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Data.56 新鮮なる演武槍術

 ◆現在地

 ヴォルヴォル大火山洞窟:地下10F(最終階層)

 side:アイリィ


 あっつ! 熱い!

 この槍の長さでも敵との距離が近すぎる!

 少し距離を取って攻撃を……。


土地鮫斬(ドチザメザン)!」


 槍の刃を手前の地面に突き刺し、しなりを使って抜く。

 その際、舞い上がる土と共に巨大なサメの背びれの様な斬撃波が発生する。

 私の持つスキルの中では射程も長くそこそこ威力も期待できるはず……なんだけど。


「シャアアァァーーッッ!」


「あんまり効かないねぇ……!」


 ヘビの突進の威力を殺し、多少斬撃波が体に食い込むのだけれど、切断には程遠い。

 やはり近距離で攻撃を加えなければ威力不足とわかった。

 そう考えると、まったくマココさんのブーメランの威力には恐れ入る。

 彼女は今一人でもう一匹のヘビと対峙しているけど、危険なのは三人いるこっちの方。

 むしろ早く助けてほしいというのが本音。


「さぁ……どぉしたものかねー。誰か効きそうなスキル持ってない?」


 私はベラさんと、ユーリさんに声をかける。

 二人ともまだ柱の上にいる。


「私は無理そうです! 符がすぐ燃えてしまうほどの高温では手も足も出ません……」


「あたしのムチはこの炎でも燃えへんし、攻撃は出来るんやけどなぁ。単純に威力が足りへんで! 100回ぐらい打てば倒せるんやろか?」


 うーむ……やはり私が多少無理する必要がある。

 かといって、死ぬとGrEed(グリード) SpUnky(スパンキー)の活動に支障が出る。

 あぁ大変。


「少しの間だけ体を炎や熱から守れるスキルはない?」


 再び二人に尋ねる。


「……本当に焼け石に水ですけど……数秒だけなら()()で耐えられるかもしれません」


 答えたのは巫女服を着た女の子のユーリさん。

 彼女は新たな符を生成するようだ。


「……清水(きよみず)の符」


 ユーリさんの手に現れた新たな符は水滴のような形をした半透明の物だった。

 そして微妙に表面が揺らめいているように見える。


「何やそれ? 変わった形の御札やな」


「はい……。見ての通りお水で出来た符です。これを何枚か体に張り付ければ多少は……」


「水なら普通にあのヘビに撃てば効かへんかな?」


「普通の炎くらいなら効きそうですけど……。【斬下の符】すらすぐに燃え尽きてしまうほどの高温だと、蒸発してしまうと思うんですよ……。それにこの符は魔力の消費量がその【斬下の符】より多くて、そんなに枚数を生成できないんです。だからあの巨体のヘビにはまさしく焼け石に水と……」


「むむむ、それもそうやな……。今を想えば、火山のダンジョンに潜るわけやから、水系のスキルか装備か何でもええから探して持ってくるべきやったかもなぁ……」


 ベラさんとユーリさんのやり取りに心の中で同意する。

 高難易度ダンジョンほど対策が大事。

 今回はちょっと焦り気味だったか。


 とはいえ、今から全滅して対策を立て直すのは得策とは言えない。

 それに一応水系のスキルは私も持っている。

 しかし少し特殊だから、今からやる正攻法の攻撃が通用することを祈りたい。


「ユーリ、その符をわた……うちの体に! 接近して攻撃したいのぉ」


 おっと口調が崩れるところだった。


「は、はい!」


 返事と同時にユーリは【清水の符】を私に向けて飛ばしてきた。

 それは自動的に体に張られていく。


「あくまで気休めですからね!」


了解(りょおかぁい)~」


 確かにこれは頼りない。10秒は持たない気もする。

 しかし、それだけあれば十分。


「さあ、ショーの始まりよぉ! 海豚の曲芸(アクロ・ドルフィン)!」


 私は槍を地面に突き刺し、棒高跳びの様に空中に跳びあがる。

 洞窟の天井はかなり高いからぶつかる心配はない。

 スキルの効果で手元に戻ってきた槍を握り直し、私は体をひねり回転を加えていく。


 水面から跳びあがり、回転しながら落下する。イルカの曲芸の様に。

 その勢いを槍に乗せ、敵にぶつける。

 ……結構回りくどいけど、まあ落下の勢いを加える事により威力は期待できるし、見ていて美しい。


 それに【海豚の曲芸(アクロ・ドルフィン)】はこの回りくどい攻撃が全てではない。

 これはあくまで曲芸の一つ。

 スキルの本質はヴァイトの【悪魔の魔翼(デビルズ・ウイング)】に近い。

 あのスキルも始めは翼を生やすだけのものだったけど、今では形を変えていろんな攻撃に使えている。


 肉体強化(変化?)系とでも言うのかしら。

 【海豚の曲芸(アクロ・ドルフィン)】も発動後いろいろ特別な動きが出来るようになる。

 今やってるのはその中でも威力の高い曲芸(アクロ)


海豚の尾(ドルフィンテール)!」


 水をかき分ける力強き尾の一撃!

 回転の後だからよく見えないけど、イルカの尾のエフェクトも出ているらしい。


 ちなみに水は出ない。

 スキルレベルを上げていけば出る可能性はある、かも。

 もともとスキル名に水生生物関係の言葉を入れて統一感を出そうとしただけだし。


「ギギ……ギ……シャァァァ……」


 私の攻撃が直撃したヘビは頭部から二つに裂けている。

 が、真っ二つではない。

 体の中ほど辺りで裂け目は止まっている。

 逆にこれくらいで分裂しないようにダメージを積み重ねていくのが正攻法だったり……。


「シャアアァァーーッッ!!」

「シャアアァァーーッッ!!」


 しない。

 うわ、こういう分裂の仕方もあるんだ。

 頭部が二つ、二股のヘビ。

 それぞれの頭部が咆哮と共に火球を吐いた。

 一つは私狙い。もう一つは今も柱の上にいるベラさんとユーリさん。


「う~ん、もう()()しかないかぁ……」


 私は槍を正面でぐるぐる回し、火球をかき消す。


「清水の符!」


「タイガーウィップ!」


 二人は力を合わせて何とか火球を相殺している。

 この火球一つ相殺するのに力を合わせる必要があるのは不安だけど、奥の手を成功させるには何とか二人で1分間もたせてくれないといけない。


「お二人さーん、ひとつ提案があるんだけどー」


「なんです?」

「なんや!」


「うちが今から雨鯉演舞(あまこいえんぶ)でこのフロアに雨を降らせるんだけどぉー」


「え、雨乞いやて?」

「そんな事できるんですか? 私より巫女さんみたいです」


「出来るのよねぇ、これが。ただ、このスキルは一分間踊らないと発動しないのよねぇ~。途中で踊りをやめるとぉ、また初めからなの。攻撃とかされるともうムリ。その分、効果はてき面だと思うから、踊りの間私が狙われないように囮になってくれなぁい?」


 【雨鯉演舞(あまこいえんぶ)】――。

 雨鯉(あまこい)……そのまんま雨乞(あまご)いの踊り。

 これは本当に水が出るスキル。


 自分を中心に雨雲を空に生み出し、そこから雨を降らせる。

 このような閉鎖空間でも雲は問題なく生み出せる。

 その効果優先度というか、変化は強力なようで、雲一つない快晴でも私の周りは曇りに出来るほどだ。


 そして、雨は激しく戦闘への影響も計り知れない。

 炎系のスキルの効果は間違いなく低下し、水系は強化される。

 環境を変える力……強力な分、発動条件に特別な制約がかかっている。


 踊りはスキルの発動を念じた時点で開始され、それからは私の意志に関係なく勝手に踊ってくれる。

 つまり、うっかり手順を間違えて不発になることはない。これは大きなメリット。


 しかし、同時に大きなデメリット。

 踊り始めたら踊り終わるまで攻撃を回避する事も他のスキルで打ち消す事も出来ない。

 そして、ダメージを受けた時点で踊りは終了し、再発動にはまた一分間の踊りが必要になる。


 よほど隠れられる障害物の多い戦場で、対峙する相手が相当鈍感なら話は別だけど、基本は守ってくれる味方がいなければ戦闘では使い物にならない。

 だから、この作戦は二人しだい。


「……雨が降れば火は消えそうやな! ええやん! こっちは何とかやってみるで!」


「ここで雨が降ると火は消えそうですけど、その後の湿気が恐ろしいことになりそうですね……。でも、それでもそれが最善策だと思います」


 ベラさん、アイリィさんともに作戦に乗ってくれた。

 こういう判断が早いのは助かる。共に戦う者として素晴らしい。


「じゃ、踊るよ! 雨鯉演舞(あまこいえんぶ)!」

「よっしゃ!」

「さあ……どうしたものですかね……」


 私のスキル発動と同時に二人は再び足場に降り立ち、ヘビの前に立ちふさがった。

※追記(17/10/09)

アイリィのモノローグでの仲間の呼び方を統一しました(マココ以外も『さん』付けに)。

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