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Data.4 死して蠢く者の洞窟《アンデッドケイブ》

「ヒッヒッヒッ、そこのお嬢さんちょいとお待ち……」


 村の門まで来た私は、その(かたわ)らに(たたず)む老婆に声をかけられた。

 いかにも魔法を使いそうなおばばだ。


「なんでしょうか」


「お嬢さん、『死して蠢く者の洞窟(アンデッドケイブ)』に行くんだろ? 『シロセイの実』は持ってるかい?」


「一つだけなら……」


「なら、私がそのご自慢のブーメランに『腐食耐性』を追加してあげよう」


「腐食耐性……」


「『死して蠢く者の洞窟(アンデッドケイブ)』には腐食を与える攻撃をしてくるモンスターが多い。装備を腐食させられると耐久を削られ、攻撃も防御も低下してしまう。それの対策さ」


 この老婆はアイテムを消費して、武器にスキルを追加できるようだ。

 『目覚めのブーメラン』は私のメインウェポン。使い物にならなくなっては困る。

 ここはお言葉に甘えよう。


「では、このブーメランにお願いします」


 老婆に『目覚めのブーメラン』と『シロセイの実』を差し出した。


「ヒヒッ、素直ないい子だね。すぐ終わるよ。あ、ちなみにスキルを取り外せる奴もいるらしい。あたしにゃ無理だがね……」


 老婆は輝く手で『シロセイの実』を握り潰し、その汁をブーメランに浸透させていく。

 『目覚めのブーメラン』は金属で出来ている感じなので、汁が浸透するのは老婆のスキルの効果と考えられる。

 やはりご老人は経験豊富で強いという事か……。


「ほれ出来たよ。確認してみ」


 ◆武器詳細

 ―――基本―――

 名前:目覚めのブーメラン

 種類:ブーメラン

 レア:☆15+1

 所有:マココ・ストレンジ

 攻撃:25

 耐久:22

 ―――技能(スキル)―――

 【魔力の目覚め】Lv3

  +

 【腐食耐性】Lv1

 ※残りスキルスロット:2

 ―――解説―――

 中央の宝石に魔法が込められたブーメラン。

 使う者の魔力が目覚めるように導く。


 確かにスキルが追加されている。残りスキルスロットも減ってるし。


「ありがとうございます」


「なぁに簡単な事さ。ついでに言っておくと、武器スキルのレベルも上げられるよ。人のスキルと違って、使い込んでも上がらないがね。まぁ、そのうちわかるだろう……勘のいいお嬢さんなら」


 今回のスキル追加の様に『アイテム』と『スキル』が必要なのだろう。

 例外もありそうだけど。


「じゃ、気をつけて行っといで。善は急げさ……」


 私は老婆に礼を言い、村を後にした。




 > > > > > >




 イスエドの村より体力試しがてらダッシュして30分で、私は『死して蠢く者の洞窟(アンデッドケイブ)』に到着した。

 流石はモンスターと戦うRPGの世界だ。これくらいの走り込みでは大して疲れない。


 『死して蠢く者の洞窟(アンデッドケイブ)』は、その暗い入り口の周りにボロボロの柵や墓のように見える石柱が何本もたっている。

 雰囲気はバッチリね。今にもゾンビやスケルトンが地面や穴から湧いてきそうだ。


「一応周辺もチェックしておこうか」


 目当ての子が怖気づいて周辺で足踏みしてたり、ダメージを食らって命からがら脱出し、隠れているかもしれない。


「アチルさーん! いませんかー! 村の人が心配してましたよー!」


 アチルというのは探している子の名前。

 その名を叫びながら、辺りを歩き回ってみても返事はなかった。


「……うーん。ここまでの道にモンスターは出なかったし、やっぱ中に入っちゃったかな。潜るとするか、ダンジョンに」


 私はボロボロの柵の隙間を抜け、ダンジョンの入り口に入り込んだ。


 ◆現在地

 死して蠢く者の洞窟(アンデッドケイブ):地下1F

 不死者や邪悪なる者が住みつく迷宮。

 最大モンスターレベル30。


「おー、肌寒いな……」


 体の芯から冷えてしまいそうな冷気、もしくは霊気で洞窟内は満ちていた。

 この中に一人で突撃していくとは熱い少女だなぁ……。


 最大モンスターレベルも30ときた。

 これはドラゴンゾンビが外に出たから、代わりにボスになった奴のレベルね。

 少なくともこのダンジョンを攻略できないと、ボス以上のドラゴンゾンビには挑めないという事だ。


「腕が鳴るわ……」


 目覚めのブーメランを片手に握りしめ、私は攻略を開始する。

 洞窟内の道は意外に広く、ブーメランを投げるのに苦労することはなさそうだ。

 それに近接武器としても使えるからね。ブーメランはそこが強い。


「グ……ガァ……アァァ……」


 第一ダンジョンモンスター発見。

 そいつの頭上には<レッサーゾンビ:Lv1>と表示されている。

 森に出て来る動物系魔物たちよりレベルが低い。

 アチルが森に突撃しなかったのも納得ね。


「グ……グゥ……ギィィ……」

「グガ……ヴゥ……ア……ァ」

「ガァ……アァァ……ギ……」


 さらに同じのが三体、計四体になった。

 動きはのろく、こちらを認識しているのかすら疑わしいから楽に狩れそうね。


「ハァッ!」


 私の投げたブーメランは美しい弧を描き、四体のゾンビの首を切り飛ばした。

 描写は抑えてあるからあまりグロテスクではない。良いことね。


「……ドロップ品もレベルアップも無しか。流石にレベルが低すぎたわ」


 私はすでにレベル7だから、レベル1のゾンビ共を倒しても大して意味がない。

 ガンガン前に進むとしよう。


 その後、ブーメランを投げては大量のゾンビを狩り、ある物を見つけた。


「お、これが次階層への転移魔法円(ワープサークル)ね」


 転移魔法円(ワープサークル)とはダンジョンの先へ進むための魔法円である。

 これを作動させれば地下2Fへと向かうことが出来るのだ。

 この階層は粗方探索し終えたので、私はすぐに魔法円を起動させ、2Fへ向かった。


 ◆現在地

 死して蠢く者の洞窟(アンデッドケイブ):地下2F


 2Fも景色は変わり映えしない。洞窟だから仕方ないけど。

 ちなみに魔法円の近くに魔物は寄ってこない。なので、転移そうそう襲われるということはない。


「さて、魔物は変わるかな」


 私と装備に問題は無し。

 ゾンビに触れまくってる『目覚めのブーメラン』も『腐食耐性』のおかげで無事だ。

 でも、アチルの装備にはそんな気の利いたスキルは付いているのだろうか。

 とにかく急いで進もう。


「グルウゥゥゥゥ……ッ!」


 魔法円から少し離れ、通路に出たところで<ゾンビドッグ:Lv3>と出くわした。

 そいつは私を見つけるなりすぐに飛びついてきた。


「ハッ!」


 素早い反応で私はゾンビドッグを切り捨てた。

 ブーメランは遠近両用の万能武器で隙がない。

 だからこそ、持ち主にも隙があってはならない……なんてね。


 正直ビックリした……。

 犬はすばしっこいので、人間のゾンビより相手にしたくないと思ってる人が多そうだ。


「あ、ドロップあった」


 今までのゾンビからは落ちなかったので、思わず声を出してしまった。

 ドロップ品は『解毒粉』。

 その名の通り猛毒状態を解除する物だった。

 こういうのが落ちてるって事は、毒にしてくる敵がいるという事だ。

 気を引き締めていこう。


「にしても、こんなところによく一人で来るわね~」


 寒さ、そして描写を抑えてるとはいえ気持ちいい見た目をしていないゾンビのコンボで、私は少し弱気になっている。

 それを独り言で何とか誤魔化す。ホラーゲームは得意ではない。


「グガガガガァ……ギギギィ……ッ!」

「う……あぁ……くそぉ……うぅ……」


 曲がり角の先から声がする。今度は二体か。

 一体は叫び声からしてなかなか強そうだ。

 もう一人は逆に弱々しい。どういうコンビなのかな。

 私はスッと角から先を覗き込む。


「あっ!」


「グギギギィ……?」


 見つけた!

 地面に倒れ伏している三つ編みの少女は間違いなくアチルだ。

 どうやらかなり弱っているみたい。


 そしてもう一体は<デッドリーポイズンゾンビ:Lv10>!

 この階層に出て来るとは思えない高レベルモンスターね。

 初クエスト達成の相手としては十分だわ。

 私は恐れることなくブーメランを投げた。

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