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Data.7 目覚める力たち

 AUOのジョブシステムというのは、正直よくわからない。

 誰かに認めてもらえないと慣れないジョブももちろんあるけど、自分のプレイスタイルを貫いていると「異名」というか、称号に近いジョブになる事もある。

 アチルの場合は……。


 ◆ステータス詳細

 ―――基本―――

 ネーム:アチル

 レベル:5

 レイス:人間

 ジョブ:射手

 ―――装備―――

 ●武器

 ロットゥンクロスボウ:☆10

 ●防具

 朽ちきったローブ:☆4

 村人のシャツ:☆1

 村人のスカート:☆1

 古革のブーツ:☆3

 ―――技能(スキル)―――

 【弓術】Lv2

 【クロスボウ術】Lv2


 『射手』か。初期職っぽい。

 私の『狩人』と似た様なものだと思う。

 何を撃つ人か定まってない『射手』、何をどう狩るか定まっていない『狩人』。

 これからの冒険のスタイルでどんどん変わっていくのだろう。


 そういう意味で『村人』は無限の可能性がある最下級職と言えるわね。

 アチルが剣を使っていたら『戦士』とか『剣士』なってそうだし。


「私も遂に戦闘職になれました! これからもっともっと強くなりますよ~」


 アチルは相変わらずだ。

 強くなってくれるのは私も嬉しいけどね。


「気を引き締めて次行くよ」


「あっ! まだ宝箱開けてないですよ?」


 ……そうだった。

 気を引き締めないといけないのは私もか。

 自省しつつ銀の宝箱を開ける。


 ――シルバードロップ獲得『蜘蛛の腕輪』!

 ――ノーマルドロップ獲得『蜘蛛糸のロープ』


 『蜘蛛糸のロープ』は粘性がない分、頑丈さがアップした糸で作られたロープのようだ。

 持っておいたら便利そうね。

 そしてシルバードロップの『蜘蛛の腕輪』は……。


 ◆防具詳細

 ―――基本―――

 名前:蜘蛛の腕輪

 種類:腕輪

 レア:☆8

 所有:マココ・ストレンジ

 防御:15

 耐久:12

 ―――技能(スキル)―――

 【蜘蛛の糸】Lv1

 ※残りスキルスロット:2

 ―――解説―――

 モンスター蜘蛛の魔力を宿した腕輪。

 蜘蛛の糸を生成し射出できる。


 なかなかの防御性能に面白いスキルが付いている。

 見た目も蜘蛛の巣のモチーフが刻まれていてカッコいい。


 ◆スキル詳細

 【蜘蛛の糸】

 装備者の魔力を消費して蜘蛛の糸を生成する。

 レベルが上がるほど、一度に射出できる糸の長さや粘性、強度がアップする。

 また、生成に消費する魔力がダウンする。

 リキャストタイム:5秒


 『ロットゥンクロスボウ』に付いているスキル【腐矢】と同じく、魔力を消費して何かを生成するスキルね。

 少し試してみたけど、自分を持ち上げたりするのは無理だった。

 Lv1ではそこまで糸の強度は高くないみたい。


 でも、ブーメランぐらいなら持ち上げられた。

 ブーメランが何かに引っかかって少し離れたところに落ちた時、素早く拾うことに使えそうね。

 少しずつ良い装備がそろって動きやすくなってるわ。


「今回は私がドロップアイテムを貰うけど、いい?」


「どうぞどうぞ! 私が貰うのは経験だけで十分ですから」


 謙虚さはあるから良いよね、アチル。

 さて、気をつけて進むとしよう。




 > > > > > >




 ◆現在地

 死して蠢く者の洞窟(アンデッドケイブ):地下5F


 4Fは敵に出会う前に魔法円を見つけてしまい、ほぼ素通りだった。

 ダンジョンをランダム生成するゲームだとあるあるネタよね。

 魔法円の位置だけ覚えて探索しようか、とも思ったけど今回は安全を優先した。


「さ、この5Fで今回の探索は終わりよ。帰還の魔法円を見つけるか、見つからなかった場合は来た道を引き返すわ」


「……はい」


 アチルは不満そうだ。

 強くなる実感を感じ始めたところだから気持ちはわかるけど、正直今の階層のモンスターは彼女よりレベルが高い。

 しかも複数同時に湧きやすいから、囲まれると守る方も大変。


 今のところブーメランで一掃できてるからいいけど、硬い敵に防がれて満足な軌道に投げられない事態が起きるとめんどくさい。

 できればレベル上げは村付近の森でやりたいな。


「レベル上げはもっと安全な所でもできるわ。今回はたくさん収穫もあったし、帰るとしましょう。帰ればまた来れるのだから」


「はーい」


 私たちは油断なく通路を進む。

 途中で低レベルの雑魚を何体かアチル一人で仕留めた。

 ゾンビやスケルトンに腐矢はあまり効かないのに上手くやるものね。

 特に苦戦する事もなく帰れるかと思ったけど、最後にあるモノが私たちの進路を塞いでいた。


「あっ、あれは変異モンスターか……」


 円形の広い空間の中に、大きな金属の盾を二つ持ったモンスターがいた。

 頭上のウィンドウのデザインも少し派手になっている。

 <ビッグシールドビッグゾンビ:Lv16>。

 ビッグが被っているけど、それはこのモンスターが出現した理由を考えると不自然じゃない。


 変異モンスターとは、特定の状況下で偶然発生するモンスターだ。

 今回の場合は、もともとビッグゾンビと言われていたモンスターが、偶然自分に合う盾を入手し、使いこなした(本来覚えないはずの盾系スキルを入手した?)から発生したと考えられる。


 名前はギャグっぽいけど、耐久に難があるゾンビと大盾の相性は抜群ね。

 動きはもともと遅いから、盾の重さも大したデメリットにならないし。


「とはいえ、盾は前にしか構えていないわ。まだこちらに気付いていないし、後ろを向くのを待ちましょう」


「了解です」


 数分後――。


「向きませんね、後ろ」


「むう……」


 冷静に考えれば脆い体で無駄に盾を動かし、体に負担をかけるはずないか。

 さて、どうしたもんかな。


「私が囮に出て、反対側に回り込みます。アイツが後ろを向いたらマココさんが仕留めてください」


「危険よ」


「でも、正しい倒し方だと思います」


「私が囮になるのは?」


「私の矢じゃ威力が足りないです。仕留めるまで長引きます」


「そうねぇ……」


 実は私もそれを考えていた。

 相手は素早く動けないだろうし、すぐに攻撃される可能性も低い。

 そこまで危険ではない戦法だと思う。

 ここでもたもたしてると、他のモンスターが湧いて挟み撃ちの可能性もあるし、やるかな。


「じゃあ、囮お願いするわ。無理しなくていいからね。あと私に何かあったら、すぐ逃げること」


「わかりました」


 その言葉と同時にアチルはクロスボウを構え、BSB(ビッグシールドビッグ)ゾンビの前に(おど)り出た。


「こっちよ!」


 何発か矢を撃ちつつ背後に移動する。

 矢は盾で防がれてしまっているが、BSBゾンビは順調に振り向き、私の前に背中を晒した。

 私は無言で進み出て、その頭から背中にかけてを切り裂いた。


「グググッ……ギギィィ……ッ!!」


 苦しそうな声を挙げるBSBゾンビ。

 だがまだ倒されてはいない。

 私たちを道連れにしようと、大盾を振り回している。


「……ッ! アチル! 逃げなさい!」


 私はまだ振り回される盾の中心に組み付いてるから安全だけど、アチルは危ない。


「わ、わかりました」


 彼女はワンテンポ遅れて、広間から先へ続く通路へ走り出した。


「グガガァ……ッ!」


 BSBゾンビは倒れ込みながら盾を放り投げた。

 その先には……アチル!


「あっ……」


 走る事に必死になっていたアチルは、それを避けられなかった。

 同時にBSBゾンビも力尽き、光の粒子になった。


 ――レベルアップ!

 ――スキルレベルアップ!


 今はそんな場合じゃない。

 アチルを助けないと。

 盾の下から見える彼女の体からは大量のノイズと粒子が見える。

 血と肉という事だろうか。

 彼女の命は……。


 ――新スキル発現!


回帰する生命ブーメラン・オブ・ライフ!!」


 発動と同時に、ピンク色に光るハート型のブーメランが手から飛び出す。

 それはアチルの体の上をくるくる回り、ハートの粒子を降らせていく。


「う……あ、あれ……重い!」


 数秒後、アチルは目を覚ました。

 確実に死んでいたけど、新スキルのおかげで何とか助けられた……。

 これは回復魔法だろうか。

 だとしたら『狩人』で急に目覚めるとも思えない。


「このブーメランのおかげか」


 私は手に握られている『目覚めのブーメラン』を見つめる。


「マココさん……盾どかしてください……」


「あっ、ごめん」


 この盾はドロップ品扱いになっているようで、本体が倒されても一緒に消えなかった。

 モンスターにもいろいろあるようね。

 にしても盾重い!

 再びアチルを傷つけないよう盾をどかすのに数分を要した。

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