Data.89 架け橋の守護者
◆現在地
架け橋の砦
side:マココ・ストレンジ
「ちょいとお待ちお二人さん」
駆け出した私とアチルをシュリンが引きとめる。
「あっ、もしかして木を切ったらいけないとか? エルフだし」
「私の家木造だったでしょ。そうじゃなくて、二人とも出て行ったら私と石碑が危ないじゃない」
そうだった……。ここに石碑をたてた時点で私かアチルのどちらかは防衛に回らないといけなくなったわけね。
「とはいっても、動ける駒が一つでは非効率的。だから私が戦力を増やすわ」
シュリンが【創造魔法円】を発動させる。
地面には紫色に輝く魔法円が出現した。
「戦力を増やすって……そんな事できるの?」
「材料があればね。ゴーレムって知ってるかしら。魔法によって生み出される自律人形のことよ。私もそれくらいなら作ることが出来るわ。さあ、魔石と何か材料になりそうな素材を出してみて」
「魔石はまだしも何か材料になりそうなものねぇ……」
アイテムボックス内には今までの冒険で手に入れた素材をある程度入れてある。
ウィンドウを開き適当な物を探す。
「私にも見せて」
アチルに背負われたままのシュリンがウィンドウを覗き込んでくる。
「……まずこれ」
シュリンがある素材を指差す。
それは『ヴォルヴォル大火山洞窟』のボス<フルフレイムサーペント>を倒して手に入れた『火の蛇の目』。二つあったけど一つはクロッカスが食べた。
「なかなか特別な素材ね。魔法円に入れて」
言われた通り魔石と共に『火の蛇の目』を魔法円の内側に置く。
「アチル、本を」
「はいはい!」
バックから古ぼけた本を取り出しシュリンに手渡すアチル。
「これは自律人形創造術をサポートするためのレシピが載った本よ。私の想像創造術の助けにもなる。基本的にスキルとそれに対応したレシピ、そして素材がそろっていてれば誰でも同じものを作ることが出来る。でも中にはランダム性のあるレシピもあるの」
ペラペラとページをめくるシュリン。
「例えば魔石と火属性の素材が指定されてるとすると、使う火属性の素材の違いで結果にも違いが生まれるって感じ。まあつまり今からやろうとしてることよ」
しばらく読んだ後、本をパタンと閉じる。
そして、魔法円に手をかざし起動させる。
「クリエイト・ゴーレム!」
呪文とともに魔法円にバチバチ閃光が走る。
直視できず思わず目をつむる。
「……うーん、火というより岩っぽさが強くなってしまったわね」
数秒後、閃光が止んだので目を開けるとそこには大きな岩の巨人が立っていた。
顔にはギョロっと大きなヘビのような目が一つだけ。各関節からはわずかに赤い光が漏れていて、エネルギーを秘めた火山のような印象を受ける。
「これが……ゴーレム……。前に会ったゴーレムと全然印象が違うわ」
「雷の守護者さんはもっとこう人間っぽいというか、知性を感じましたが……」
「あら、ゴーレムの知り合いがいるとは珍しいわね。きっとその子は高度な術者か高位の存在によって作られた高性能な個体でしょう。まあ、こっちの子も成長の過程でいろいろ変わっていくと思うわよ」
シュリンが生まれたばかりのゴーレムのステータスを確認する。
◆ステータス詳細
―――基本―――
ネーム:
レベル:5
レイス:ゴーレム・独自種
ジョブ:架け橋の守護者
―――装備―――
●武器
なし
●防具
なし
―――技能―――
●任意
【岩砲】Lv1
●常時
【土魔術】Lv1
【火魔術】Lv1
【猛毒無効】
「ふーん、猛毒無効とは良いものを持って生まれてきてくれたわ。大量発生してる虫系モンスターには毒を武器としているものが多いから大いに役に立つ」
「あれ? この子名前がないんですね」
「そりゃ今生まれてきたばかりだもの。マココ、名前を付けるのが得意なあなたが名付けてあげなさいな」
「え、いいの? ちょっと良いかなっていうのを思いついたところなんだ。サイクロックスってのはどう?」
そんな凝った名前じゃないけど『名は体を表す』ということわざ的にピッタリな名だと思う。
「一つ目の巨人と岩を組み合わせたってワケね。うん、馴染むわね。見た目ともぴったり」
「私も良いと思います!」
好評を得られたのでゴーレムの名は『サイクロックス』となった。
「ロック、岩砲!」
いきなり名前を縮めて呼び出したシュリンの命令で、サイクロックス……ロックはスキルを発動させる。
ごつごつとした右腕の部分が大砲のような形に変化すると、そこから岩が発射された。
勢いよく飛び出した岩は数十メートル向こうの地面にズドンと音を立てて落ちた。
「飛び道具が使えるのも頼もしいわね。とっても防衛向きだわ。ただ、狙いの付け方とか連射能力、飛距離に火力はこれからの成長次第ってところかしら。さっ次にいきましょ」
「いやぁ、十分すごいと思うけどねぇ……」
ロックを石碑の前に待機させておき、シュリンと共に新たな素材を選ぶ。
選ばれたのは案の定、イベントダンジョンで入手した『深海海月の触手』と『雲蜘蛛の硬糸』だった。
「じゃあ、まず触手から。クリエイト・ドローン!」
閃光と共に現れたのは空を飛ぶ金属のクラゲだった。
傘の部分はゲーム機のスケルトンカラーの様に半透明で中の機械のような物がうっすら見える。
触手の部分には関節がいくつもあり、にょろにょろ感も再現されている。
「この子は回復が得意みたいね。浮くことが出来るから偵察にも向いてそうだわ」
シュリンがステータス画面を開いて言う。
◆ステータス詳細
―――基本―――
ネーム:
レベル:5
レイス:ドローン・独自種
ジョブ:架け橋の守護者
―――装備―――
●武器
なし
●防具
なし
―――技能―――
●任意
【治癒の触手】Lv3
●常時
【回復魔術】Lv3
【隠密】Lv3
「さぁ、名前をお願い」
「うーん……そうねぇ……。海月……水母だから、ミボボ……とか」
これも意外と好評だったのでそのまま採用された。
「ミボボ、治癒の触手!」
シュリンが命令を下す。
するとミボボは私の方に近寄ってきた。
そして、私のお腹のあたりに触手を伸ばし光を放ち始めた。
どうやらムカデにやられた時のダメージがまだ残っていたようだ。
ポポポポポポ……
軽い効果音と共に体の調子も良くなってきた。
「ありがとうミボボ」
治療を終えるとミボボはふわふわと石碑の周りを浮遊し始めた。
もうすでに異様な光景になってきたなぁ。
「さあ、とりあえず最後の守護者を生み出すわよ。これ結構疲れるのよねぇ……」
少しぐったりしているシュリンが三度魔法円を起動させる。
「クリエイト・クローラー!」
光の中から出現したのはクモ……かと思いきや脚が四本しかない。これは……アメンボに近いわね。
一昔前に流行った円形のロボット掃除機に細い四本の足がついている感じ。
円の側面には黒いラインがあってそこを丸くて赤い光が一つ灯っている。これが目かな。
「先に名前をどうぞ」
うっ、そんなに何個もアイデア出てこないけど……。うーん、アメンボは英語でウォーターストライダーって言うらしい。カッコいいから妙に記憶に残っていた。
だからシンプルに……。
「ストライダー……とか」
「うんうん、カッコいいわね。それでいきましょう」
「あの……ちゃんと考えてる?」
「考えてるわよ。私にはあなた以上のネーミングセンスはないから、素直に感心してるわ」
シュリンがステータスを見ながら言う。
◆ステータス詳細
―――基本―――
ネーム:ストライダー
レベル:5
レイス:クローラー・独自種
ジョブ:架け橋の守護者
―――装備―――
●武器
なし
●防具
なし
―――技能―――
●任意
【修復の糸】Lv2
【粘々の糸】Lv2
●常時
【糸術】Lv2
【装備修復術】Lv2
「これまたサポート向きの子ね。装備の修復に粘着力のある糸が吐けるみたい。ストライダー、修復の糸!」
命令と同時にストライダーの胴体の上の部分が開き、そこからアーム付きの注射器のような物が出てきた。サソリのしっぽみたい……。
その注射器の標的はもちろん私。ムカデに破壊された部分からお腹が丸出しだったもの。
ビュビュビュッ!
吐き出された糸が装備の穴を塞いでいく。
しばらくすると、糸の部分が装備と同じ色になりほとんど見分けがつかなくなった。
「すごい! すぐに直っちゃった!」
修復部分に触れてみる。
「あっ、また破れた!」
修復された部分は明らかに他の部分に比べて脆かった……。
「まだスキルレベルが低いから仕方ないわ。それに今ので魔力を使い果たしちゃったみたいだから、またしばらくお腹は出しっぱなしね」
シュリンの言うとおりストライダーは胴体を地面に着け、脚を畳んで休んでいるように見える。
「はぁ……まだこの情けない格好のままか……」
「あら、私は結構好きだけど」
「マココさんは服なんて関係なくカッコいいですよ!」
「そ、そう? ありがとう」
なぜか妙に褒められた……。
「さて、これで新たな戦力、架け橋の守護者が三体加わったワケだけど……」
シュリンがちらりと三体の方向を見る。
ジッと石碑の前に立ち尽くしてたり、ふわふわしてたり、休んでいたり……。
「まだまだ発展途上だから、やっぱり木を切りに行くのは一人にしてどっちかここに残ってくれないかしら?」
まあ、そうよね。
「じゃあ、私が切りに行ってくるわ。クロスボウよりブーメランの方が木を切るのに向いてるしね。アチル、ここは頼んだわ!」
「任せてください!」
坂を下り、森へ向かう。
それにしてもシュリンの能力はすごい。どこで身に付けたのかしら?
ぜひとも聞きたいところだけど、彼女の過去はいろいろと軽い気持ちでは踏み込めそうにない。
まだ出会って数時間なんだし、もっと長い時間付き合えばきっとそのうち話してくれるかも。
今はその時を無事迎えられるように、丸太を集めるとしましょうか!
投稿遅刻してすいません!




