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悪役少女の歌声はお気に召しますか?  作者: 星花
1章 学園にはまだ程遠い?
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6,魔法の特訓!

小話的なふわっとしたお話、やらかすのはまだまだ先でした。

「いい、魔法は要はイメージが大事なの。分かった?」

「うう…はいぃ。」


 シャルロッテ、只今7歳。6月(ジュアン)頃の暖かな日差しのもと、私は家の庭にてダーシェイ師のもと魔法の特訓に励んでいた。あ、過去形じゃない。励んでいます。


『頑張ってシャロ〜イメージイメージ!』


 呑気にふわふわと飛び回り、私が魔法に失敗したら一緒にどこが駄目だったか親身になって考えてくれるクロエがそう声援してくる。こうされるのも、もう日常だ。


「あら、またやってる。ふふっ、頑張ってるわね、私達の子は。」

「そうだねゼノ。健気なことじゃないか。」


 家の玄関近くから通り際に私達の特訓を見てそう微笑ましく言うお父様とお母様。お母様はあれからどんどん人間らしくなり、今ではすっかり可愛らしい少女のようになって過ごしている。人形の姿が幼い少女の姿だったから、そのまま成長はすることなく見た目は愛らしい少女、中身は大人のまま。…前世で何処かで聞いたフレーズが頭をよぎり、なんとなく笑いそうになってしまう。


 それを目ざとく見たダーシェイさんは、こらお嬢様集中!と私を叱責してくる。叱られては仕方ないと真面目な顔になって、私は目を瞑り両手に自身の魔力を集中させる。


 イメージする。私の魔力を。闇の魔力を。


 しかしいくらやってもこれといった魔法が使える訳ではなかった。ただ脳裏に浮かぶのは漆黒の闇ばかりで、私が使うことができるという闇の魔法の扱い方は皆目見当がつかない。


「…どうですか。まだ、手応えがないですか。」

「はい…。」


 ダーシェイさんに問われ、素直にそう答える。実はこの会話も何回目になるか分かったものではない。何せ魔法の特訓は、かれこれ半年は行っているのだから。


 何故魔法の特訓をしているかって?それは私もダーシェイさんに言われてからハッとなった事なんだけど…実はこのシャルロッテ、魔法があまり得意ではなかった。魔法が得意でないと伯爵令嬢としてどういう事かといびられてしまうのでは、と思い学園に入る前から備えをしようということで…今に至る。


 ダーシェイさんは草の魔力を持っていて、自由に花を咲かせたり蔦を操ったりする事ができる。いかにも草の魔力らしい魔法だと思う。


 だが。私は自分のまだ小さいちっぽけな両手を見つめて、はぁとため息をつく。ため息の数だけ幸せが減っちゃうのよなんて誰かに言われたことがあるが、知ったこっちゃない。やりきれない気持ちでいっぱいいっぱいだった。


 無力で、ちっぽけ。


 そう思うと、私には魔法の能力がないのではと思ってしまう。本来であれば、この世界、魔法についての知識を十分に所持していればそれを扱うのは簡単という風に出来ている。


 おいおいおい、なんで私は使えないのとツッコミを入れてしまいそうになるが…。



 …ん、待てよ…?


「はい、ダーシェイ先生!」

「何でしょうお嬢様。」


 私はダーシェイさんに対し、素朴な疑問をぶつけてみた。


「魔法って、魔法についての知識を持っていれば使えるんですよね!」

「まぁそういう風に作ったからね。」


 メタ発言はひとまずスルーして、私はなら…と言葉を続ける。


「私が魔法を使えないのって、単純に知識が足りていないせいじゃ…?」

「…なるほど、意外なところをつかれましたね。」


 私の指摘に対して、それもそうかとダーシェイさんは考え込む。つまりはまだ7歳の女の子に、学園に通う5年も前に魔法についての知識を教えようとする家はそうそうないのではということだ。私見た目はややつり目なところを除けばフランス人形のように愛らしく色々なものを着飾るのが楽しい女の子(一応悪役)ですので。こういう子にはまず令嬢としての作法を大前提として学ばせるのだ。


 ダーシェイさんはその事に気が付き、私には魔法の知識はないのだと納得した表情になる。確かに魔法に対してのイメージはできるが、本質が分からなくちゃ何も始まらない。味や名前は知っていても、実際作り方を知らなければ作れないみたいに。


『じゃあ、どうする?魔法に関する書物を見に行く?』

「あら、そんなものがあるの?」


 私がクロエの言葉に驚いていると、クロエは知らなかったの?と私がゲームに関しての知識が足りていないことに逆に驚く。いや私そこまでガチじゃないんで…。


 ダーシェイさんはそうだなぁと考え込んでから、今度魔法に関する書物を多く扱う図書館に行こうかと私に提案した。私が二つ返事で提案をのむと、ダーシェイさんは今度は礼儀作法について色々勉強しようかと言う。私は縦に頷いて、ダーシェイさんの後ろをクロエと一緒に歩いて家に戻る。


 私はこの世界の図書館に行けるとか、はじめて家の外に出れるのだと思うとウキウキしたような気持ちになって、軽い足取りで歩いていったのだった。



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