Data.43 ヴォルヴォル大火山洞窟
『ヴォルヴォル大火山洞窟』……。
そのダンジョンは巨大な活火山のふもと辺りに空いた大きな横穴が入り口だった。
山頂が入り口じゃなくて助かったわ。
この火山の大きさは『霧がくれの山』の比ではない。
「さぁ、ここに入ってしもたらもう油断はできまへんで!」
「いろいろ確認しときましょうか」
回復アイテムは薬草ではなく各種ポーションにした。
薬草に比べれば回復量も多く、透明なガラスビンに入っているので燃えたり、腐ったりしにくいので便利だ。
次に鍛えたステータス。
『霧がくれの山』の探索開始から今までの変化を見れるように設定してと……。
◆ステータス詳細
―――基本―――
ネーム:マココ・ストレンジ
レベル:38(↑4up)
レイス:人間
ジョブ:回帰刃狩人
―――装備―――
●武器
邪悪なる大翼:☆50
超電磁ブーメラン:☆30
●防具
霧の盾:☆40
牛角のカチューシャ:☆2
鉄包帯のはらまき:☆10
風来の狩人のポンチョ:☆25
風来の狩人のベスト:☆18
風来の狩人のシャツ:☆15
風来の狩人のハーフパンツ:☆15
風来の狩人のグローブ:☆12
風来の狩人のブーツ:☆12
●装飾
聖なる首飾り:☆25
―――技能―――
●任意
【塵旋風】Lv11(↑2up)
【ブーメ乱舞】Lv10(↑2up)
【昇龍回帰刃】EVOLv3(↑1up)
【回帰する生命】Lv2(↑1up)
●常時
【真・回帰刃術】EVOLv5(↑3up)
【解体】Lv16(↑3up)
【回復魔術】Lv2(↑1up)
【腕力強化】Lv14(↑2up)
大きな変化はやっぱり『霧の盾』よね。
レベルは山賊との戦闘やその後のレベル上げで順当に上がっている。
偶然とはいえ【回復魔術】【回帰する生命】のレベルが上がったのも嬉しい。
あとはベラのステータスも確認しておこう。
彼女は今まで単独戦闘が少なかった分、ここ数日での成長は大きい。
◆ステータス詳細
―――基本―――
ネーム:ベラ・ベルベット
レベル:36(↑4up)
レイス:人間
ジョブ:機械獣使い
―――装備―――
●武器
黒金虎のテールウィップ:☆35
●防具
霧のマント:☆40
見通しのゴーグル:☆15
黒金虎のジャケット:☆25
黒金虎のハーフパンツ:☆25
黒金虎のグローブ:☆20
黒金虎のブーツ:☆20
鮮烈の赤スカーフ:☆5
―――技能―――
●任意
【テイムビーム】EVOLv2
【ストレイトウィップ】Lv8(↑5up)
【タイガーウィップ】Lv4
●常時
【鞭術】Lv10(↑5up)
【相棒との絆】EVOLv4(↑1up)
【脚力強化】Lv3
プレイヤーレベルの上がり幅は私と一緒だけど、スキルレベルは私より大きく伸びている。
倒している敵もほとんど同じだったので、この差は純粋に元のレベルが低い方がレベルは上がりやすいというだけね。
新たに発現したのは【タイガーウィップ】と【脚力強化】。
このうち【タイガーウィップ】は山賊のボスにはなった一撃が印象深い。
地面に叩きつけられたムチの先端が縦横無尽に何度か跳ねた後、獲物へ食らいつく。
その動きの読めなさと、猛虎特有の打撃力が魅力のスキルらしい。
あと虎のエフェクトもカッコいい、とベラは言っていた。
もう一つは【脚力強化】。
効果はそのまんま脚の力がアップするものだ。
私の【腕力強化】と似たようなもんね。
ベラはこのスキルを得てから、すばしっこい動きと豊富な攻撃バリエーションで敵を翻弄しながら戦うスタイルを確立しようとしている。
正面からでは、私のような戦うことしか考えていないプレイヤーにはかなわない。
だから『まともには戦わない』というワケだ。
「……よっしゃ、回復アイテムに武器防具も完璧や!」
「こっちも問題ないみたい。じゃあ、攻略開始ね」
「入り口で待ち伏せとかされてへんかったらええなぁー」
「ここに来るまで他プレイヤーとは会ってないけど、十分気をつけて行きましょう。もちろんプレイヤーだけでなくモンスターにもね」
「了解ですわ!」
私たちは意気揚々と一つ目のイベントダンジョンへ足を踏み入れた。
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◆現在地
ヴォルヴォル大火山洞窟:地下1F
大火山の内部から地下へ広がる巨大な洞窟。
灼熱と燃え盛る怪物が探索者の命の炎を脅かす。
最大モンスターレベル45。
そのダンジョンは……やはり暑い。
居ても立ってもいられない程ではないけど、激しい運動をしたらかなり汗が流れそう。
ただ、せま苦しさは感じない。
入り口の横穴の時点でマンネンが入れそうなほど大きいだけあって、天井も高い高い。
そして、広い広い……。
「ここは大広間のようね。いくつか横穴があって、それが先に続いているようだけど、どこを進もうか迷うわね」
「せやなぁ……道しるべもないし、一つ一つ調べていくしかあらへんなぁ。とはいえ、敵の最大レベルは45や。雑魚もそれなりに強いやろうし、あんま長々と歩き回るのは良くなさそうやな」
「かといって、急いでもこの暑さじゃ体力を持っていかれやすくなるだけ……。予想通り厳しい戦いになりそうね……」
「ただ、他のプレイヤーはおらんようやし、そういう意味では一つ作戦成功や。ここから一つ一つ成功させていくとしましょ。やけど、無理は禁物や。代償は大きいからな。あかんかったら無様でも逃げるで!」
「わかったわ」
今わかるダンジョンの情報を整理した私たちは、広間のからつながる道を一つ選び進みだした。
ちなみにリアルタイム映像に音声はないので、いくら重要なことを話しても問題ない。
「……むっ! マココはんいきなりお出ましや! モンスターやで!」
私も見つけている。敵は三体。
人間の腰の高さぐらいの丸い岩たちが、ゴロゴロと斜面でもないのに勢いよく転がってくる。
表示されている情報は<炎を纏う魔岩石:Lv20>。
その名の意味を証明するかのように、岩たちが炎を纏い始めた。
「硬そうなやっちゃな……。ここはお願いしますわ!」
「まかせて!」
最序盤に出て来るのがレベル20モンスター三体とはね。
完全にライトプレイヤーは切り捨てている。
しかし、私の敵ではない。
「やぁ!」
ギリギリまで三体の岩を引き付けてから、『邪悪なる大翼』を横に薙いだ。
音も無く三体の岩のモンスターは真っ二つとなった。
後には魔石がころがるのみである。
「流石マココはんや! こんなん相手にならへんで!」
「やっぱり『邪悪なる大翼』は強いわね。この質量とキレ味はクセになるわ……」
私はその黒いボディを軽くなでた。
「なんや、今日は情熱的ですなぁ。もう熱に浮かされてしもうたとか?」
「流石に1Fでバテてはいられないわ。さぁ、また同じようなのが湧いてくる前に先に進みましょう」
「はいな!」
ベラは私の数歩後ろをついてきながら周囲の警戒もしている。
もちろん私も視界をめぐらせながら進んだ。
このダンジョンでも階層の移動には『転移の魔法円』を使う。
『死して蠢く者の洞窟』と違ってこの洞窟はけっこう明るいから、発光している魔法円は少し見づらそうだ。
だから、より注意深く探さないとね。
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「……おっ、あれじゃないかしら?」
いくつかの行き止まりを見つけては魔法円を探し、引き返す作業を繰り返した後、遂に見つけられた。
このダンジョンの魔法円は、ダンジョンの広さに比例するような特大サイズで遠目でもわかった。
前の行き止まりでは『死して蠢く者の洞窟』サイズの魔法円を探してしまい、岩をどかしたりもした。
無駄な体力使ったわ……。
「これで一歩前進やな! 次の階層に進むという意味でもそうやし、魔法円の情報を得られたというのも大きいで! これで次からは最適な魔法円探しが出来るわけやからな。さっきのも無駄ではないですわ!」
ベラは私を励ましてくれているようだ。
そんなに疲労感が顔に出ていたかしら?
だとしたら、この暑さは思ってる以上に厄介なようね……。
「こんな暑いダンジョンさっさと出たいわ」
「えっ……」
「だから、完璧にクリアしてしまいましょう」
「さっすが! その意気やでマココはん!」
私とベラは次の階層へ進んだ。
人との戦いを想像していたけど、今のところは自分との闘いね!




