の意識の中で声を発する。
「ごめんごめん久々だから嬉しくて。」
「(はやくメニュー選んで注文しろ。)」
「(あと食べる時マスクは外していいがサングラスと帽子は取るなよ。)」
俺がそう注意すると牡丹はメニューを手に取り三品でできるだけ多く食べれる品を決めボタンを押した。
するとすぐにさっきの店員がやってきて注文を聞いてきた。
「これと!これと!これお願いします!。」
牡丹は指を指してメニューを伝えると「かしこまりました少々お待ちください」と店員さんが答え注文を厨房に伝えに行った。
牡丹が「ルンルンルン~♪」と鼻歌を歌いながら料理を待っていると注文してから5分ほど経過したとき料理が運ばれてきた。
牡丹は「うわっはぁ~!」と喜ぶと「いただきます!」と言いそれらをナイフとフォークを使って凄いスピードで食べ始めた。
周りの客達はその食いっぷりに驚いてこちらを見ていた。
やれやれいつものことながらこの注目は何度経験しても嫌だね。
食べ終わると「おいしかったぁ~ごちそうさま!」と言い牡丹は俺の体から出て体を返してくれた。
同時に胃がすごいもたれてる感じがしたがまぁいつもの事だと諦め会計をし帰るために店を出て駅に向かい電車に乗った。
電車に揺られている間牡丹は「次はあれとあれが食べたい!」とまだ食べ物の話をしていたが俺は適当にそれを聞き流し自宅の最寄の駅で降りノロノロと家に向かって歩き出した。
河原を歩いてキレイな夕日を眺めながら時刻を確認するとすでに16時になろうとしていた。
するとあと5分ほど歩けば家に着くというところで見慣れた髪型と後ろ姿と制服姿の女の子が電柱に座り込みこちらに背中を見せていた。
「あれ?あそこにいるの。」
と牡丹が指さす。
やれやれと思いながら俺は近づき声をかけた。
「こんなところで何やってんだヒメ。」
その女の子はこちらに振り向くと驚いて言葉を返してきた。
「みつる!外出するなんて珍しいじゃん!。」
「牡丹ちゃんもこんばんわ。」
「ヤッホーヒメちゃん!。」
「まぁ俺は野暮用だよ。」
この子は黒島姫菜。
幼稚園の頃からの付き合いで俺と同じ召喚士。
両親が海外で働いている俺の面倒を見てくれてるヤツ。
正直ちょっとうっとおしいくらいだけどどうせ「ほっといてくれ」と言っても辞めないので俺はあえて何も言わない。
「んで?何してんの?。」
「ああ、あんたんちに晩御飯作りに行こうとしたらこの子がいて。」
そう言うとヒメはその場から少しズレてソレを見せてくれた。
そこには可愛らしい小さな女の子の鬼がいた。
「鬼?。」
俺は珍しいと思わず疑問形で聞いてしまった。
「かわいい!。」
と牡丹は目をキラキラさせる。
「うん。」
ヒメは元気なさそうに俺の問いに答えた。
「なんか悪さでもしたのか?。」
俺は普通に疑問に思ったことを聞いてみた。
「ううん、そうじゃなくてこの子が困ってるみたいでさ。」
「困ってる?。」
「うん、どうも人の言葉が分からないみたいでこの地図の場所に行きたいらしくて一緒にあちこち歩いてたんだけど私も方向音痴だから全然わからない上に色々聞いてたんだけど何を言っても首をかしげるだけなんだよ。」
「迷子の鬼かぁ珍しいね!。」
と呑気な牡丹。
俺が近づくとその小さな鬼の女の子は少し怯えながら俺をじっと見ていた。
俺も座り込んで何か話しかけようとしたときその手に2枚の紙を持っていることに気づいた。
「その紙見せてもらっていい?。」
と言いながら俺は身振り手振りのジェスチャーで伝わるように話しかけてみた。
すると鬼の女の子はプルプルと震えながらその紙を渡してくれた。
1枚目を見ると幼稚園児が落書きしたような物だったが確かにどこかの場所を指してる地図が書かれていた。
「うわーこれじゃ流石に場所見つけるの厳しいねぇ~。」
牡丹が思ったままの言葉を発する。
いや待て・・・この場所・・・。
それから俺は2枚目の紙を見てみた。
2枚目の紙はクシャクシャになった人間と異形の者との召喚を許諾する契約書だった。
マジかぁ・・・。
「何かわかった?。」
ヒメは申し訳なさそうな顔で俺に聞いてくる。
「おおよそわかった。」
「さっすが学校でもトップの成績を誇ってたみつる!。」
牡丹は相変わらず呑気に言う。
「ホント!?じゃあこの地図の場所は?。」
「俺んち。」
「ええ!?。」
「なんでみつるんちにこんな小さな子が?。」
「わからん。」
「それよりヒメ、お前この2枚目触れるか?。」
「そりゃ触れるでしょ。」
スカッ。
「あれ?。」
スカッ。
「やっぱりか。」
「まさかそれ。」
「おそらくだがこの2枚目を見る限り俺に契約を申し込みに来たんだろう。」
召喚士と異形の者の契約書は人間が書いたものはダメで異形の者が書いた書類でなければ契約は成立しない。
なぜなら契約書は書いた異形の者と契約する異形の者が選んだ召喚士しか触れない。
その紙を俺が触れているということは・・・。
などと俺が考えていると鬼の女の子が初めて声を発した。
プルプルと震え怯えながら俺と紙と自分を順番に指さし。
「え・・・えーやく・・・。」
と言葉を発した。