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悪役少女の歌声はお気に召しますか?  作者: 星花
1章 学園にはまだ程遠い?
2/13

2,転生先は変えられないらしいです

もう今のうちに投稿しちゃえ!と投稿しておきます。(2018,3,12ほんの数文字訂正しました、特に今後の物語に影響はありません。)

 ふと目を覚ますと、視界いっぱいにキラキラとした天蓋が広がっていて、ああまるでお姫様にでもなったみたいだわ…なーんて。実際お姫様になってしまったので笑えないジョークなんですがねぇ。


 こんにちは皆々様、ゲームの知識を思い出しすぎて知恵熱になり三日寝込みました。シャルロッテでございますわ。ちなみに食事などはうまいこと私付きのメイドさん(侍女さんとも言うのかな?)がなんとかしてくれて、健康です。流石に二度も息を引き取りたくはない…。


 ちなみに私、前世ではどうやら学校の登校中に猫が赤信号の歩道を渡ってトラックに轢かれそうになったのを間一髪で助け、自分はと言うと死んでしまったらしい。なんか泣けてくるよね、まぁ猫好きだし尊い命救ったと思います。猫アレルギーだったけどね。


 そんなことよりも、とハッとなる。そう、私は今奇跡的にも16歳の知識を持ってまだ6歳の女の子として転生した。きっと猫を助けたから神様が来世くらいは長生きさせようと遅くないうちに記憶を思い出させてくれたのか。とにかく、改めてこの世界について確認する前に…。


「よっこいしょ…っと。」


 ふわふわの毛布から這い出て起き上がり床に足をつけると、ひんやりとした冷たさが足に伝わる。裸足だから、より冷たく感じるのだろうか。とにかく起きれるようになるまでは回復したらしい。その足で部屋にある姿見鏡の前まで歩く。


 父親のアデルの顔を見て前世をふと思い出すなんて、どんだけアデルのこと忘れられなかったんだろう、前世の私…。まぁ思い出すに越したことはない、ないが。


「…どっからどう見ても、シャルロッテねぇ…。」


 いっそ感心してしまうほどには、鏡には整った顔立ちをし眩しいくらいの金髪を結ぶことなく流してその緑の瞳で男性プレイヤーを魅了したシャルロッテ(6歳バージョン)がいた。我ながら可愛らしい顔をしているが、ほんの少しつり目なあたり悪役らしさを感じる。


 本当に、私はシャルロッテなんだ。『あの』がついてもおかしくない…あのシャルロッテ。


 アデルや侍女さんが来ない今のうちに、設定とかを思い出そう。もう頭の中には因数分解とかそういうのはすっぽり抜けて今はゲームの内容が大部分を占めてるので思い出すのには自信しかないけど。


 『To you who loves my love!』_魔法を主に学ぶエンヒャル学園に通うことになった主人公達の物語をルート分岐などをしながら読み進めていく一つのノベルゲーム。


主人公は男女どちらでも選べ、女の子主人公、初期名ジゼルはあまり高くない身分でありながら稀な力を有する者として学園に通い、そこで身分違いの恋に紆余曲折しながらもハッピーエンドを目指すザ・王道全年齢対象乙女ゲーム。


 かわって男の子主人公、初期名ハルは身分違いの恋というよりも本当の愛とは何かなど少し深いストーリーになっている全年齢対象ギャルゲーム。ハーレムエンドもあるらしいが、隠しキャラなる子を見つけ好感度マックスにしないとそれに行き着けられないらしい。私も少しプレイしたが、隠しキャラの検討もつかなかった。


 さてここで皆様も気になるシャルロッテは、なんと乙女ゲーム、ギャルゲーム、全ルート共通キャラのテンプレ悪役令嬢なのであーる。大雑把に説明していこう。


 まず乙女ゲームバージョンのシャルロッテは、主人公ジゼルが好きになった、つまり確実にルート分岐した後の攻略キャラを好きになり身分の低いジゼルをことごとくいじめるものの…通称断罪イベントにていじめの証拠を突きつけられ、身分剥奪、国外追放の末にその罪の重さと失恋の苦しみにより自害してしまう。


 …まぁ、まぁひとまず落ち着こう。頭抱えたくなるけど!


 ギャルゲームバージョンのシャルロッテはそれとなく主人公ハルの事が好きだという描写があるが天の邪鬼なのか素直になれずに拗れて拗れ、ハルが好きになった攻略キャラをいじめるようになり悪役少女に昇格。そしてこちらでも断罪イベントにて身分剥奪、国外追放、自害…。


 …あれ?もしかしなくとも、私の未来に救いなし?だってこれ、何かのキッカケで乙女ゲームの攻略キャラかハル(仮)を好きになってしまったら…私的にはバッドエンドじゃない??



「そんな馬鹿な!」


 思わず鏡の前でうずくまり叫ぶ。顔を上げた先、鏡に映る金髪が綺麗なその少女は、もとの色が白いせいで顔色の区別は分からないが明らかにその表情は絶望に歪んで、ひどい顔をしていた。


 するとしばらくしてパタパタと忙しい足音が数メートル先の扉の向こう、我が家の廊下から聞こえその音が振り返り見た扉の前で止まったと思うと、「シャロ!?」というどこか聞き馴染んだ声とともに扉が開く。


 案の定扉を開いたのは私のお父様、アデルであった。


 そこでふと、そういえばお父様は一人娘の私にはとても甘いのとお母様に言われましたわ、というシャルロッテの記憶が呆然と浮かんだ。私も今こそ『シャルロッテ・フィルフィテッシャオ』なのだ。お父様がどれだけ私に関して心配性なのかもわかってしまう。


「シャロ!何か叫んでたみたいだけど大丈夫かい?体調は?もう平気?」


 饒舌に私にポンポンと質問を投げつけて、眉を下げて泣きそうなすごく心配そうな顔をして私を覗き込むその人は、ゲームで「冷徹伯爵」と呼ばれていた人とは大違いだと。何だかおかしく感じてしまって。


「ふふっ、何でもありませんことよお父様。」


 だからこそ不覚にも我が身に降りかかる災いのことなどもすっかり忘れて、自然と笑みが溢れる。


 けれど口で言うだけで収まるお父様ではない。しっかりと体調の面は平気だと伝え、自分が長く寝込んでいたことに驚いていたと伝えれば、まだ不安そうなものの引き下がってくれた。それに流石お父様、私に甘いだけあってよく私のことを見ているらしい。部屋に入った瞬間に見た私のひどい顔に驚いたらしく、次はそのことで質問をされた。


 いやいや、まさか答えられるわけない。実は転生して前世の記憶が蘇り、将来好きになった人にこっぴどく振られてバッドエンド迎えることに絶望していましたなんて。流石のお父様でも「(シャロの気が触れた…!)」ってなるに違いない。あ、想像するにも難しくないあたりも流石お父様っす。


 ん〜でもどうやって答えよう。そう思考を巡らせることコンマ数秒。お父様に効く言葉を編み出した。


「ええと…夢の中で、私の運命のお方と呼ばれている人、が、私をその…傷つける夢を見て、怖くなって…。」


 つっかえつっかえ言う感じ、なかなかリアリティがあると我ながら思う。6歳のまだ小さな女の子の両手をきゅっと丸めそれを口元に持っていき、うつむき話してからの後半は目の前に立つお父様を上目遣いで見る…。


 そう、作戦その一『あざとさ作戦』。話の内容に関しては、お父様が何か良い打開策でも言ってくれればいいなという思いでありのまま言うことにした。


 するとお父様、上目遣いの私に「うっ!」と打ちのめされ顔を背けたと思うとそのまま両手で顔を覆ってしまいました。そんなにダメージでかいですか愛娘による上目遣い。いや完全に言い負かせとかを狙った確信犯であり策士なんですけど、ここまでの反応を見せられると何だか逆に心配になってくる。顔を覆ったまま何故かプルプル肩を震わせてるし。小声でなんか言ってるし…。「ちょっとこれは…何これ…何なのこの可愛い生き物は…。」何だか前世でよく似たような言葉を聞いた気がするのは私だけだろうか。お父様?お父様ちょっと大丈夫ですの??


「あのぅ、お父様?夢のことは、私もう大丈夫ですので…お父様は少しお休みになられたら?」


 そう言うと、お父様は私に目線を戻し…それから「何かあったら絶対に言ってね!」「絶対、絶対だよ!」とまるで女子のような会話をし、最後までうるうると泣きそうな目をしてひとまずは部屋から出ていった。


 パタン、と扉が音を立て閉じて部屋に静けさが戻る。お父様のキャラ崩壊を垣間見た気がするが、私は何も知りません。そうこう考えしばらくして、今度はゆっくりと立ち上がり深呼吸をする。息を吸って、吐いて。瞼を閉じ、開ける。一気に冷静さが戻ったのか、さて、何か良い案はあるだろうかと思考が、血液が巡っていくのがわかる。さっきは転生したことに驚いていたのだ、冷静になれず情緒不安定になって現実を受け止められなかったのも仕方ないか。


 意外にも私のあざとさ作戦はかなりの功を成し、お父様が何かいいことを言ってくれるかと思ったがそれもなかったので、自力でアイデアを考えるしかない。その結果、なんとも単純で実行しやすいアイデアを考えついたのである。


 考えたアイデアその一、『悪役令嬢とはかけ離れた人物になる』。

 その二、『ジゼル&ハルに関わらない』。

 その三、『究極的に恋をしない』。




 …




 ……




 …よし、全て採用。その二の案は、12になって入る学園で出会うのだから会いそうになっても上手くかわせばいい。その三に関しては、自慢じゃないが前世では年齢イコール彼氏いない歴だったから痛くも痒くもないのである。


 では、手始めにその一を実行しよう。折角可愛らしい女の子に転生したのだから『可愛く美しい伯爵令嬢』を目指して頑張るぞぉ!


 そう拳を掲げて意気込んでいると、何だかお腹が空いていることに気がつく。そういえば今は日が昇っているから、朝か、昼か。何はともあれ小腹を満たすものが欲しくなってきた。こうなっては仕方ない。腹が減っては戦はできないものなのだ。家のキッチンに行けば何かもらえるかしら?早速おうち探検がてらキッチンに行ってみようかしら。


 そう思い、先ほどとは打って変わってウキウキとした気持ちで私は部屋の扉に向かったのであった。


次回、始まったばかりなのにすでにクライマックス直前?!の巻


活動報告で少し雑談(?)します。よろしければそちらもどうぞ!

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