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悪役少女の歌声はお気に召しますか?  作者: 星花
1章 学園にはまだ程遠い?
9/13

9,お茶会について話しましょうか(2)

 図書館行きの前日の日。


「…で?一体どういうおつもりで?」


 私の部屋の中、図書館へ行くときにどういった服を着ようかと迷っていたところにダーシェイさんがそう私に問いかけてくる。何やら不満そうな顔をして。


 私は平然として服をあさりどういう組み合わせでいこうかしらと考えながら、その片隅でこれはギュリューのことかなと当たりをつける。


「ギュリューのことかしら。」

「他にお心当たりが?」


 この静かな圧力がかった感じ、意外にも怒っているらしい事を感じる。というかやはりギュリューの事か。まぁ他に心当たりなんてあるわけ無いですもの、当然ですわよね。


「何故お茶会に行くか、その理由を聞きたい?」

「…まぁ、それもあります。」


 他にも質問あるんかい!と内心ツッコミを入れながらも、私は一つ咳払いをしてから作業をする手は止めずにダーシェイさんの質問に答える。


 ええと、お茶会に参加する理由。理由よね。それは至って簡単な動機。


「今のうちに令嬢と仲良くなっておこうと思って。」


 前にダーシェイさんやクロエが言っていた、他の令嬢と話したりするという言葉に私はピンときたのだ。…もし運がよくギャルゲームの攻略対象令嬢に会えて仲良くなれれば、もしかしたら嫉妬からの死亡フラグなんてことはなくなるのでは?と…。


 この私の真意に気付いてかダーシェイさんはため息をつくだけであったが、今度は話の本命、ギュリューについて。


「あいつ、本当にゲスいんですよ?そんな奴にあって、お嬢様が何かされたら…」


 そんな事も考えたくもないのか、ダーシェイさんはそこで話を止めて視線を斜め下にそらす。言いたいことは分かる。私もその気持ちが痛いほどわかる。


 ギュリューは本編で浮気を繰り返してばかりの男になっている。主人公ジゼルが想いを寄せても、他の女の気配がちらつく、そんな切なく後味の悪いルート。それがギュリュールートであり、なかなかに人気がなかった…というかこのルートをクリアした人からはほぼ嫌われていた。


 そしてそんなギュリューに目をつけられたら最後、やつのハーレムに仲間入りなんて事になってしまうのだ。何故か本編でシャルロッテに振り向く素振りを見せなかったギュリューも、少し歪んでいっているこの世界のストーリーではどうなるかは未知数なのだ。


 …だが!


「なら、ギュリューに会わないように過ごせばいいじゃない!」


 私が自信満々にそう言って、作業している手を止めてダーシェイさんを見てえっへんと言わんばかりに腕を組み笑ってみせると、ポカンとした顔をしてからハッとなったダーシェイさんが言う。


「…なるほど、私、お嬢様、ついでにクロエの三人構えならギュリューも避けられるかもしれないし、主催への挨拶はギュリューの姉がいるから…。」

『ちょ、ついでって何よ!』


 他にも言い方あるでしょ!と叫ぶクロエに対して何も返さずにダーシェイさんは更に考えを深めていって、果てには私を見てよく考えましたねこんな事と微妙にだが褒めてくれる。えへへと笑ってみせ、やはりなかなかの良いアイデアであったなぁと自身の考えに再度思考を巡らす。


 ギュリューには関わらない。それが困難なのはある理由があるせいでもあった。それが必ず主催者の関係者などの一人には必ず話しかけるという事であった。今回はギュリューの家が主催で、ギュリューに話しかけなくてはならないの!?と考えているときにビックリして叫びたくなったが…ふと思い出したのだ。


 ギュリューの姉とは到底思えないほどに可憐で清楚な大人しい女性、エーファ・ネッデラトゥの事を。


 実はこの人ギャルゲームの攻略対象キャラで、弟とは打って変わってなかなかに人気な人であった。その事を思い出し、私はこれは一石二鳥なのではないかと思った。主催に話をかけ、あわよくばここでさり気なく仲良くなっていくというこのプランに。


「三人寄れば文殊の知恵、と言いますもの。このプラン、必ず成功させるわ!」


 私が一人でガッツポーズを決めていると、二人からは苦笑したような、それでいて安心したような溜息が出る。ダーシェイさんは仕方ないですねと言い、クロエはシャロらしいと言えばシャロらしいわね〜と呆れたような言葉が出る。むむ、シャロらしいとはどういうことですか。


 そんなこんなでお茶会についての話は決着がついたが…私は少し気になっていたことをダーシェイさんに問いかける。


「そういえばダーシェイさん、この前アルセンが来たのって仕様なんですか?」

「…いや、実はそこらへんはよく分かっていないんだ。」

『…分からない、ってこと?』


 クロエの問いかけに対し、ダーシェイさんは縦にうなずいてみせた。それにさらに疑問が募っていく。


 私はこの前のアルセン訪問が、このゲームの仕様…いわば強制力のような、ゲームが始まるにあたっての前もったフラグのようなモノなのかと思ったのだ。実際なぜだかアルセンに気に入られてしまってあの日別れ際に今度は我が家にと言われてしまったものだから。


 どういうことだと私が首を傾げて悩み考え込んでいると、同じく考え込んでいたダーシェイさんが引きつったような顔になって、まさかだけど…と言う。


「実はオリジンの制作途中に『攻略対象の誰かはシャルロッテを好きになるとかはどう?』って案が出て、実際そういった話を作ったのだけれど結局現状維持が良いと言うことになってそれはお蔵入りになったということがあったのだけれど…。」


 それを聞いた私とクロエはポカンとした顔になる。というか驚きのあまり開いた口が塞がらない。


 つまりは制作途中に出来た話の一部が…先日反映してしまったということ?


 私が驚いてぎょっとした顔になると、ダーシェイさんは気難しそうな顔になってでも、と話を続ける。


「ありえなくはないんだよ…僕が従者になってる時点で。」

『どういう意味?』


 クロエが聞くと、ダーシェイさんは実は『救われたグレッグ・ダーシェイが実は影からシャルロッテを守る従者になる』という話しが制作途中に作られこれまた没になったという。曰くダーシェイは生きているか死んでいるか、そのハラハラした感じを最後までプレイヤーには感じてほしいとのこと。


 いやまさかそんな…と頭を抱えたくなり、手をおでこに当ててため息をつく。でも、その事を知っていたのなら、何故ダーシェイさんは私の従者になったのだろう?と私が尋ねると、ダーシェイさんはなんてことないようにもし仮に私が自分と同じ転生者で、一人で困っていたときに側で助けてあげたいからというイケメン回答をした。


 いや、その心遣いはとっても嬉しいのだけれど…嬉しいのだけれども、その時点ですでにこの世界は本来のストーリーとは変わったものになったと言う事なのだろうか。


 念の為他に没になったものはあるかと聞いてみると、ダーシェイさんが驚くべきことを言ってきた。


「実は販売予定に間に合わないという理由でなくなく没になった案があって、それが主人公と結ばれなかったキャラが他のキャラと結ばれるっていうものなんだけど。」

「『えええええ!?』」


 二人揃って驚き声を上げる、と、どうなさいました!?と言う声とともに軽いノックのあと、私の部屋に見慣れた侍女さんが入ってくる。その侍女さんは部屋を見渡したりしながら異常がないか確かめているようだけど、私がただダーシェイさんの話に驚いてしまったと伝えると、侍女さんはホッとしてそうですかと言い…ふとダーシェイさんに目をやったと思うと、すぐに失礼致しましたと言って部屋から退室した。


『…私ね、二人が言うストーリーっていうのからは離れた世界になったらしいから、過保護なあの父親の脅しはなくなって侍女の監視は薄れたと思ったの。』

「どうやら旦那様の溺愛度は下がったものの、侍女のお嬢様愛は薄れないようだね…あんな風に脅された後でも、真の主には忠実なんて、本当にこの世界は未知数だよ…。」


 そんなに声が大きかったかしらと私が一人恥ずかしがっている中、横では苦い顔をしたクロエと少し青ざめたような顔をして何故か固まっているダーシェイさんがコソコソと私には聞こえないように何やら話していた。何を話しているかは聞こえなかったけれど、侍女さんの忠誠心についてを話しているようだった。そうね、過保護なお父様の脅しにも耐えて私を守ってくれるような人達なんだもの。…でも本編でひどくシャルロッテを甘やかしていたお父様に対して忠誠を誓うって、どこをどう、尊敬したのかしら…?


「…あ、そうだダーシェイさん。その没になった話について細かく教えてくれませんか?」

「そ…そうだね。」


 話を変えた私に対し、まだどこか青ざめたような顔をしながらもあははとダーシェイさんは小さく笑う。一体何が面白いんだろうと疑問に思いながらも、私はダーシェイさんの話を真剣に聞いたのだった。











 その後ろで、呆れたように笑うクロエがつぶやいた言葉を聞くこともなく。


『シャロは気付いていないかもしれないけれど…もう既にあの侍女達はあなたに首ったけなのよ。』


 知らぬところで悪役から遠ざかっていた事なども、知る由もなく、私は日々を過ごしていたのだった。



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